ポテチ用ばれいしょ生産回復へ2017年5月15日
昨年夏の北海道における台風被害で原料不足となっているポテトチップ用国産馬鈴薯(ばれいしょ)の今後の生産、出荷見込みについて、このほど農林水産省が見通しを示した。昨年は生産が1割減となったが、今年は平年並みの生産量が見込まれるという。
ばれいしょの全国生産量は27年産で約240万t。生産者の高齢化による作付け中止や他作物への転換などで作付面積は減少し、最近10年間で約9%減少した。
生産量のうち北海道が8割を占める。28年産は8月の台風被害で前年より1割減の172万tとなった。道庁のまとめではばいれいしょの被害面積は6069haで被害額は119億円に及んだ。
ばれいしょは北海道では小麦、てん菜、豆類との輪作作物として重要な作物となっている。全体として生産減少が進むなかでも、ポテトチップ需要は増加し国産のポテトチップ用ばれいしょは増加傾向で推移、27年産では生産量の18%を占めた。ポテトチップ出荷数量は平成20~22年ごろは11万t前後だったが、27、28年では13万tを超えた。原料のばれいしょは40万t程度でこのうち35万tが北海道となっていることから、今回は北海道の生産減が原材料不足につながった。ポテトチップ向けは「トヨシロ」、「きたひめ」、「スノーデン」などが専用品種で、生食用やでん粉用品種の活用はできない。
今後、ポテトチップ用のばれいしょの収穫は5月下旬から九州(宮崎、鹿児島、長崎)で収穫が始まり、東海(三重)、関東(茨城、千葉)、東北(青森、宮城)の順に行われ、9月には北海道で本格化する見込み。今のところポテトチップメーカーは各産地で平年並みの生産量を見込んでいるという。
◆日本製品の輸出期待
一方、ポテトチップ需要の増加にともない米国からの原料輸入も増加している。
ただし、ばれいしょの根に寄生して壊滅的な打撃を与えるジャガイモシロシストセンチュウ発生国からは輸入を禁止してきた。土壌中にシスト(殻内に多数の卵を保持)のかたちで10年以上生存することから栽培を制限するしかない。このうち米国産については州を指定、発生がないことを条件に調査し、さらに輸入港での検査と加熱加工処理を義務づけ、平成18年に輸入を認めた。
現在、指定産地地域はアリゾナ州、ウィスコンシン州など15州。輸入期間は国産の出回り時期と重ならない2月1日から7月31日としている。
輸入量は平成24年に1万tを超え28年は2万8331tと過去最高となったが、今回の原料不足で業界は29年度に5000tほど追加輸入することにしているといい、過去最高水準となりそうだ。ただ、良質のポテトチップ製造のためと、米国産使用とのコストは変わらないことから国産原料の要望が強い。
ばれいしょの輸入条件は輸入植物検疫制度で決めている。国内の農業生産に重大なダメージを与える植物病害虫の侵入を防ぐための措置で、国際的な取り決めと科学的なリスク評価で決めている。
今回、ばれいしょの輸入検疫について米国の一部報道機関が非関税障壁と批判しているが、山本農相は「安易な非関税障壁論には与(くみ)できない」と12日の記者会見で述べるとともに、「わが国のポテトチップという、いわば加工品の輸出について期待をしている」と話した。
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