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農政:小高根利明の語ろう日本農業の未来--アグリビジネスの現場から

「輸出の本旨は国内農業生産の向上など」JA全農インターナショナル・住吉社長【小高根利明の語ろう日本農業の未来】2022年4月15日

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コロナ禍にウクライナ情勢が加わり混沌とする国際情勢。エネルギー価格や物流、穀物価格などの高騰が産地を直撃する中、日本の農畜産物輸出の一翼を担う会社の1つが、JAグループの農畜産物輸出会社、JA全農インターナショナルだ。今回の「小高根利明の語ろう日本農業の未来~アグリビジネスの現場から~」は、昨年6月に社長に就任した住吉弘匡(ひろまさ)氏に、厳しい国際情勢の中における輸出戦略や業務への思いを聞いた。(聞き手・小高根利明本紙客員編集委員)

JA全農インターナショナル社長 住吉弘匡氏JA全農インターナショナル社長 住吉弘匡氏

輸出体制を着々整備 コロナ禍で和牛の需要に伸び

――国産農畜産物の輸出を担う会社として全農インターナショナルが誕生してから7年経過し、事業基盤も拡充していると聞いています。海外展開や取り扱い品目の状況などを聞かせてください。

全農グループは2015年から海外の拠点設置に乗り出し、輸出事業体制を整備してきました。昨年4月に全農インターナショナル香港マカオ支店を開設して、海外の輸出拠点は、計8カ国と地域で10拠点となりました。事業面でも年率20%以上の伸びで推移してきました。
全農インターナショナルの主要売上品目は畜産品、特に和牛です。単価も高いですし、米国や香港、シンガポールなどほぼアジア全体が相手先となっています。国によって濃淡はありますが、需要全体は間違いなく伸びています。日本の食自体が、海外で普及していることの裏返しだと思います。

――コロナ禍での輸出の事業展開には難しい局面もあったのではないですか。

実は米国の牛肉需要はコロナによる外出規制でいったんは相当冷えました。ところがeコマースによって爆発的に増えて、日本全体の米国向け牛肉輸出量は、低関税枠の変更もあり、2020年(1-12月)は前年比で1.3倍以上伸びました。日本でもコロナによる外出規制で巣ごもり需要がありましたが、国によって、なおかつ品目によって大きな違いがあります。その影響について全体的なプラスマイナスで言うと、当社の場合、少しプラスが多かったと思います。

「和牛でバーベキュー」のeコマースで爆発的な広がり

――海外で和牛というとステーキ店など外食の高級店というイメージがありますので、eコマースによって一般家庭で買い求められているとは意外ですね。世の中が大きく変わってきていると感じます。

最もインパクトがあったのが米国の牛肉のeコマースです。あれは強烈でした。「きょうは庭で和牛のバーベキューを!」とSNSでPRしたら爆発的に広がりました。実はコロナで米国への牛肉輸出は当面無理じゃないかとさえ思っていたのが、わずか2カ月半ぐらいで「早く送ってくれ」に変わりました。eコマース販売で提携したWebサイト会社の経営者は、日本の風景まで取材してサイトを丁寧に作りこんでいました。これが西海岸から一気に広がり、米国の他のeコマースでも国産牛の販売量が大幅に伸びました。
しかし、良い話ばかりではなく、海上コンテナ運賃の高騰には頭を悩ませています。輸出は生産地から一番遠い地点まで運ぶわけですから、輸送費がコストの大きな部分を占めます。運賃が上がるだけでなく、コンテナ自体の確保ができないとか、寄港地が抜港されて届けられない、あるいは輸送期間が長くなって鮮度が落ちてしまうというような困難に直面しています。
コンテナ運賃の値上がりから、国交省の支援も受けて、最近シベリア鉄道を利用した輸出にもトライしました。フィンランドとイギリス向けにお米を運んだのですが、イギリス向けは中継地のロッテルダムでロシア経由のコンテナは船積みできないと一時取り扱いを拒否される事態になりました。今回の輸出はウクライナ侵攻前に発送したものでしたが、このようなことが起きてしまい、平穏な国際社会に戻ることを切に願う次第です。

輸出戦略の3つの柱とは

――激動の時代でさまざまなご苦労がありますね。改めて全農インターナショナルとしての輸出戦略を聞かせてください。

輸出戦略の大きな柱は、マーケットイン、アライアンス、積極投資の3本柱になります。具体的にマーケットインでは、海外拠点の営業力を強化し、現地ニーズの把握に基づく品目や輸出国の拡大を目指します。アライアンスは、輸送効率化、実需者との連携した中間流通の排除と、現地需要の創造・拡大や、全農グループ子会社各社との連携もあります。積極投資のイメージは、国内外を問わず、販路拡大のための拠点整備や設備投資など、輸出拡大に資する積極的な投資を検討・実施していきます。
ただ、この3つの柱は複雑に絡みあっています。例えばサントリーさんと提携して北海道産のリンゴで作ったジュースをプレミアム品として中国の富裕層などに向けて出しています。これはサントリーさんとアライアンスを組んでマーケットインという発想で進めているケースです。

――アライアンスという点では、日本の農畜産物の良さを知っている日系の量販店の海外展開に合わせた取り組みも多いのでしょうか。

積極的に進めています。代表的なのがPPIH(ドン・キホーテ)さんですね。他の量販店さんとの提携もありますが、最近はPPIHさんのドミナント展開に合わせてわれわれの輸出もかなり伸びています。シンガポールのような小さい国で3年前に2店目を開きますとおっしゃっていたのが現在はもう11店舗ですから強烈です。インバウンドの方々に日本食の文化が受け入れられ、海外現地でも比較的手に入りやすくなったことも背景にあります。実は直近でマカオに拠点を作りましたがPPIHさんのマカオ出店に呼応しています。

――量販店からするとJAグループの品物が安心できるという面もあるのでしょうね。

そう考えていただいていると思っていますが(笑)。やはり品質含め色々な品目を一度に集めてくる全農グループの力は評価していただいていると思います。

――そうした輸出戦略も時代に合わせて変わっているわけですね。

そういう意味では輸出に関するわれわれの感覚も変わってきています。以前はお米や果実などもそのまま輸出するという意識が強かったんですが、今は加工品あるいは半加工したものの輸出や、現地で加工するというステージに上がってきています。例えば香港の食品企業と提携して炊飯設備を現地の工場に入れて、日本のお米を炊いてお弁当にして売ることも進めています。また、お肉も現地で加工して串焼きにする。海外の方も日本食の食べ方まで理解しているわけではないので、そうした食べ方と合わせた進め方が求められるわけです。
農畜産物の輸出はもちろん基本としてありますが、それに付加していかないと基礎の部分も伸びません。全農の3か年計画の中にある積極的な海外投資とは、まさにそういう分野です。そうした取り組みが必要なタイミングですし、今やらないと時代の流れ、競合他社に遅れてしまうと考えています。

国内の農業生産基盤維持の手段としての輸出

――国産農畜産物を輸出する業務において大切にされていることはありますか。

われわれは輸出専門の会社ですが、輸出は手段でしかないと考えています。本旨は国内の農業生産基盤を維持し、拡大する。併せて産地の所得を維持・拡大すること。あくまで輸出は手段であり、新しい販路の一つという感覚です。黙っていれば日本の人口は減って需要も減少し生産基盤の減少が危惧されます。そうならないよう生産基盤を維持しようと思ったらそれだけの販路を持つ必要があり、その一つが輸出だとわれわれは考えています。

――世の中が激しく変わっていく中で、輸出に求められる要素はますます増えそうですね。

一つとしてSDGsへの対応は意識の高い層には必須要件になると思います。5年後10年後となるとSDGsの17の目標のうち、かなりの分野で該当していないと買ってもらえないということも考えられます。私たちもそれを見越してSDGsにかなう加工食品をシンボリックに作ろうと取り組んでいるところです。

――それは包装・パッケージですか。中身も含めて取り組んでいるんですか。

両方ですね。中身のSDGsにも取り組もうと商談をすすめているところです。例えばジュースの搾りかすを使って容器側に含めるとか、あるいはそこから抽出した有効成分を使って商品を開発するといったことがあります。海外でいうと特にヨーロッパや米国ではそうした取り組みが強く求められてくると思います。

――そうした新しいニーズへの対応もありますし、国際情勢が混沌として会社の舵取りが難しい時代ですね。

私自身、昨年の6月に社長に就任してまだ1年経っていませんが、コロナ禍はもちろんウクライナ情勢などもあり会社として今まで経験のなかった事態に次々と直面しています。やはり世の中が平穏で平和な普通の状態に戻ることを強く願っています。

JA全農インターナショナル株式会社
1961年に組合貿易として設立、2017年に会社名を変更した。全農の100%出資で、国産農畜産物や加工品の輸出を取り扱う。東京に本社を置き、シンガポール・ロンドン・台湾・香港・マカオなどに拠点を置く。

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