農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
国民とTPP11参加国への裏切り【田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授】2018年10月5日
ロイターはズバリ、「トランプは27日、日本が抵抗している二国間FTAの交渉入りに安倍と合意した」、「ライトハイザーは27日、日米はフル(full)のFTAをめざすこととし、まもなくファーストトラック下の交渉開始を通告すると述べた」と報じた。
「物品関税だけだからFTAとは違う」などという安倍首相の詭弁は、世界には全く通用しない。そもそも共同声明もサービスや投資を含む交渉を行う旨を明記している。
「フルFTA」の交渉開始は、国民への約束を破るだけでなく、アメリカとの2国間交渉はしないと申し合わせたTPP11カ国をも裏切る。
◆クルマと農産物を天秤にかけて
交渉内容は相も変らず「クルマか農産物か」の取引だ。
朝日(10月2日夕刊)は、9月末の安倍との通商協議で、「『交渉しないなら日本の自動車にものすごい関税をかけると』といった。そうしたら彼らは『すぐ交渉を始めたい』と言ってきた」とのトランプの言を紹介している。ほら話というにはリアルすぎる。
アメリカが日本車の関税を25%に引き上げたら、日系企業の負担は1兆円になるという(大和総研、読売)。1.8兆円という数字もある。
アメリカの対中関税引き上げに対して、中国は報復関税で大豆、豚肉、牛肉、小麦などを狙い撃ちした。その被害に対してアメリカは1.3兆円の農業支援をするという。1兆円に脅える日本と1.3兆円をポンと出すアメリカの覚悟の差だ。
中国は輸入先を変え、アメリカの矛先は日本にむかう。交渉第一ラウンドの落ちはまたもや農業を犠牲にすることだ。
◆米中百年戦争時代をどう生きるか
首脳会談の前日、トランプは「アメリカは巨額を費やして日本を守り、日本は車を米国にたくさん輸出してもうけている。筋が通らない」と述べた(朝日、10月1日)。「アンポ欲しけりゃクルマを渡せ」の脅しだ。
米中100年経済冷戦の時代、覇権国家からの凋落を防ぐためなら何でもする。そういう歴史的使命を負ったトランプの横に並んで追従笑いしても、まっさきに餌食になるだけだ。自立する以外に日本の生きる道はない。
(本特集のまとめページ)
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