農政は「輸出」に力 既定方針を強調-菅首相 所信表明2020年10月26日
第203臨時国会は10日26日召集された。会期は12月5日までの41日間。菅義偉首相は衆議院本会議場で午後2時から所信表明を行い「2050年までの脱炭素化社会の実現を宣言する」などと演説した。この後、28日から3日間、各党の代表質問が行われる。農政では農産物輸出5兆円目標に向けた戦略の策定を年末までに取りまとめ早急に実行に移すことなど既定方針を示すにとどまった。
菅義偉内閣総理大臣
所信表明のなかで「菅政権は成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力する。わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年脱炭素社会の実現をめざすことを宣言する」と菅首相は演説した。
そのうえで温暖化への対応は経済成長への「制約ではない」とし、積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという「発想の転換が必要だ」と強調した。鍵となるのは次世代型太陽電池であり、実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進することや、脱炭素社会の実現に向け国と地方で検討の場を新たに創設することも明らかにした。
地方や農業政策については、活力ある地方をつくろうと自らが総務相時代に創設したふるさと納税は、今では「5000億円も利用されている」と胸を張った。そのうえで東京周辺の1都3圏の消費額は全国の3割に過ぎないと指摘し「観光や農業改革などにより地方への人の流れをつくり地方の所得を増やし、地方を活性化し、それによって日本経済を浮上させる」と地方重視を強調した。
地方活性化の指標としてインバウンドなどの数値を8年前の政権交代時と比較、インバウンドは約4倍の3200万人、農産品の輸出額は2倍の9000億円となったことなど挙げた。今年は新型コロナウイルスの影響を受けながらも「直近では前年比11%増となり回復の動きが出ている」と数字を挙げて、「2025年に2兆円、30年に5兆円の目標に向けて当面の戦略を年末までに策定し早急に実行に移す」とした。そのほか「これまでの農業改革についても確実に進め地方の成長につなげていく」と表明した。
また、地方の最低賃金の引き上げで都会から地方への人の流れをつくることや、防災・減災対策など国土強靭化への取り組みなど地方活性化への取り組みは随所で強調した。ただ、基本計画の実践、農業生産基盤の強化策といった骨太の農政課題が語られることはなかった。
所信表明全体では国民のために働く内閣を掲げ、行政の縦割りを打破し規制改革を全力で進めるとともに、新型コロナウイルスの爆発的な感染を防ぎ、経済の回復を図る姿勢を示した。演説の最後にはまず自らやってみる自助があり、地域や家族で支えあう共助があり、そして「国によるセーフティネットという公助がある」との就任以来の持論を強調した。
臨時国会で与党側は新型コロナウイルスのワクチン確保に関する法案や、日英EPA協定の承認案、また種苗法改正案などを成立させたい考え。一方、野党側は新型コロナ対策や経済の建て直しについて政府の姿勢を糾すとともに、日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅首相が任命しなかった理由や経緯を追及する方針だ。所信表明演説では日本学術会議問題への言及はなく、演説に対して野党から「学術会議問題はどうなったんですか?」との野次も飛んだ。
写真:首相官邸ホームページより
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