新農政フル活用でビジョン実践強化2014年2月20日
JAグループが地域農業戦略強化で方針
JAグループは2月6日の全中理事会で「第26回JA全国大会決議に基づく地域農業戦略に強化・再構築に向けた取り組み」を決めた。新農政をフル活用した地域営農ビジョンの実践強化や集落営農の経営発展・再構築、法人化などが重点実践事項だ。
◆協同でビジョン
JAグループの地域営農ビジョンの策定・実践の取り組みは、農家組合員の世代交代が急速に進むなか、集落の話し合いと合意のもとで▽地域農業の核となる担い手経営体を明確化・育成する▽多様な担い手が活躍し地域の農地を守る、などの取り組みを通じて地域農業を「次代へつなぐ協同」だ。
昨年4月の全中調査では311JA(全JAの45%)で地域営農ビジョンに取り組み、今後検討をしているとするJAを含めると8割で取り組みが進んでいる。
こうしたなかで政府は米の直接支払い交付金単価を半減させる水田農業政策の見直しを軸とした新たな政策を打ち出した。 その柱は[1]地域政策としての「日本型直接支払い制度」の創設(農業の多面的機能に着目した農地維持活動などへの支援)[2]担い手への農地利用の集積・集約化を加速化させるための「農地中間管理機構の制度化」[3]米の直接支払い交付金など「経営所得安定対策の見直し」(米価の下落分を補てんする変動交付金の廃止、ゲタ・ナラシ対策の規模要件を排除)[4]飼料用米生産など非主食用生産の振興、など「水田フル活用と米政策の見直し」の4つだ。
◆水田フル活用を
今後の運動ではこうした新たな農業・農村政策をフル活用して地域営農ビジョンの強化をめざす。 そのためには▽主食用米の生産数量目標を確実に達成し飼料用米などの作付け拡大をめざす「水田フル活用ビジョン」の策定▽日本型直接支払いの交付対象となる活動組織や活動計画づくり、農業者の所得増大となるような交付方法の工夫▽農地中間管理事業による地域集積協力金や耕作者集積協力金の交付要件となる地域ぐるみの農地利用集積▽集落単位での団地化による飼料用米生産、などが重要になる。
いずれも集落や地域を基礎とした組織、活動づくりが鍵になるが、交付金も含めた農家組合員の農業所得向上には不可欠な取り組みだ。
◆集落営農が重要
地域農業の担い手であり、ビジョン実践の主体ともなる集落営農の経営発展も重点事項だ。
集落営農組織は昨年2月時点で全国で1万4643組織。このうち法人化しているのは2917で集落営農全体の20%となっている。前年にくらべ324増加した。また、5年以内の法人化を計画しているのは5110組織となっている(いずれも農水省調べ)。
JAグループとして集落営農の経営発展と法人化を課題としているが、政府が昨年6月に決めた日本再興戦略でも10年間で農業法人を5万設立する目標を示した。その実現のため農水省は、集落営農の法人化の推進を図る方針だ。
とくに26年度からスタートする農地中間管理事業への対応では集落営農組織が重要になる。農地中間管理機構が農地集積のために支払う機構集積協力金には個々の農地の出し手に対する支援(経営転換協力金・耕作者集積協力金)のほかに、地域の農業者組織に対して集積率に応じて支払う地域集積協力金もある。
この協力金の単価は26・27年度の2年間については最大10aあたり3.6万円の特別単価が設定された(28・29年度は同2.7万円、30年度以降は同1.8万円)。この交付金の対象となるためにも集落で合意した農地利用集積を行っている集落営農の組織化が地域住民にとって大切になる。
また、集落営農組織を法人化し、農地中間管理機構を通じて利用権を設定する場合は、地域集積協力金と経営転換協力金を合わせて地域に交付する方向で検討されている。こうした政策を活用してビジョンの策定・実践を進めることが求められる。
◆JA出資法人も
一方で集落の中核となる農業の担い手が見出せない地域もある。その受け皿として必要となるのがJA出資法人やJA本体による農業経営だ。 JA全中の25年調査ではJA出資法人は全国で367。JA本体で農業経営事業に取り組むのは54JAとなっており、JA出資法人とあわせて249JA(全JAの36%)が農業経営に取り組んでいる。農家の高齢化と担い手不足によって、JA全中ではこの取り組みは今後も増加していくとしている。
また、JA出資法人などの役割も地域事情によってさまざまだ。担い手不在農地での農産物栽培や農作業受託、耕作放棄地の復旧にとどまらず、地域営農ビジョンと連動し新規・戦略作目のモデル経営、新規就農者の育成など地域の課題解決のために役割を発揮しようとしている法人もある。 JA全中では今回決定した方針のなかでも、地域営農ビジョン運動の強化に向けて改めてJA出資型農業法人の全国展開が必要との考えを示し、全国交流会や検討会を開き、▽JA経営全体でのサポートとコスト負担▽JAによる農業経営の運営ノウハウの整理、JA農業経営マネージャーの育成▽中央会・連合会によるJAグループ全体としての推進支援策、などを検討していくことにしている。
そのほか地域農業戦略強化に向けた重点実践事項には▽新規就農者育成支援▽担い手経営体を支えるJA総合事業支援の強化▽JAグループ主導の販売力強化と営農指導機能強化▽6次産業化の推進、などが盛り込まれている。
(関連記事)
・JA全中、初の地域営農ビジョン研究大会(2014.02.06)
・地域営農ビジョン大賞、受賞組織決まる JA全中(2014.01.07)
・地域営農ビジョンで未来を拓け(2013.11.12)
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