「節水型乾田直播」の安易な普及に懸念 水田の多面的機能維持を求め共同声明 OKシードプロジェクトなど40団体2025年10月29日
OKシードプロジェクトなど40団体は10月27日、「節水型乾田直播の安易な普及を控え、水田の多面的機能の維持を求める」共同声明を発表した。
農林水産省が戦略的農林水産研究推進事業に「節水型乾田直播」の推進を位置づけたことを受け、OKシードプロジェクト、日本消費者連盟、ラムサール・ネットワーク日本の3団体が共同声明を呼びかけた。環境、消費者、食の安全関連団体など40団体が賛同し、同日付で農林水産大臣に提出。今後は、衆参両院の農林水産委員会への働きかけも行う予定としている。
「節水型乾田直播」は「田植え」を行わず、水管理を省力化し、労力を大幅に削減できる技術。一方で、ほ場の大規模化や農業機械などの設備投資が必要となるため、OKシードプロジェクトは小規模家族農家など「多くの農家の離農、さらには農村の消失につながる可能性がある」と指摘している。
また、水田が持つ連作障害の防止、治水・防災、水源涵養、水質浄化、気候緩和、生物多様性の保全といった多面的機能が、「乾田化によって大幅に損なわれるおそれがある」と懸念を示している。
そのうえで、「乾田直播のすべてを否定するわけではないが、安易な推進には多くの疑問がある」として、農水省に対し「水田と農家を守ることにこそ注力すべき」と求めている。
【共同声明全文】
共同声明:節水型乾田直播の安易な普及を控え、水田の多面的機能の維持を求める 2025年10月27日
農林水産省は、概算要求に戦略的農林水産研究推進事業として節水型乾田直播の推進を据えました。節水型乾田直播栽培では田植えが省略されるだけでなく、水田のように湛水せずに稲を育てます。労力のかかる田植えを省略でき、水の維持管理にも手間がかからないとして、労力を節約して大規模な米作りができるとしています。
しかし、この栽培方法を普及することは、すなわち水田の維持を放棄することです。水田とは連作障害を生まずに農薬・化学肥料に依存せず、持続的・安定的にコメを生産できる画期的な農法です。また、水田にはそれ以外にも、治水・防災機能、水源涵養・水質浄化機能、気候緩和機能、そして生物多様性を保全する機能など、多面的な役割があります。
また従来の栽培方法では想定されていない大規模な節水型乾田直播を進めれば、多くの農家の離農、さらには農村の消失につながる可能性が高いと言わざるをえません。
【水田のメリット】
・水田では連作障害が抑制される。一方、乾田では湛水管理による抑制効果が働かないため連作障害が高頻度で発生する。
・水田は、水生昆虫や両生類、魚介類・甲殻類などの繁殖・成長の場であり、鳥類の採餌場でもある。
・水田には、ラムサール条約第10回締約国会議において、日本・韓国両政府が共同提案して採択された決議X.31「湿地システムとしての水田の生物多様性の向上」(水田決議)で指摘されるように、適切な水管理をすることで生物多様性・生態系サービスの向上が期待できる。
・生物多様性条約で採択された昆明・モントリオール世界生物多様性枠組では、生物多様性に有害な助成金・インセンティブを見直し、削減・改革することが重要なターゲットの1つである(目標18)。節水型乾田直播普及のために補助金を支給することは、この世界的な合意に反することとなる。
・水田の湛水からの蒸発とイネからの蒸散は冷却効果があり、ヒートアイランド対策としてのグリーンインフラとしての機能がある。
・水田には遊水池としての機能もあり、近年増加しているゲリラ豪雨などへの防災機能を有している。
節水型乾田直播の推進は、これらの多面的機能を破壊することです。
私たちは、安易な節水型乾田直播の推進に異議を唱えるとともに、農林水産省は水田と農家を守ることにこそ注力すべきであると主張します。
【呼びかけ団体】
OKシードプロジェクト、NPO法人日本消費者連盟、NPO法人ラムサール・ネットワーク日本
【賛同団体】
NPO法人赤とんぼ、秋田県有機農業推進協議会、あきたこまちを守る会、アクシス委員会連合、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン、遺伝子操作食品を考える中部の会、愛媛有機農産生活協同組合、愛媛有機農業研究会、海陽町オーガニックス、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)、北九州オーガニックプロジェクト、生活協同組合コープ自然派おおさか、生活協同組合コープ自然派京都、生活協同組合コープ自然派しこく、生活協同組合コープ自然派奈良、生活協同組合コープ自然派兵庫、市民ネットワーク千葉県、食政策センター・ビジョン21、食と農から生物多様性を考える市民ネットーク、食と農を守る会徳島、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパン、全日本農民組合連合会(全日農)、食べもの変えたいママプロジェクト、食べもの変えたいママプロジェクトみやぎ、たましま干潟と鳥の会、NPO法人使い捨て時代を考える会、デトックス・プロジェクト・ジャパン、西日本アグロエコロジー協会、日本の種子(たね)を守る会、バイオダイバーシティー・インフォメーション・ボックス、宮津∞麦のね宙ふねっとワーク、民間稲作研究所、NPOメダカのがっこう、山口県環境保全型農業推進研究会、山口県有機農業団体連絡協議会、(NPO法人)日本有機農業研究会、特定非営利活動法人有機農業推進協会
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