「関税の例外」への矮小化は容認できない TPPを慎重に考える会が「断固反対」決議2013年2月21日
民主党議員が中心となって結成した「TPPを慎重に考える会」は2月20日に第44回会合を開き「訪米時にTPP交渉参加を表明することに断固反対」とする決議を採択した。
決議はTPPについて「日米構造協議から始まった世界のルールをアメリカ企業の活動しやすいように変える、という遠大な戦略の延長線上にあるものであり、単なるFTAとは全く異質」と断じた。
そのうえで安倍首相が、聖域があるかないか首脳会談で感触を得たい、などと発言していることについて「そもそもわれわれがTPPへの参加を否とする理由は関税の例外を勝ち取れるかの一点ではない。TPPに潜む、国家主権の問題、日本の制度や文化を消滅させる恐れ、日本の総合安全保障がないがしろにされかねないことを問題視している」と強調し、問題を農産品の関税撤廃だけに矮小化し「そこだけ帳尻を合わせてTPPへの交渉参加を図らんとする動きは決して容認できるものではない」として、参加表明に断固反対すると表明した。
なお、会合では同会の会長に篠原孝衆議院議員が就任することを決めた。 この日は愛知県弁護士会の憲法委員会副委員長の岩月浩二氏が「法律家が斬る! 投資家対国家紛争解決手続」と題して報告。岩井氏は「TPP問題は関税にあるのではない。アメリカの狙いはいつでもどこでもアメリカ企業が勝手ができるようにすること」と指摘。
外国資本が国家を提訴することができるISD条項はそれを実現するための条項だが、投資家が国際仲裁の名のもとに国家を直接、私設裁判所に提訴するのは司法主権の侵害であり、さらに行政権、立法権や地方自治なども無効化するとその危険性を解説。「ISD条項は憲法破壊でありクーデターのようなもの」と強調した。
(写真)
上:あいさつする同会会長に就任した篠原孝衆議院議員
下:「ISD条項は憲法違反」と話す弁護士の岩月浩二氏
【安倍首相訪米に当たっての決議】
我々は2年余にわたり、TPPの内容とその日本への影響について幅広い観点から検討を行ってきたが、政府・自民党が関税問題にしたがり、偏った発言や行動をしていることに危慎を抱いている。 TPPは、日米構造協議から始まった世界のルールをアメリカ企業の活動しやすいように変える、というアメリカの遠大な戦略の延長線上にあるものであり、単なる自由貿易協定(FTA)とは全く異質のものである。
米韓FTAはTPPと内容が似通っているといわれているが、隣国韓国でも、ISD条項を始めとして国家主権をも危うくするものと大間題視されていることからも、TPPは、日本の制度や社会の仕組みのみならず、伝統文化まで変革を迫る窓口や手段になる恐れがある協定であることは明白である。
アメリカでは、交渉参加への条件はもうすでに日本に預けているとばかりに、TPPへの参加は日本の決めることだという姿勢を一貫して保っている。この点においては通商摩擦の頃と比較し日本は余裕を持って決められる立場であり、加入の条件やその後の影響が計り知れない今、無謀な交渉参加に前のめりになる必要は全くない。
それにも係わらず、経済界は日本のTPP交渉への参加表明を期待し、これに応えるように安倍首相は2月下旬の訪米時に、オバマ大統領との会談を行い「聖域なき関税撤廃」の例外の感触を得てくるなどといった国会答弁を繰り返してしている。
そもそも、我々がTPPへの参加を否とする理由は、「関税の例外」を勝ち取れるかの一点ではない。TPPに潜む、国家の主権の問題、日本の制度や文化を消滅させる恐れ、そして日本の総合安全保障を蔑ろにされかねないことを問題視しているのである。問題点を短小化し、そこだけ帳尻を合わせてTPPへの交渉参加を図らんとする動きは決して容認できるものではない。
我々TPPを慎重に者える会は、ここに以下の通り決議し、TPP交渉参加に再度否を叩きつけるものとする。
【主文】
2月の訪米時において、TPP交渉参加を表明することには断固反対する。
平成25年2月20日 TPPを慎重に考える会
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