「基本法」の機能 検証を 生源寺福島大食農学類長が講演2022年8月23日
農政ジャーナリストの会が8月17日に開いた研究会で福島大学の生源寺眞一食農学類長が「食と農の未来をどう描くか」をテーマに講演した。生源寺氏は1999年に制定された食料・農業・農村基本法について、どう基本法が機能してきたかについて振り返ることが今後の農政を考えるうえで大事だなどと話した。
講演する生源寺氏
講演ではまず「フード・セキュリティをめぐる新局面」を指摘した。
ロシアのウクライナ侵攻で浮き彫りになった側面として、肥料や農薬といった農業投入財の需給の構図を具体的に把握することが大切になっていることや、食料や食料生産を支える資源を他国に依存することがない状態は、「かえって乱暴な行動を生む危険性」があり、逆に他の国や地域にある程度依存していることが「落ち着いた判断、行動につながる面もある」ことなどを指摘した。
また、フード・セキュリティとは、毎日の食事の確保の意味であり、とくに途上国の貧困層で問題となっているが、最近では日本でも無視できない問題であり栄養学の知見も活用した実態把握が必要と提起した。
国内農業については、水田農業の農家のリタイアが加速することで、かつては貸し手市場だった農地の貸借は、今は借り手市場となっていることを指摘。以前は小規模・兼業農家の存在が担い手の規模拡大を妨げると考えられていたが、今は小規模経営の継続や、高齢者の新規就農などいろいろなタイプの農業者が共存していく構造に移行していることに着目すべきと話した。
ただ、農村は「その国で食べるものを反映した姿」であるべきだが、畜産物の消費が伸びているなか、水田農業では米中心の世界から脱却できておらず、飼料作物の生産に力を入れるべきと話した。
また、現行基本計画では新たな農村政策の創設の方針を打ち出したことを評価した。これまでの農村政策は、条件不利地域との言葉に示されているように中山間地域直接支払いなどハンディキャップを補うという視点が中心となっていたとして、今回はハンディキャップを直視しつつも、深みのある自然資源の活用など「農村の強みを生かす政策」が打ち出されていることを指摘した。
「農村のあるべき姿を模索する前向きの姿勢こそが本来の農村政策のとるべきスタンス」と話した。
一方、農水省は秋から現行基本法の見直しを始めることを明らかにしている。
生源寺氏は「どういうかたちで基本法が機能したきたか、あるいは機能できなかったか、20年を振り返ってみる必要がある」として、この間の農政が基本法に基づき展開されたかどうかの検証も論点だと強調した。
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