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【JA改革の本質を探る】TPPの本質・アメリカの世界戦略 軍事力背景に東アジアに狙い(下)2016年9月28日

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多国籍企業よりドル経済圏維持
萩原伸次郎
横浜国立大学名誉教授

◆米州自由貿易中南米で頓挫

 米国の輸出にかける意気込みは相当なものだが、その輸出を環太平洋に求める、TPPに参加するという路線が出てきたのにはそれなりのわけがある。国際貿易促進の方法には、大きく3つのやり方がある。第一が、WTOによる多角的通商交渉だ。第二が、北米自由貿易協定のような地域的貿易協定だ。そして第三が、FTA交渉に見られるような二国間協定だ。
 まずWTOによる交渉だが、2001年カタールのドーハでの閣僚会議で始まった「ドーハ開発アジェンダ」が結局2008年7月、中国・インドと米国が対立して決裂、交渉再開の機運はあったが、現在までのところ再開されてはいない。この決裂の要因は、零細農家の保護のため、特別セーフ・ガードを主張する中国とインドが米国と対立したからだった。
 第二は、地域的貿易協定だが、1994年成立の北米自由貿易協定を中南米に拡大する計画があった。米州自由貿易圏構想だ。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイのメルコスール4カ国にボリビアとチリを準加盟国として認め、キューバを除く西半球の34カ国が2005年までに形成することに同意したのだが、その2005年に米国は、米州首脳会議において交渉拒否にあい、頓挫する。それは、北米自由貿易協定による貿易と投資の自由化が、米国多国籍企業の利益になっても、メキシコをはじめカナダ、米国の住民にとって何のメリットもないばかりか、メキシコなどでは食糧危機を引き起こす元凶だったことがわかってきたからだ。
 安いトウモロコシを米国から大量にメキシコに輸出しては、メキシコの栽培農家を破産させ、今度はバイオ燃料化や投機筋の介入もあって、トウモロコシ価格を急騰させ、メキシコでは食糧危機が勃発したのだ。メキシコの富が米国多国籍企業に吸い上げられ、貧富の格差は開くばかりだ。 


◆規制緩和促し企業進出に道

 多角的交渉の頓挫、地域協定においては中南米の拒否にあい、次に米国が目を付けたのが、経済成長著しい東アジアの諸国だったというわけだ。しかし、この地域を確実に米国の通商圏につなぎとめるにはドル圏の維持が必要であり、それには軍事が必要だ。2012年はじめに米国防省が明確にしたオバマ政権のリバランス戦略は、そうした経済的利害を軍事でつなぎとめるという、かつてのクリントン政権の踏襲ということがいえるだろう。「アジア・太平洋地域へ米国を経済的に強力に結び付けるわが国の政策は、開かれた地域主義、規制緩和へと向かう諸傾向を促進し、わが国の企業がそれから利益を引き出すことを確実にしなければならない」と、1994年、クリントン大統領は言った。
 現在、米国の東アジア戦略の要(かなめ)は、中国経済の取り込みにあることは言うまでもない。中国は、習近平・李克強政権の下で、対外輸出・投資主導経済から、消費・サービス路線への転換期にある。彼らは、中国社会の過度な成長偏重の経済政策と格差の広がりを是正し、国民消費の着実な前進による経済政策を実施しようとしている。


◆アジア戦略は中国取り込み

 米国は、中国経済の内需拡大に期待を寄せる。もはや米国は、各国企業の売り込みの場ではない。むしろ、中国こそ米国の売り込みの場であるべきだ。しかし米国は、中国を基軸とする世界経済の編成には極力反対する。ドルを基軸とする世界経済システムの維持が至上命令なのだ。
 こうして、TPP路線によるアジア太平洋圏の掌握という米国の戦略が出てくる。「もし協定が承認できなければ、中国のような国が世界経済のルールを書くことになる。米国の世界への指導力を弱めるだけだ」として連邦議会に「大筋合意」のTPPの批准を迫るオバマ大統領の政治姿勢は、民主・共和いずれの政治路線にとっても、多国籍企業の利害を貫くという観点からは、必ず出てくることになるのは明白だ。

・TPPの本質・アメリカの世界戦略 軍事力背景に東アジアに狙い (上) (下)

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