「現場重視の姿勢で攻めの農林水産業へ」 林芳正・農林水産大臣2013年2月25日
昨年12月に就任した林芳正農相が抱負を寄せた。
この度、農林水産大臣を拝命した林芳正です。「農は国の基」という言葉があるように、農林水産業は食料生産のみならず、国土や自然環境の保全、集落機能の維持といった多面的機能の発揮を通じ、国民の暮らしに重要な役割を担っています。農林水産大臣としての任務の重大さに身が引き締まる思いを感じるとともに、職務にまい進する決意を新たにしているところです。
現在、農林水産業・農山漁村は、農業生産額の減少や担い手の高齢化など課題が山積しておりますが、私は、農林水産業が潜在的に非常に大きな可能性を持っていると考えております。
このため、私は、これからは「攻めの農林水産業」を推進することが必要だと考えております。すなわち、生産現場自らが需要の動向を敏感につかんで高付加価値化等を積極的に進めることにより、農林水産業の潜在力を最大限に引き出していきたいのです。
そのためには、「現場重視の姿勢」が重要です。私も、農林水産業が盛んな山口の出身で、政治家としてこれまでも現場を大事にしてまいりました。生産現場のニーズ、需要サイドのニーズをそれぞれ敏感にくみ取り、それらを結びつけていくところに「攻めの農林水産業」が生まれ、育っていくと考えています。
これらの「攻めの農林水産業」の実現のための取組を省全体として一体的に推進することを目的に、このたび、私が本部長となり「攻めの農林水産業推進本部」を農林水産省に設置しました。同本部において、多面的機能と担い手に関する「制度検討」と、内外の市場開拓、付加価値の創造等を行うための具体的な「戦略」とを車の両輪として取り組んでまいります。
昨年末からこれまで、「攻めの農林水産業」を推進するための第一歩とするべく、補正予算や新年度予算の編成などを、現場の前向きなニーズに即して行ってまいりました。低コスト化、高付加価値化などを行うための生産基盤整備や施設整備関係の予算の復活、6次産業化を進めるための農林漁業成長産業化ファンド(A-FIVE)の拡充、都市と農村の共生・対流の拡充、消費拡大や食品の機能性に着目した技術開発の推進などを盛り込んだところです。
一方で、政権公約に掲げた戸別所得補償制度の見直しについては、生産者の皆様が現行制度を前提に本年の営農計画を既に立てられていることから、現場の混乱を避けるため、来年度は名称変更等の見直しにとどめるとともに、二十六年度に向けて本格的な検討を行うこととしました。
東日本大震災からの復旧・復興については、安倍総理から閣僚全員が復興大臣であるという御指示がありました。復興担当大臣とも連携しながら、全力で復旧・復興に取り組んでまいります。一月十三日に宮城・福島両県を、二十六日に宮城・岩手両県をそれぞれ訪れたところであり、日本の食料供給基地でもある東北地方を一刻も早く復興するため、農地や主な漁港の復旧をおおむね二十五年度までにするという目標を実現するとともに、農地の大区画化や先進的技術の導入など、より良い復興のための施策を講じてまいります。
また、ガレキ由来の再生資材も活用した海岸防災林の再生を進めてまいります。
原発事故対応については、安全な農林水産物を安定的に供給することを最優先とし、生産現場における放射性物質の吸収抑制対策を徹底しつつ、除染や各都県における放射性物質検査の実施を支援してまいります。
放射性物質の吸収抑制対策、除染等に限らず、国民生活にとって最も重要な食品の安全性を向上し、消費者の信頼を得ていくことは、全ての施策の基本となる重要な課題です。国民の健康を守ることを第一に、「後始末より未然防止」の考え方を基本に、食品に含まれる有害物質等の含有実態の把握や、これに基づく管理の徹底など、農場から食卓にわたり科学的根拠に基づいた取組を推進してまいります。また、農薬や飼料等の生産資材の適正な使用の徹底を図るとともに、消費者の信頼を確保するための情報提供や食品表示の適正化に努めてまいります。
経済連携の推進に当たっては、情報を国民に提供し、議論をしていただき、理解を得ながら進めていくことが重要であると考えております。環太平洋パートナーシップ協定については、「『聖域無き関税撤廃』を前提とする限り交渉参加には反対」という基本的な考え方の下に、これまでの関係国との協議の内容や参加した場合の影響を精査・分析し、国民の皆様への情報提供を行いながら、十分に検討を行うことが必要と考えております。
森林・林業については、戦後に造成された約一千万ヘクタールの人工林が資源として本格的に利用可能な時期を迎えつつあります。公共建築物等への地域材の活用や未利用間伐材等の利用拡大等を推進してまいります。また、森林施業の集約化や路網の整備を図って、地域の実情に応じた持続的な森林経営を確立するとともに、地球温暖化対策としてCO2の森林吸収量の確保に向けた森林の整備・保全等を推進してまいります。
水産業については、まず、計画的に資源管理に取り組む漁業者に対する資源管理・漁業経営安定対策を推進するとともに、意欲ある漁業者の経営安定等に取り組んでまいります。また、国民の生命・財産の保全、漁村文化の継承等の多面的機能の発揮のため、漁業者等が行う活動を支援します。さらに、産地から消費地までの流通過程の目詰まりを解消するため、販売ニーズや産地情報の共有化等を支援し、水産物の消費拡大と流通促進に取り組んでまいります。
こうした政策の実現のためには、組織が一丸となって取り組むことが重要です。両副大臣、両政務官、そして職員全員と一つのチームとなって、諸課題に取り組んでまいります。
農林水産行政に対する国民の皆様の御支援と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げ、結びとさせていただきます。
平成二十五年二月
農林水産大臣 林 芳正
重要な記事
最新の記事
-
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日 -
「農林水産業みらいプロジェクト」2025年度助成 対象7事業を決定2025年12月19日 -
福岡市立城香中学校と恒例の「餅つき大会」開催 グリーンコープ生協ふくおか2025年12月19日 -
被災地「輪島市・珠洲市」の子どもたちへクリスマスプレゼント グリーンコープ2025年12月19日


































