労働時間7割減も 節水型乾田直播でシンポ 農水省2025年9月26日
農水省は米の直播栽培を推進するためのコンソーシアムを設置し、9月25日に節水型乾田直播をテーマにしたシンポジウムを開催した。コンソーシアムには生産者や企業など1500人が参加し、当日は事例報告とパネルディスカッションを行った。
第1回田植え不要の米づくりコンソーシアム
田植えと組み合わせ規模拡大
農水省によると水稲の直播栽培面積は2023年で約3.9万ha、全水稲作付面積約134.4万haの約2.9%に過ぎない。ただ、規模拡大を図る担い手が取り組み、前年比105%となった。
直播栽培には、代かきして水を張って行う湛水直播と、畑状態では種して一定の生育後に水を張る乾田直播がある。
これに加え新しい栽培法として取り組みが始まったのが、節水型乾田直播で畑状態では種し、水は張らずに散布のみで栽培させる新しい技術だ。収量が安定しないため技術の確立だが、農水省は「将来的に農業者の減少とさらなる大規模化が進むなかで重要な技術」と位置づける。
埼玉県杉戸町で水稲100haを栽培するヤマザキライスの山崎能央代表取締役は担い手への農地集約が進むなか、耕作面積を拡大するため作業量を減らせる節水型乾田直播に取り組んでいる。
栽培のポイントは水の散布と除草剤の使用回数。2024年産は走水5回で「にじのきらめき」の収量は552kg、25年産は走水9回で522kgだった。
水の散布は除草剤の効果を発揮するために必要で除草剤は3回の散布が必要だという。
安定した収量を得るにはは種の深度やバイオスティミュラントの適正使用、雑草対策、畑地化にともなう土壌分析などが課題になるとした。ただ、水管理が70日間から8日間に減るなど投下労働時間は70%削減し、機械設備コストは60%減となったと報告した。種もみは移植栽培で使用する種もみと同じで使用量は1.5倍程度となるが特別にコストがかさむことはないという。
そのうえで山崎氏は「移植栽培と組み合わせることで面積拡大が可能になる技術」と位置づけ、水を散布するタイミングを栽培体系で示すための土中湿度の数値化など、「誰でもできる節水栽培技術の確立」のために関係者に協力を呼びかけた。
中山間地の農地維持に
岡山県津山市の米井ファームの米井崇恭代表取締役は中山間地域で節水型乾田直播に取り組んでいる。38歳で市職員を退職し米井ファームを起業。2021年に6haだった経営面積は26年にはその10倍の60haとなる見込みだ。農地は15㎞内に点在する。高齢化が進む中山間地域で農地はもちろん水路の整備、維持にも人手がいなくなる不安から2023年から節水型乾田直播に取り組んできた。
2024年の収量はきぬむすめで200kg~550kg。25年産は420kg程度だという。
メリットは3月から4月には種するため作業が分散されることと、10a当たりコストが30~50%低減すること。これによって規模拡大が可能になる。また、畑地状態を維持するため後作で麦や飼料作物などの栽培に向く土壌が維持されるという。
一方で課題はドリルシーダーやブームスプレヤーなど新たな設備が必要なことと、雑草対策、さらに小規模で不整形の水田では機械が入らないため、引き続き移植栽培を行わざるを得ないことなどだ。
こうした課題がありながらも、水路の維持も困難なる中山間地域で節水型栽培が実現すれば「水路などインフラ整備にかけるコストも変わってくるのではないか。新しい農村の未来にもつながっていく」と話した。
みどり戦略に逆行?
パネルディスカッションでは節水型乾田直播に対して、除草剤の使用量が増えることや、生物多様性が損なわれることなど懸念し、化学農薬の使用量を減らし有機栽培を2050年に100万haに広げるという「みどり戦略との整合性をどうとるのか。この技術が与える影響をよく考えるべき」(全国有機農業推進協議会の下山久信理事長)などの問いかけもあった。
農水省は「みどり戦略と反対ではない」とし、農業者が減っていくなかで農業生産を維持していく一つの手段として位置づけ技術の確立、検証を図っていく考えを示した。第2回は乾田直播と湛水直播をテーマとすることが予定されている。
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