農政:JAは地域の生命線 国の力は地方にあり 農業新時代は協同の力で
【JA改革の本質を探る】TPPの本質・アメリカの世界戦略 軍事力背景に東アジアに狙い(上)2016年9月28日
多国籍企業よりドル経済圏維持
萩原伸次郎
横浜国立大学名誉教授
安倍晋三首相は、26日から始まった臨時国会で、環太平洋連携協定(TPP)の批准を狙っている。このTPPとは、言うまでもなく昨年10月5日に参加12カ国の閣僚会議で、交渉妥結を宣言した「大筋合意」の協定のことだが、米国の議会では、すんなりと批准には進みそうにない。
もちろん、オバマ政権は、任期最後の今年に是が非でも「大筋合意」のTPPを議会批准にもっていきたいところだ。9月6日、任期最後のアジア歴訪中のラオスで、オバマ大統領は、2012年以来明確にしてきたアジア太平洋へのリバランス戦略について総括演説を行い、その対外経済政策の基軸であるTPPについての意義を強調し、「退任する前に承認されるよう議会に強く働きかける」と述べた。
◆TPP反対で選挙戦有利に
オバマ大統領は、11月8日大統領選・連邦議会選挙後、1月の新議会招集までの会期、いわゆるレームダック・セッションでの批准を最後のチャンスとしてそこに望みをかけているようだ。レームダック・セッションとは、11月の議会選挙で落選した任期中の国会議員が出席する、新議会が開催されるまでの議会会期のことだ。
いわば「死に体」となった議会の会期であるが、かつて南北戦争は、このレームダック・セッションの時期に引き起こされた。1860年11月の大統領選において、リンカーンが選出されたことで、南部諸州が連邦離脱を宣言し始めたことが、戦争のきっかけだった。当時大統領の就任は3月だった。現在では1月までの短い会期だが、オバマ大統領にとっては最後のチャンスだ。
この11月8日投票の大統領選での主要候補は、消費者団体、労働組合、環境保護団体、地方自治体でのTPP反対運動に押され、選挙戦を有利に進めるためにTPP反対を主張している節がある。ヒラリー・クリントンは、「今も、選挙後も、大統領になってからもTPPに反対する」と言ってはいるのだが、彼の夫ビル・クリントンが創設した、「クリントン財団」には、世界各国からの多額な寄付が集められている。そのなかで、無視できないのは、米農業・種子大手企業モンサントが、多額献金をしていることだ。
米消費者団体パブリック・シティズンや米通信労組(CWA)など8団体が、8月25日、ヒラリー・クリントンに連名書簡を送り、レームダック・セッションに議会がTPPを批准することに反対すると明言することを求めたという事実は、TPP反対運動の高揚を示すとともに、オバマ政権の経済政策を継承することを大統領選挙公約の柱に掲げている彼女への牽制球ともいえそうだ。
◆合意の修正が次政権の課題
もちろん、現在議会の多数派である共和党は、オバマ政権の合意したTPPを1月までの会期で批准することはなさそうだ。下院議長、ポール・ライアン、また上院のマコネル上院院内総務も、「現行のTPP合意には、いくつかの大きな欠陥がある。年内には採決はしないだろう」と言っている。しかし、合意の修正が次期政権の課題となるという言葉に表れているように、TPPそのものがアメリカの対外経済政策から消え去ることはなさそうだ。
共和党大統領候補、ドナルド・トランプも、「従来の貿易協定によって国内雇用が失われた。自分は、国家の力で雇用を国内に取り戻し、米国を強くする」と言っており「大筋合意」のTPPには反対ではあるが、米国を強くする通商協定について否定しているわけではない。
「大筋合意」のTPPが、現在の米国議会で批准はされなくても、また、次期政権が、民主・共和のどちらになるにしても、TPP問題は、必ず再浮上するだろう。なぜなら、現在米国の政治経済戦略として、経済成長著しい東アジア諸国を経済的に取り込むことが、必要不可欠になっているからだ。
・TPPの本質・アメリカの世界戦略 軍事力背景に東アジアに狙い (上) (下)
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