25年度農林水産予算入れ替え要求を決定 農水省2013年1月11日
農林水産省は1月11日の省議で政権交代にともない平成25年度概算要求に入れ替え要求を決定した。民主党政権下で要求した8月の概算要求額と総額は同じだが、農業農村整備事業など公共事業費を増やし、非公共事業費を減らした。また、戸別所得補償制度は基本的な仕組みは変えないものの名称を「経営所得安定対策」とし、自民党が政権公約に掲げた多面的機能直接支払い制度への実現に向けた調査費を要求した。
◆省議を復活
入れ替え概算要求は11日午後の省議で決定した。
林芳正農相は「民主党政権下ではいわゆる括弧付きの政治主導の名のもと、事務方幹部も一堂に会する省議が廃止されていたが、私は政と官が適切な役割分担をしながらきちんと連携してチームとして対応をしていくことが非常に大事であると考え、この機を捉えて省議を復活させることにした」と話した。 また、入れ替え要求の内容について、日本型直接支払いの制度設計に向けた調査費の要求や農業農村整備事業、や施設機械整備予算の拡充、都市農村交流、食育推進等々の予算復活などを行ったことを挙げ、「政権公約でわれわれが国民に約束した政策の実現への第一歩を踏み出すことができたのではないかと思っている」と述べ、概算決定に向けて「一丸となって全力を挙げて取り組んでいただきたい」と幹部職員に呼びかけた。
(写真)
省議であいさつする林農相(中央)
◆「強い農業づくり交付金」、一本化し増額
要求予算総額は2兆3166億円で8月に民主党政権下でとりまとめた額と変わらない。しかし、公共事業費は24年度予算額比で23.4%増の6033億円、非公共事業費は1.8%増の1兆7132億円とした。
公共事業のうち農業農村整備事業は2997億円で、民主党政権下で削減されたこの予算を対前年度比で40.7%増やす。多くが老朽化した農業水利施設の改修など超寿命化や耐震化対策のための予算で、ほか水田の大区画化・汎用化、畑地かんがいなどの整備も推進する。 また、地方の裁量で進める基盤整備支援のための農山漁村地域整備交付金は同10.5%増の106億円を要求した。 農林水産関係施設整備のための「強い農業づくり交付金」は今年度の21億円に対し244億円を要求。生産や流通に関わる共同利用施設の整備をする予算だが、都道府県向け補助金や国の直接採択事業に分けていた予算を今回は一本化した。
◆加算措置の見直しと産地資金を増額
戸別所得補償制度から名称を変更した「経営所得安定対策」のうち、生産数量目標にしたがって米生産を行う生産者に10aあたり1.5万円を支払う「米の直接支払交付金」は1613億円と、24年度予算1929億円より減額したが、加入実績をふまえて精査したという。また、24年産米に対する米価変動補てん交付金も同294億円から221億円と減額したが最近の米価動向を勘案した。 一方、水田転作を支援する水田活用の直接支払交付金は今年度予算2284億円から2517億円に増額。備蓄米確保ための産地資金の増額と新規需要米の作付け拡大を見込んだという。 畑作物の直接支払交付金は同額の2123億円を要求。これまでの戸別所得補償制度の予算として計上された額としては6901億円が6630億円となる。これは米の直接支払い部分の減額のほか、規模拡大加算分を担い手総合農地対策の予算に振り向けたため。
担い手・農地総合対策のうち「担い手への農地集積推進事業」で規模拡大加算を行うとともに農地の出し手への農地集積協力金を交付する仕組みとする。 このほか中山間地域直接支払交付金は、隣接する集落の支援によって農地維持のための取り組みを行う場合にも交付金を支払うなどの仕組みが活用されることなどを見込み同259億円を302億円に増額要求した。また、農地・水保全管理支払交付金も同247億円から289億円にしている。
農業の多面的機能に着目した日本型直接支払を導入する新たな経営所得安定対策のための調査費用は、18億円を要求した。農業の多面的機能を発揮するための農業生産活動を作目別に検討するなどの調査事業を行うという。
◆都市農業支援など新規事業も
民主党政権下の事業仕分けで削減された予算も復活させる。
飼料穀物の備蓄は60万tから35万tに削減する方向が打ち出されていたが、これを60万tに戻す。そのための予算を来年度当初予算では16億円(今年度14億円)を要求した。
また、昨年秋の新事業仕分けで電力の固定価格買い取り制度と二重補助になるとして、予算計上を見送るべきとされた再生可能エネルギー予算も復活させ、地域バイオマス産業化推進事業24億円、木質バイオマス産業化促進11億円といずれも今年度はゼロだった予算を新規に要求した。
そのほか食育の推進費用を今年度1億円から10億円としたほか、新規事業として都市農業振興のための「農のある暮らしづくり交付金」を10億円要求した。 また、8月の概算要求で打ち出されていた農村地域力発揮総合対策事業を見直し、新規事業として「都市農村共生・対流総合対策交付金」に37億円を要求するなどの振り替えも行った。
(関連記事)
・サトウキビ交付金1万6320円 生産振興対策も課題 (2013.01.09)
・林農相が職員に年頭訓辞 (2013.01.08)
・基本計画、1年前倒しで見直しを――JA全中・冨士専務 (2012.12.22)
・「人・農地プラン」の作成市町村475 農水省 (2012.12.04)
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米、稲WCSへの十分な支援を JAグループ2025年10月16日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】本質的議論を急がないと国民の農と食が守れない ~農や地域の「集約化」は将来推計の前提を履き違えた暴論 ~生産者と消費者の歩み寄りでは解決しないギャップを埋めるのこそが政策2025年10月16日
-
死亡野鳥の陰性を確認 高病原性鳥インフル2025年10月16日
-
戦前戦後の髪型の変化と床屋、パーマ屋さん【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第360回2025年10月16日
-
「国消国産の日」にマルシェ開催 全国各地の旬の農産物・加工品が集合 JA共済連2025年10月16日
-
静岡のメロンや三ヶ日みかんなど約170点以上が「お客様送料負担なし」JAタウン2025年10月16日
-
高齢者の安全運転診断車「きずな号」を改訂 最新シミュレーター搭載、コースも充実 JA共済連2025年10月16日
-
安心を形にした体験設計が評価 「JA共済アプリ」が「グッドデザイン賞」受賞 JA共済連2025年10月16日
-
東京都産一級農畜産物の品評会「第54回東京都農業祭」開催 JA全中2025年10月16日
-
JA協同サービスと地域の脱炭素に向けた業務提携契約を締結 三ッ輪ホールディングス2025年10月16日
-
稲わらを石灰処理後に高密度化 CaPPAプロセスを開発 農研機構2025年10月16日
-
ふるさと納税でこども食堂に特産品を届ける「こどもふるさと便」 寄付の使いみちに思いを反映 ネッスー2025年10月16日
-
「NIPPON FOOD SHIFT FES.」に出展へ 井関農機2025年10月16日
-
マルトモが愛媛大学との共同研究結果を学会発表 鰹節がラット脳のSIRT1遺伝子を増加2025年10月16日
-
マックスの誘引結束機「テープナー」用『生分解テープ』がグッドデザイン賞を受賞2025年10月16日
-
北海道芽室町・尾藤農産の雪室熟成じゃがいも「冬熟」グッドデザイン賞受賞2025年10月16日
-
夏イチゴ・花のポット栽培に新たな選択肢「ココカラ」Yタイプ2種を新発売2025年10月16日
-
パルシステムの奨学金制度「2025年度グッドデザイン賞」を受賞2025年10月16日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日
-
鳥インフル デンマークからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日