輸出増へ地方港湾・空港を積極活用-農水省2021年5月6日
農林水産物の効率的な輸出のため産地に近い地方の港湾や空港を積極的に活用することなど、輸出拡大に向けた今後の取り組み事項を農林水産省と国土交通省が4月28日にまとめた。
政府は2030年に農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする目標を掲げ、昨年12日に「輸出拡大実行戦略」を策定し、そのなかで輸出のための効率的な物流の構築の方向性などについて今年夏をめどに結論を出すとされている。そのため農水省と国交省は3月から輸出物流に関する有識者と施策の企画実務担当者との意見交換会を開いてきた。4月28日に検討結果をとりまとめた。
関係者からのヒアリングなどを通じて課題が明らかにされた。
横持輸送費で3~4倍
現状は輸出産地が集中する北海道、九州からの輸出の多くが京浜・阪神の港湾や空港へ陸上輸送されている。そのため産地から京浜・阪神地区への横持費用がかさむ。鹿児島県内の産地から同県内港湾への輸送コストは約5.2万円(10tトラック)であるのに対して神戸港にトラック輸送すると約20万円とかさむ。産地近隣港への輸送とくらべて3~4倍となるほか、輸出までの時間もかかる。
2024年にはドライバーへの時間外労働時間の上限規制が適用されることから、それ以降は陸上輸送により多くの時間とコストがかかることが示された。
それをふまえ取り組むべき事項のひとつとして「最適な輸送ルートの確立」をあげた。具体的には地方の港湾、空港を積極的に活用し、輸出産地からの直行便や主要港への経由便など多様な輸送ルートのなかから、商品や物量、時期に応じた最適な輸送ルート、輸送手段を選択して、陸上輸送にかかる時間とコストを短縮する。
また、現状では小ロット、多品目の輸出が行われているため単独事業者で40ftコンテナを満載できる品目は少ないことも示された。40ftコンテナ満載では運賃はm3あたり約2500円、20ftコンテナは約4200円と1.7倍となるが、20ft小口混載では約1万6000円と3.8倍となる。ただ、貨物量が少ない、季節変動があるなど不安定な地域からは直行便運行はできないという課題もある。
そこで取り組むべき事項として「大ロット化・混載の促進のための拠点確立」をあげた。拠点となる地方の港湾、空港に同一品目を集約し、大ロット化や、温度などで同じ扱いができるものの混載を実施していく。
また、大ロット化を実現するため、輸出産地が集中している地域、輸出産地と輸出環境・体制が整備されている港湾、空港へのアクセスがいい地域、航路・空路が充実し輸出貨物が集中している地域で重点的に検討する。
意見交換会では、輸出産地はまだ形成途上であり、生産者や輸出事業者、物流事業者などの組織化ができておらず、輸出に取り組む生産者や事業者が輸出商社などの求めに応じて個別に配送している実態にあることもふまえて、輸出産地、物流事業者、行政などが参加するネットワークの構築も取り組むべき事項とされた。
そのほか、地方の港湾や空港周辺に冷蔵・冷凍倉庫などのインフラが不足していることから、コールドチェーン確保のための拠点整備や、鮮度保持・品質管理や物流効率化のため包材の統一など規格化、標準化がナショナルブランド化に有効であることや、検疫など行政手続き上のDX化などの環境整備、品質・鮮度保持のためのコンテナや包材などの技術開発を進めることも、輸送時の鮮度、品質を安価に維持することも輸出拡大に向けた取り組み課題とした。
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