基本理念に「適正な価格形成」の仕組み構築 中間とりまとめ案2023年5月22日
農水省は5月19日、農政審議会基本法検証部会にこれまでの議論をふまえて中間とりまとめ案を示した。この日の議論を受け29日に中間とりまとめを行う。
第15回基本法検証部会で開会のあいさつをする野村農相
「平時」からの食料安保
基本理念は▽国民一人一人の食料安全保障の確立、▽環境等の配慮した持続可能な農業・食品産業への転換、▽食料の安定供給を担う生産性の高い農業経営の育成・確保、▽農村への移住・関係人口の増加、地域コミュニティの維持、農業インフラの機能確保の4つ。
基本理念のもとに分野別の主要政策の見直しの方向をとりまとめ「食料」分野では、「食料安全保障のために需要に応じて生産された農産物の適正な価格形成が必要」だとして、その実現に向け仕組みの構築を検討することを盛り込んだ。
そのほか国民全ての食品アクセスの確保のため、産地から消費地までの幹線物流の効率化、中山間地域等でのラストワンマイル強化といった流通問題、持続可能な食料供給の実現に向けバイオテクノロジーやデジタル技術を活用したバリューチェーンの創出、民間在庫や海外での保管などを総合的に考慮した備蓄などを柱に食料政策を展開する。
国産への切り替え
「農業」分野では、農業者の大幅な減少が予想されるなか、「離農する経営の農地の受け皿となる経営体」と「規模の大小に関わらず付加価値向上を目指す経営体」の育成・確保をめざすことに加え、副業的経営体や自給的農家も含めた「多様な農業人材」を位置づける。
生産では輸入品から国産への転換が求められる小麦、大豆、加工・業務用野菜、飼料作物など、「水田の畑地化・汎用化」を行うなどで増産を図る方針を示した。
そのほか外国人労働者も含めた人材の育成・確保、スマート農業の普及やDX化、農福連携、女性参画、高齢農業者の活動促進、経営安定対策の充実なども柱となっている。
「農村」分野では、農村におけるビジネスの創出、都市農村交流と関係人口の増加、多様な人材活用による農村機能の確保、そして人口が減少するなかで末端の農業インフラの継続的な保全管理に向けた施策を講じることも打ち出した。
そのほか中山間地域直接支払いは引き続き推進するほか、営農を継続できない農地の粗放的管理や林地化による保全の方向も示している。
「環境」分野では、環境負荷軽減を行う農業の主流化、消費者の環境や持続可能性への理解醸成などを柱とする。
「基本計画」は「平時」からの食料安全保障を実現する計画に見直し、食料をめぐる現状を把握して課題を明確化、具体的施策を設定する。食料自給率については課題に適した数値目標を設定する。
一方、不測時の食料安全保障については政府全体の意思決定を行う体制のあり方を検討する。
農業団体の役割については、自治体や食品産業をはじめとした民間企業とNPОなどと連携し、現場の抱える課題に対応する方向を促進する。
多様な農業人材で議論
会合では多様な農業人材をめぐって議論になった。多様な農業人材について「実態は兼業農家。農業施策の軸にはならない」(真砂靖TH総合法律事務所特別顧問)と多様な農業人材の位置づけに否定的な意見の一方、柚木茂夫全国農業会議所相談役は、現行基本法がめざす「効率的かつ安定的な経営体」が太宗を占める姿をめざすべきとしつつ「担い手だけでは農業生産をカバーできていない事実がある。(めざす姿への)経過として多様な農業人材を位置づけていく必要がある」と話した。
また、齋藤一志日本農業法人協会副会長は、多様な人材は必要だが、今後、中山間地域ではさらに人が少なくなり「中山間地域でも大規模生産ができる方向を考えるべき」と提起した。
中家徹JA全中会長は「農地の受け皿となる経営体は必要だが、大規模農家だけでは無理。もっと多様な人が必要」と述べ、茂原荘一群馬県甘楽町長は「規模拡大は大事だがこれだけでは困難。中小・家族経営の意欲を高めることも大事だ」などと延べた。
部会長の中嶋康博東大教授は議論を受け、担い手だけでは農地をカバーできず多様な担い手が一定の役割を果たしているのが現実で、効率的で安定化的な大規模経営という理想に向けて「地域計画」の策定のための「地域の話し合いのなかで役割を明確にすべき」と提起した。
最終とりまとめで多様な農業人材がどう扱われるかは不透明だが、地域農業全体をどう持続させるか、策定が義務づけられた「地域計画」のための「話し合い」に参加し計画を実践するには多様な人材なくして成り立たないのが現場の実態ともいえる。17日に取りまとられた自民党の提言では、農業の持続的な発展に向けた取り組み施策の第一に「地域計画の策定」を徹底することを求めている。
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