農政:ウクライナ危機 食料安全保障とこの国のかたち
【ウクライナ危機】NATO拡大を止めることが解決の道(1) 外交評論家 孫崎享氏2022年3月14日
ロシアのウクライナへの侵攻で、多数の犠牲者が出る深刻な事態が続き、穀物市場で小麦などの価格が急上昇している。ロシアの真の狙いは何か、侵攻にいたるまでにどんな背景があったのか。外交評論家の孫崎享さんに寄稿してもらった。
外交評論家の孫崎享氏
2月24日、ロシア軍はウクライナに侵攻した。
こうした軍事的紛争に対する私の基本的立場は次のとおりである。
①武力行使は極力排さねばならない。
②武力行使を実施した際には、即時撤退しなければならない。
③ほぼ全ての国際問題は、軍事衝突になる前に外交的手段によって解決できるし、しなければならない。又軍事衝突が起こった際にも平和的手段によって解決は図れるし、早急に解決しなければならない。
④平和的手段による解決は、自己の主張を100%通すことではない。50%を実現することを最善とする。そのためには、相手が望む最低要求が何であり、それを受け入れられるかを考慮しなければならない。
以上の原則を書いたが、それは日本の今日の世論、政治家から官僚、メディア等が一億総プーチン批判、総制裁論を展開していることに危惧を持っているからである。そしてそのことは、現状において、プーチン礼賛をしたり、ロシア軍侵攻を全面的にしたのなら判るが、プーチン批判をしないから職を外すという動きにまで出てきていることに危惧を感ずる。
毎日新聞は「ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のゲルブ総裁は3日、現代最高峰の歌姫とも称されるアンナ・ネトレプコさんの降板を発表した。米メディアによると、ロシア出身でプーチン大統領とも近いとされたネトレプコさんが、劇場側の再三の説得にもかかわらず大統領批判を拒否したのが原因とされる」と報じた。7日日経新聞は「マリインスキー劇場の芸術総監督であるゲルギエフは侵攻が始まって以降の欧米での指揮が相次いでキャンセルになった。政治と距離を置く声明を出すことをミュンヘン市長などから求められ、応じなかった」と報じた。何かマッカーシズムの到来を思わせる雰囲気である。
日本国内ではロシア非難に終始しているので、それと異なった見解があることを紹介したい。
2月28日英国ガーディアン紙は「多くがNATO拡大は戦争になると警告した。それが無視された。我々は今米国の傲慢さの対価を払っている」とのタイトルの下、「ロシアのウクライナ攻撃は侵略行為であり、最近の展開でプーチンは主要な責任を負う。だがNATOのロシアに対する傲慢な聞く耳持たぬとの対ロシア政策が同等の責任を負う」と記載した。
「全てプーチンが悪い」という論に馴染んでこられた日本の読者は、「プーチン同様にNATOも悪い」という論にたまげていられると思う。
どういうことか、検証していきたい。
1990年、ドイツ統一前、ロシアはまだ全面的に統一の支持ではない。特に、再統一されてドイツ全域にNATO支配が拡大することにソ連は当然懸念を持つ。その中、西ドイツ首脳や米国首脳は「NATOを東方に拡大しないから」と説明していたのである。
・1990年2月9日ベーカー(米国務長官)とシュワルナーゼ(ソ連外相)会談のメモランダム.:ベーカーはソ連外相に「NATOの管轄ないしNATO軍は東方に動かないという鉄壁の保障が存在しなければならない」と述べた。
・1990年2月9日ゴルバチョフとベーカー会談のメモランダム:ベーカーはゴルバチョフに「もし我々がNATOの一部となるドイツに留まるなら、NATO軍の管轄は1インチたりとも東方に拡大しない」と述べた。
もう少し、戦略的に述べて見よう。
現在、米ロの間には戦略核兵器に関する合意がある。主として大陸間弾道弾についての合意である。互いに保有する大陸間弾道弾や発射装置の数を制限し、相手を攻撃すれば自分も確実に破壊される状況を作り均衡を保ってきた(これを「相互確証破壊戦略」と呼ぶ)。ウクライナがNATOのメンバーになれば情勢は一変する。NATO(実際は米軍)はウクライナに中距離・短距離、クルーズミサイルを配備する。ロシアは長距離弾道ミサイルへの防御網を構築してきたが、新たに中距離・短距離、クルーズミサイルからの防御システムを作らざるを得ず、それは技術的にほぼ不可能なうえ、実施するには莫大な金がかかる。プーチン大統領は軍の侵攻に先立ち、「国家が存続できるか分からないほどのリスクが生じる恐れがあったからだ」と述べたのはこのことを意味している。
いずれにせよ、ロシアはNATOが東方に拡大することに大きな懸念をもってきたのである。しかし、米国が主導するNATOはどんどん東方に管轄の範囲を拡大し、ウクライナまで拡大しようとし、「それはならじ」とロシア軍のウクライナ侵攻になったのである。
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