農場へのウイルス侵入防止強化へ 衛生管理徹底を 鳥インフルエンザ対策2024年10月11日
9月30日に北海道で野鳥(ハヤブサ)から今シーズン初めての高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認されたことから、今シーズンも渡り鳥からウイルスの侵入リスクは高いとして、農水省は農場でのウイルス侵入対策を強化することなどを呼びかけている。
小里農相は10月8日の閣議後会見で「渡り鳥の飛来が本格化しているなか、全国各地で感染リスクは高くなっており、いつどこで発生してもおかしくない状況を迎えている」との認識を示した。
鶏など家きんでの高病原性鳥インフルエンザは2020年から4シーズン連続で発生し、2022年には殺処分羽数は過去最高の約1771万羽となるなど84事例が発生した。
同年は野鳥での発生も242例と多発した。23年も野鳥での発生は156例と多かったが、家きんでの発生は10県11事例と大幅に減少した。専門家からは前シーズンの大規模発生も踏まえ、農場での飼養衛生管理の向上も発生減に寄与していると指摘している。
農水省はこうした専門家の知見を活用して今シーズンの対策のポイントをまとめ、取り組み強化を呼びかけている。
渡り鳥の飛来が始まると国内にウイルスが侵入すると想定し、10月から来年5月までを対策期間とし、最近の発生状況をふまえて、とくに11月から来年1月までを重点対策期間としている。
そのうえで農場へのウイルス侵入防止対策としてすべての従業員や外来者に手指消毒や専用の衣服・靴の使用、車両の消毒など衛生管理を徹底し、衛生管理者は実施状況を毎月点検することを求めている。
第三者視点で体制チェックも
また、家畜保健衛生所やかかりつけの獣医師など第三者の視点で衛生管理の取り組みについてコンサルテーションを受けることも呼びかけている。農水省は、農場と取引のある業者が卵などの品質チェックだけでなく、飼養衛生管理の観点から農場にアドバイスするなど取り組みも提案している。感染が発生すれば取引先の事業にとっても打撃となることから、関係者で感染防止に向けた取り組みを強めることも必要だとしている。
また、過去に発生した地域・農場では再発のリスクが高いことも分かってきた。21、22年シーズンの非発生の農場のうち、23年シーズンに発生した農場の割合は0.25%だったが、21、22年シーズンに発生した農場が23年シーズンも発生した割合は1.83%と約7倍となった。
農水省は過去に発生した農場は野生動物が近寄りやすい環境があるなど、発生リスクが高いことを認識して農場周辺も含めて対策を実施することが必要だとしている。
地域一体で周辺環境整備
とくに発生農場の近くではため池など野鳥が飛来しやすい水場が多く、また、餌に誘引されたカラスが集まっている事例も見られたという。
そのため、ため池の水抜きや防鳥ネットなどの設置、カラスなどを誘引するような環境を解消することに地域一体となった取り組みが必要だとしている。
疫学調査チームの発生農場への調査では鶏舎の脇で野菜などを栽培している事例もあったといい、感染防止のため農場の施設と周辺環境の点検が求められている。
そのほか早期摘発・早期通報の徹底もポイントとなる。昨シーズンの発生農場で分離されたウイルスの解析では、H5亜型のウイルスは鶏に対して高い致死率を示すが、死亡鶏が増加から通報まで数日かかった事例では鶏舎内からのウイルス検出が多く、通報の遅れがウイルス伝播のリスクを高めると考えられている。そのため毎日の健康観察の徹底、特定症状など異常の早期発見と通報が必要となる。
分割管理 8事例で実施
患畜や疑似患畜が確認された農場では家畜を殺処分する必要があるが、飼養衛生管理基準や特定家畜伝染病防疫指針に従って、人、物、家畜などの動線を分けることで農場を分割管理することもできる。それによって殺処分の範囲を限定し、殺処分の数を減らすことができる。
農水省は昨年9月にマニュアル策定した。分割管理に取り組むには、生産者が自ら取り組むことを決めたうえで、都道府県に相談、都道府県は必要な指導を実施し継続的に実施状況を確認する。生産者は分割後の農場ごとに年1回の定期報告をしなければならない。
農水省によるとこれまでに分割管理の運用を開始したのは8農場あり、12農場が体制整備を進めているという。
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