農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割
自給率向上は未来への責任(2)【加藤善正・岩手県生協連合会顧問】2018年10月16日
組合員の共通の願い実現を
◆国連と逆行する日本政府の農業政策と協同組合政策
2012年、国連は「国際協同組合年」を決議し、各国への協同組合の育成やその役割りを重視することを要請した。そして、2014年を国連は「国際家族農業年」と定め、世界各国に対して人口増に対する食料確保や地球環境・持続可能な発展・平和のためには「家族農業」が最大のカギとしてその支援と理解を訴えた。さらに、2019年から10年間を再び「国際家族農業年」とすることを総会で決定した。2016年にはユネスコは「協同組合の思想と実践を"無形文化遺産"に登録」した。
これらの国連の措置は現在のグローバル経済社会が、人々のくらしや地域社会を崩壊させるという危機感から、人々のくらしの安定や平和、食料安全保障の観点から、協同組合や家族農業を発展させることがこれからの世界にとって最も重要であることを提起し、警鐘を乱打したことは間違いない。
しかし、わが国の安倍内閣や自公政権はこうした国連や世界の歴史的かつ喫緊の要請を無視して、それらに「逆行」する政策を強引に進めている。特に、安倍内閣の「農業改革・農協改革」は財界やアメリカの要求に沿って、現場や国民の声を無視して官邸主導の改革、「市場競争優先(弱肉強食)・強者のための規制緩和・"今だけ・カネだけ・自分だけ"」の改革そのものである。
そして遂には食料の流通にも競争原理を導入するために「卸売市場法改定」にも着手した。
(写真)協同組合陣営の連携も需要
◆国民の思い、農漁民の願い、子どもたちの未来から立ち上がる
こうした自公政権の進める食料自給率引き下げ、食料安全保障無視の政治をこれ以上許すことは、誰でも認めることは出来ないのではないか。それは思想信条や政党支持の如何を問わず、国民の願いや農漁村の実態から発想し、いのちの糧を大切に生産する農漁民のくらしの安定とその生業(なりわい)の継続性・発展が最も優先される政治を求めることではないか。それを重視しない政治に対する怒りの拳を固めて立ち上がる時ではないだろうか。
中山間地の多いわが国における農業生産の実態、とりわけ、過疎化し高齢化し仕事場の無さが障害になる小子化、後継者不足は、もう時間がない。漁業も同様な深刻な後継者難が進行している。改めて言う、もう時間がないのであり、「そのうちいろいろ検討して」などという時間はないのである。
政府の調査でも国民(消費者)の70~80%は、国内産の食料を求めている。子孫の健康な体と豊かな食文化、その未来を願う人々は「そのうち」などといっておれない事態を直視しようではないか。多くの国民・消費者は国内の農漁民の暮らしと生産を支援したいと思っている。今度の安倍首相とトランプ大統領とに会談における国民を騙している発言、欺瞞と詭弁に怒りを感じている。
◆日本の協同組合は目を覚まして政治と闘おう!
協同組合は「助け合いの組織」とはいえ、どうして自給率をドンドン引き下げ、食料安全保障を低下させ大都市集中・地方軽視、国民の生活や地域経済を疲弊させ平和を脅かす政治、一部のグローバル大企業である財界やアメリカ企業を優先する「自公政権」に対して、何時まで「助け合い」精神を発揮しているのだろうか。
協同組合運動は明らかに「組合員の共通の願いとニーズ」のために、その運動と事業を組合員主権・民主的運営を貫いて展開するものである。昨今のわが国の協同組合は組合員の「共通」の願いやニーズではなく、「個人」のそれに目を注ぎ、その「個人」のお役立ち・お得さに入れ込んでいるのではないか。自公政権はJAに対して「組合員の利益に役立つ事業・営利企業としての役割発揮」を求めているためか、組合員の共通の願いや地域社会、政治の本質的要因に対する運動や闘いを、後景に追いやっても矛盾を感じていないように見える。
日生協は1995年ごろから「グローバリゼーションは人類の夢であり人々のためになる」として、小泉改革・規制緩和・構造改革・市場競争原理を「是」とする路線を歩んでいる。70~80年代の市民生協の発展とその理念や実践を大転換させ、組合員の「共通の政治的・社会的願いとニーズ」を取り上げての「運動」を言葉の上でも禁止した。
こうして、「平和憲法・九条改悪」「社会保障制度の連続的改悪」「消費税増税」「食料自給率低下」などにも、「反対・批判」などの立場を放棄し、岩手の生協をはじめ全国のこうした運動に取り組む生協の声を無視し続けている。
ユネスコの「協同組合の思想と実践」が何故、何のために「無形文化遺産」に登録されたのか、真正面から再考してほしいものである。
「協同組合は私たち組合員のもの」「共通の願いとニーズを社会運動体として闘ってほしい」という組合員は、今の協同組合陣営に不満と失望を感じているのではなかろうか。不満と失望が「絶望」に転化する事態はどうしても避けたいものである。
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