農政:東日本大震災から5年
福島の復興 険しく2016年3月11日
営農再開農地3割米の産出額は下降
福島県は2月のはじめ、震災後5年の農林水産業の復興状況を発表した。主力の米の作付面積は、震災時に県全体の20%、とくに事故をおこした東京電力福島原発のある浜通りでは65%もの減少になった。
事故前の平成22年の作付面積は全体で8万600ha。これが27年で6万5500haで、事故前に比べ、約1万5000ha(18.6%)の開きがある。同県は「緩やかな回復傾向を見せる」と評価するが、それは会津地域に関してのことであって、震災前の1万7000haに対して、6300haしか回復していない浜通り地域は、5年間でほとんど増えていない。
一方、米の産出額は震災前の790億円に対して、26年が529億円(65.8%)にとどまっている。特に26年産は米価の下落が影響しているが、これは風評被害によって同県産が買いたたかれていることを示している。
【グラフ 福島県における米作付面積と産出額】
これは単価を比較するとよくわかる。浜通りにおけるコシヒカリの価格は震災前が60㌔で1万2768円で、全国平均より57円高かった。この差が震災翌年の23年には1360円、24年1058円、25年2707円となり、差が開くことはあっても縮まる傾向はみられない。
米に比べ野菜・果実は明らかに回復傾向を示している。震災翌年の平成23年は風評被害の影響を受け、22年の69%、684億円の産出額になった。だが、その後の2年は、10%づつ回復し、26年は全国的に価格が下がったことから25年を下回ったが、産出額827億円になった。震災前の980~990億円には達しないが、県の主要品目であるキュウリ(全国3位)、モモ(同2位)、トマト(同7位)は震災前の地位を回復している。
なお、農水省の調べによると、原発事故の影響を受けている福島県では津波被災からの営農再開農地も33%にとどまっている。農地の除染が100%完了した地域がある一方、避難指示区域、居住制限区域などの南相馬市は31%、浪江町は36%、飯舘村は50%などと大きな差がある。
原発事故の影響で生産断念を余儀なくされたこうした避難指示区域などでは営農再開に向けた環境が整っていない。農地の除染とあわせて、安心して営農できる環境づくりがなければ農家の帰還と営農再開ができないことから、福島県に基金を造成し除染後の保全管理(鳥獣被害防止対策など)、営農再開に向けた作付け実証、新たな農業への転換などを切れ目なく支援することにしている。また、福島県の農産物の魅力と安全性確保の取り組みなどを情報発信することもいっそう必要になっている。
(写真)米の全量全袋検査で安全を保証、新たな農業への挑戦も(立毛乾燥による多収飼料稲の栽培試験(塙町で)
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