農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
国民と農家の未来、だまし言葉でつぶすな【吉川はじめ・社民党幹事長】2018年10月12日
今回の日米首脳会談では突然、TAGという聞き慣れない交渉に入ることで合意しましたが、交渉前からトランプ大統領はかなり恫喝するようなことを言っており、そう言われるとあっさり了承してしまうのは、いったいどの国の総理大臣なんだと思います。
日本の農業を守る立場にある人間がちょっと脅されたらすぐに交渉に入るというのは問題です。その後もトランプ大統領は、「今後の交渉は満足できる結論になると信じている」、と半分脅しているわけで、こんなことを言われて黙っていていいのかと思います。非常に情けないの一言に尽きます。
過去の経済連携協定での約束が最大限との日本の立場を米国は尊重する、との言葉が入ったから大丈夫だという話をしていますが、あくまで尊重に過ぎず、TPPの合意内容が不満で離脱したトランプ政権がそれ以上の譲歩を求めてくるのは確実で、米国側の圧力に屈してしまうのではないかと思います。
実際、10月4日に米国の農務長官は、米国の目標は原則、TPPプラスになる、と言っているわけで尊重などする姿勢はもとからありません。
農務長官はさらに、貿易に関して他の国ができることをなぜ日本はできないのか、とまで言い放っていました。それを見ても尊重するつもりはないでしょう。
実際にトランプ大統領は、米国と交渉しないつもりなら日本車に高関税を課すと伝えた、そうしたら日本はすぐに交渉を始めたいと言ってきた、と話しています。だから尊重という言葉があるからといっても、あくまで日本の国内向けに過ぎず、実際にはそれではすまないのではないかと思います。
◇ ◇
TAGという言葉自体初耳です。茂木経済再生相は、投資・サービスのルールを含むFTAとは違うと言っています。しかし、それはチャーハンと焼き飯は違うんだ、という話と同じレベルです。TAGなどという言葉は外務省の日本語訳にはあるけれども、正文である英文にそんな表記はありません。「物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定」とあり、「協定の議論が完了した後、貿易および投資に関する他の項目についても交渉を開始する」とあります。まさにFTAのことではないか。実際、ペンス副大統領は「日本と歴史的な二国間のFTA交渉をまもなく始める」と宣言しており、もし仮にFTAと違うと総理が言うのであれば、こういう発言が出たときに、そうではないですよ、もしそういうつもりなら交渉はできません、というぐらいのことを言わなければいけない。
物品交渉だといっても、まさに農産物が含まれているわけで、日本の農家にとってはFTA交渉と何ら変わらないものになる。TPPの合意水準が限度と言っていますが、そもそもTPPの合意水準が農産物重要5項目の関税堅持という国会決議に違反をしています。
しかも、TPP11では、たとえば乳製品では生乳換算7万tのTPP枠は見直されませんでしたから、豪州とニュージーランドはその枠を目一杯使い、それとは別にTAGなるもので米国が最低でも同水準を求めてくるとすれば、結果的に当初の米国がいたTPPよりも悪くなることは火を見るよりも明らかです。今度の交渉入りは、何度目になるか分からないほど言葉をごまかして日本の農業者をだますようなことをやっていると言わざるを得ないし、わが党は交渉入りに断固反対の立場です。交渉から離脱すべきだとわれわれは考えています。
◇ ◇
臨時国会の最大の課題は、日欧EPA協定の審議です。とくにチーズの自由化は国産チーズ、さらに酪農に壊滅的な打撃を与えないか心配です。豚肉も同じように、ブランド力のある豚肉がさらに大量に入ってくることになるのではないかと思います。少なくともEUの農業国とくらべると日本の農業者は明らかに不利です。フランスは農家所得に占める補助金の割合が9割、ドイツも7割近くで規模も大きい。それとほとんどまともな所得補償のない日本の畜産・酪農家が同じ土俵で闘えというのはあまりにも不平等、不公平だといわざるを得ません。われわれは以前から戸別所得補償制度の復活、法制化とその拡大を求めてきましたが、そうしたものがないなかで日欧EPA協定が承認されれば、農畜産業への打撃は計りしれません。
もう1点は野党が共同で提出した種子法の復活法案です。継続審議になっており、自民党のなかにも廃止はよくないのではないかと心配している心ある議員もいますから、しっかり働きかけながらぜひ法案を成立させるように努力したいと思います。巨大企業に食べ物の種子が独占され、安心・安全が脅かされるのではという危機感を持って運動している消費者もおられます。
安倍政権は、日米FTA問題についても恐るべき言葉遊びでごまかそうとしている。われわれは反対だけれども、仮に交渉をするのならどういうことが起きるのか、国民にきちんと説明しなければなりません。TPPでも影響試算をしましたが対策を打つから影響はないという。根拠は何かを示していない。これでは国民や農業をやっている人たちの未来をだましてつぶすことになります。
(関連記事)
<日米共同声明 全文和訳>
・TAGはどこにいる? 日米共同声明全文を和訳し比較する(1)
重要な記事
最新の記事
-
需要に応じた生産とは何なのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年10月28日 -
【人事異動】JA全農(12月1日付)2025年10月28日 -
農水省「環境負荷低減の見える化システム」JA全農の「担い手営農サポートシステム」と連携2025年10月28日 -
栃木米「トーク de ス米(マイ)ルフェスタ」開催 JA全農とちぎ2025年10月28日 -
中畑清氏ら元プロ野球選手が指導「JA全農WCBF少年野球教室」太田市で開催2025年10月28日 -
次世代経営人材の育成へ 「JA経営マスターコース」の受講者募集を開始 JA全中2025年10月28日 -
大学×企業×JA 群馬を味わう「産学連携パスタ」開発 高崎商科大学2025年10月28日 -
稲の刈り株から糖を回収 ほ場に埋もれる糖質資源のアップサイクルへ 農研機構2025年10月28日 -
庄内柿の目揃い会を開く JA鶴岡2025年10月28日 -
卒業後サポートも充実「亀岡オーガニック農業スクール」第三期募集開始 京都府亀岡市2025年10月28日 -
野菜販売や林業機械パフォーマンスも「第52回農林業祭」開催 大阪府高槻市2025年10月28日 -
京都各地の「食」の人気商品が大集合「食の京都TABLE」開催 京都府2025年10月28日 -
HACCP対策 業務用「捕虫器 NOUKINAVI+ 6803 ステンレス粘着式」発売 ノウキナビ2025年10月28日 -
100年の想いを一粒に「元祖柿の種 CLASSIC」30日に発売 浪花屋製菓2025年10月28日 -
令和7年度自治体間農業連携先候補者を選定 大阪府泉大津市2025年10月28日 -
農と食の魅力発見「東京味わいフェスタ」丸の内・有楽町・日比谷・豊洲の4会場で開催2025年10月28日 -
南都留森林組合と「森林産直」10周年「パルシステムの森」を提起2025年10月28日 -
中古農機具「決算セール」全国30店舗とネット販売で開催 農機具王2025年10月28日 -
越冬耐性の強い新たなビール大麦 品種開発を開始 サッポロビール2025年10月28日 -
だしの力と手づくりの味を学ぶ「手打ちうどん食育体験」開催 グリーンコープ2025年10月28日


































