持続可能な農業の実現へ 機械・情報分野の研究紹介 NARO国際シンポジウム2019年12月2日
農研機構(NARO)は11月22日、つくば国際会議場(茨城県つくば市)で、国際シンポジウム「持続可能な農業の実現に向けた 機械・情報研究分野からの新たなアプローチ」を開催した。
東京農工大学の澁澤誉教授が基調講演を行った
農業生産性の飛躍的な向上や持続可能な農業の実現に向けて、スマート農業に関する研究が世界各国で進むなか、日本発のスマート農業の技術を広く海外へ展開するために、国際標準化を意識した研究開発を進めることが重要だ。シンポジウムでは欧州、アジア、日本における農業機械・情報分野に関連したスマート農業研究の現状と国際標準化を視野に入れた技術の共通化・規格化に関して各国の専門家が講演した。
冒頭で農研機構の寺島一男理事が「イノベーションには多様な組織のグローバルな視点が必要。スマート農業を促進する芽が生まれることを期待する」とあいさつ。
基調講演は、1990年代初頭にいち早く、日本で精密農業のアイデアを発信したスマート農業のパイオニア、東京農工大学の澁澤栄名誉教授が「コミュニティベース精密農業」について講演。「スマート農業はマネジメントの問題。意思決定するうえで必要な情報を収集することが必要で、農家と機械が一体化することで農業の向上につながっていく」と語った。
続いて、ベルギー・ルーベンカトリック大学のジョセ・デ・バーデマーカー教授が「バイオメカトロニクス:食糧生産の改善に向けた技術と生物学の融合」と題して講演。いちご、みかんなどの違いを認識し実の形状に合わせて動きを変えて収穫するロボットや、ブロッコリーを傷つけずに吸引しながら収穫するロボットなどの開発の実例を動画で紹介。また、同じリンゴでも種別による内部構造の違いをVR画像で見せ、こうした違いも収穫の際に見極める必要があることを説明した。
(写真)ルーベンカトリック大学のバーデマーカー教授
農研機構農業情報研究センターの本島邦明センター長は、同研究センターの活動として、現在、農研機構が開発し管理を担うデータプラットフォームで、官民の垣根を越えてワンストップのデータインフラを構築することをめざす「WAGRI」について説明。本島センター長は「WAGRIはデータを活用した農業の将来のカギを握っている」と話した。
課題として誰に使う権利があるのか、情報提供者のメリットなどについて議論されているが、「研究者は自由に情報を見られるようにすることでプロジェクトが進むと思っている」と述べた。
(写真)農研機構農業情報研究センターの本島センター長
このほかシンポジウムでは、韓国・ソウル大学のイ ジョンヨン助教授の「韓国における第4次産業革命のための準備とスマート農場の展望」、イタリア・農業機械化機構のサンドロ・リベラトーリ所長による「近年の農業機械の検査における国際標準化の動向」などの講演を行った。
(関連記事)
・連載コラム 澁澤栄・東京農工大学特任教授:精密農業(スマート農業)とは?
・農業ビッグデータ活用の時代へ WAGRIフォーラムが開催(18.03.13)
・スマート農業への期待と課題で意見交換会 農水省(19.11.11)
重要な記事
最新の記事
-
米粉で地域振興 「ご当地米粉めん倶楽部」来年2月設立2025年12月15日 -
25年産米の収穫量746万8000t 前年より67万6000t増 農水省2025年12月15日 -
【年末年始の生乳廃棄回避】20日から農水省緊急支援 Jミルク業界挙げ臨戦態勢2025年12月15日 -
高温時代の米つくり 『現代農業』が32年ぶりに巻頭イネつくり特集 基本から再生二期作、多年草化まで2025年12月15日 -
「食品関連企業の海外展開に関するセミナー」開催 近畿地方発の取組を紹介 農水省2025年12月15日 -
食品関連企業の海外展開に関するセミナー 1月に名古屋市で開催 農水省2025年12月15日 -
【サステナ防除のすすめ】スマート農業の活用法(中)ドローン"功罪"見極め2025年12月15日 -
「虹コン」がクリスマスライブ配信 電話出演や年賀状など特典盛りだくさん JAタウン2025年12月15日 -
「ぬまづ茶 年末年始セール」JAふじ伊豆」で開催中 JAタウン2025年12月15日 -
「JA全農チビリンピック2025」横浜市で開催 アンガールズも登場2025年12月15日 -
【地域を診る】地域の農業・農村は誰が担っているのか 25年農林業センサスの読み方 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年12月15日 -
山梨県の民俗芸能「一之瀬高橋の春駒」東京で1回限りの特別公演 農協観光2025年12月15日 -
迫り来るインド起点の世界食糧危機【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月15日 -
「NARO生育・収量予測ツール」イチゴ対応品種を10品種に拡大 農研機構2025年12月15日 -
プロ農家向け一輪管理機「KSX3シリーズ」を新発売 操作性と安全性を向上した新モデル3機種を展開 井関農機2025年12月15日 -
飛翔昆虫、歩行昆虫の異物混入リスクを包括管理 新ブランド「AiPics」始動 日本農薬2025年12月15日 -
中型コンバインに直進アシスト仕様の新型機 井関農機2025年12月15日 -
大型コンバイン「HJシリーズ」の新型機 軽労化と使いやすさ、生産性を向上 井関農機2025年12月15日 -
女性活躍推進企業として「えるぼし認定 2段階目/2つ星」を取得 マルトモ2025年12月15日 -
農家がAIを「右腕」にするワークショップ 愛知県西尾市で開催 SHIFT AI2025年12月15日


































