今なぜ草刈り機? 高温で雑草が繁茂、安全対策や人手不足も背景に2025年10月8日
草刈り機の需要が高まっている。背景には、温暖化・高温化による雑草の繁茂、安全対策の強化、そして高齢化や人手不足の深刻化がある。そのため、リモコンやGPS・AIによる自動走行型の開発、電動化やスマート農機との連携などを含めた「新たな除草スタイル」が広がっている。10月1~3日に幕張メッセで開かれた「農業WEEK」で出展企業の取り組みを取材した。
トヨタも農家のニーズで開発
トヨタ自動車の電動コンパクト草刈り機
会場では、トヨタ自動車が開発中の電動コンパクト草刈り機が注目を集めた。自動車生産で培った小型車の部品集積技術を応用し、軽トラックやミニバンへの積載も可能な小型・軽量化を実現。狭い畦道や最大45度の斜面走行にも対応する。フル充電で約2時間の連続作業が可能だ。
近年、ヤンマーのリモコン式草刈り機「YW500RC」や井関農機の乗用モア「SXG327」など、大手農機メーカーも草刈り機の開発や事業拡大を強めている。トヨタが注目したのは、農家への聞き取りで「畦道の草刈り作業が最も負担が大きい」との声が多かったためだ。温暖化により雑草の生育が早まり、除草作業の回数が増加している。そのためトヨタは石川県内のJAなどの協力を得て、自動操舵とリモコン操作の実証を進めており、近く量産化に踏み切る予定だ。
労働安全対策の強化に対応
安全面での要求も高まっている。農水省や厚労省が農作業安全や労働安全衛生に関する手引き・指針を改訂し、草刈り機や刈払機の安全対策を強化している。従来の金属チップソーは飛散やキックバックのリスクがあるため、用途に応じてナイロンコードや樹脂ブレードの採用が拡大。排ガスや騒音への配慮から、電動・充電式モデルの導入も進み、特に自治体や請負事業では低騒音・低振動・低排出を選定条件に含める例が増えている。
農水省は、作業中の安全カバー装着やPPE(保護具)着用、点検手順の標準化などを示した安全マニュアルを周知。農研機構では、刈り刃を短時間で制動する安全機構の研究や、AIによる危険検知など、現場の安全を支援する技術開発を進めている。
熱中症リスクで人手不足も深刻化
人手不足も深刻化している。農業WEEKで電動草刈り機「ユニモワーズモデルS」を紹介したユニック(東京)によると、地域の草刈りは住民やボランティアが担ってきたが、高齢化に加え猛暑による熱中症リスクが高まり、維持管理が難しくなっているという。
安全対策としてヘルメットや防護具(フェイスシールド、アームカバーなど)の着用が推奨されるが、これらが高温下では熱中症につながる可能性もある。そのため「高齢の作業者を中心に『作業をやめたい』という声が増えており、農家や自治体からの問い合わせが相次いでいる」(ユニック)という。
ワイヤーレス方式が主流に
果樹園や茶畑など狭小地・傾斜地での活用も拡大している。作業スペースや樹間距離が限られる場所では、小型・軽量で障害物回避機能を備えた電動草刈り機が求められている。農研機構は、果樹園や複雑地形向けの小型自動走行草刈りロボットの試作を進めており、農機メーカーとの共同研究も行っている。
自動草刈り機では、従来主流だった境界ワイヤー敷設方式から、GPSやAIを用いたワイヤーレス方式が主流になりつつある。
水戸工業の「ネクスモウ」
水戸工業(東京)は、台湾メーカー製ワイヤーレス自律草刈りロボット「NEXMOW(ネクスモウ)」の国内代理店として、公共緑地や学校、工場、農地など業務用途を中心に展開し、特に果樹園での省力化効果を確認している。農業WEEKでは次世代モデル「NEXMOW M2」を披露した。GNSS(全地球衛星測位システム)とAIを組み合わせ、高精度な自己位置推定と自動航行を実現。バッテリーは「24時間連続運転に対応し、夜間の敷地警備など非除草用途への応用」も期待されている。価格は110万~150万円で、2025年秋の発売を予定している。
スベアバーゲンの「アルバ」
伝農アシスト(東京)が日本代理店を務めるスウェーデンのSveaverken(スベアバーゲン)は、ワイヤーレス式ロボット芝刈り機「Alva(アルバ)」を出展した。管理状況によっては低草丈の雑草管理にも活用できる。スマートフォンをリモコン代わりにマッピングし、外周の内側を自動で走行する。LED発光による「鳥獣対策や防犯への応用」も提案。価格は50万~300万円。
システム開発で支援
GPSなどで作業範囲を設定し、自動で往復走行や障害物回避を行うには、カメラ映像やAIを用いた制御システムが不可欠である。
NSW「ゲボッツ」
NSW(旧・日本ソフトウエア)は、汎用ロボットシステム開発フレームワーク「GEGOTS(ゲボッツ)」を搭載した、提携先の台湾ITRI製自動草刈り機を紹介した。「GEGOTS」は車体の自動走行装置を開発する技術で、草刈り機や無人巡視ロボット、無人搬送車などに採用され、ユニックの電動草刈り機にも搭載されている。同社と提携し、共同出展した萩原エレクトロニクスは、画像処理・AIで人や障害物を検知する車載エッジコンピュータ「EZEL(イーゼル)」を紹介した。
電動化・無人化による省力化は、農地にとどまらず、太陽光発電所の敷地、防災堤防、公園・緑地など非農業分野でも導入が進む見通しである。今後は、ワイヤーレス自動走行の精度向上、安全機能の強化、現場の電源・通信インフラ整備が普及の鍵となるだろう。
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