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農政:どうなっているのか米国社会

分断社会アメリカの現実―大統領選挙からみたアメリカ 中岡 望(ジャーナリスト)【どうなっているのか米国社会】2020年10月30日

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米国大統領選挙が数日後に迫っている。この間、さまざまな報道がされてきているが、そこに垣間見れるのは「分断されたアメリカ社会」の現実ではないだろうか。それはどういうことなのかを知らなければ、本当のアメリカを理解することはできないのではないだろうか。そこで米国事情に詳しい中岡望氏に分析してもらった。氏は、保守対リベラルにとどまらずその根底には宗教的分断があると指摘している。

大統領選挙が終わるたびに、多くのメディアは「アメリカ社会は分断されている。人々はまったく違った2つの世界に住んでおり、その世界の間にある溝は埋めがたい」と書く。2020年の大統領選挙後も、おそらく同様な記事が書かれるだろう。

中岡 望(ジャーナリスト)中岡 望 氏(ジャーナリスト)

所得格差、人種差別など数多くの破砕層が

アメリカ社会の分断は深刻な状況にまで至っている。アメリカは建国以来、政府の果たす役割を巡って激しい政治闘争が行われてきた。現代的なコンテキストで言えば、リベラル派対保守派の対立である。政府が積極的に社会に関与し、人々の福祉を向上させるべきだと主張するリベラル派と、政府は社会問題や個人の自由に干渉することを嫌い、できるだけ小さい組織であるべきだと主張する保守派の対立は単なるイデオロギーを超えた社会的、政治的対立の様相を示している。

アメリカの分断は、リベラル派対保守派の分断に留まらない。この大きな断層の周辺には数多くの破砕層が存在している。限界に達しつつある所得格差によって引き起こされている破砕層、黒人差別に代表される人種差別による破砕層、情報産業など発展する産業を抱える地域と、衰退する伝統産業を抱える地域間格差による破砕層、アメリカは学歴社会であり、学歴格差によって生じている破砕層などがある。そして、アメリカ社会を分断する最も強固な破砕層は、宗教対立によって引き起こされている。

アメリカ社会は自由な社会である。憲法修正第1条は、集会の自由、報道の自由に加えて宗教の自由を保障している。それがアメリカ民主主義の基本と考えられてる。だが、現実のアメリカ社会は依然として宗教国家の側面を根強く持っている。ヨーロッパからやって来た最初の移民たちは、アメリカに「神の国」を建設することを夢見た。アメリカは基本的にプロテスタントの国である。政治が直接的に宗教への関与することは禁止されているが、1970年代ころから宗教が積極的に政治に関わり始める。キリスト教右派と呼ばれる運動が姿を現し、宗教的な要求を声高にし始める。

大統領選を左右するキリスト教右派

その流れは現在まで続き、キリスト教右派は、現在、エバンジェリカル(福音派)と呼ばれ、大きな政治力を発揮するまでになっている。2016年の大統領選挙でトランプ候補が当選したのは、エバンジェリカルの支持があったからである。エバンジェリカルは2020年の大統領選挙の結果を左右する存在である。

エバンジェリカルは、ヨーロッパの宗教改革の指導者カルヴァン派の流れを汲んでいる。彼らは神の存在を信じ、『聖書』は神の言葉であり、『聖書』の教えに従って生きることこそ正しい生き方だと信じれいる。『聖書』に書かれている奇跡はすべて事実であると信じ、人は神が創ったものであり、進化したものではないと主張。日本人には信じがたいが、多くのエバンジェリカルは進化論を否定している。伝統的な価値観を持ち続け、結婚の目的は子孫を残すことであり、家庭では夫は外で働き、妻は子供を産み、育てるのが役割だと信じている。そうした伝統的価値観からすれば、生殖を目的としないセックスは唾棄されるべきものであり、中絶は犯罪であり、同性婚は受け入れることができないものである。

以上のように書くと、なんだか昔話をしているように聞こえるかもしれない。だが、トランプ大統領と共和党は、1973年に最高裁が「ロー対ウエイド裁判」で認めた女性の中絶権を否定することを公約に掲げ、同性婚に反対している。政府のキリスト教会への寄付を合法化することも求めている。笑い話ではないのである。エバンジェリカルが、どう考えても人格的にも、道徳的にも問題があるトランプ大統領を支持しているのは、エバンジェリカルの主張を実現すると公約しているからである。

繰り返すが、アメリカは宗教国家である。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、アメリカ人の70%がプロテスタントである。そのうち25%がエバンジェリカルであり、主流派プロテスタントは15%である。エバンジェリカルと主流派プロテスタントの違いは、進化論を拒否するか、受け入れるかである。カトリック教徒は21%を占めている。無信仰は16%に過ぎない。ちなみに仏教徒は0.7%である。

キリスト教徒の90%は神の存在を信じている。筆者は大学で教鞭を取っているが、アメリカの留学生と神の存在について議論する機会があった。彼らは、頑として、神は存在しているという主張を変えることはなかった。筆者が新聞にアメリカの進化論を巡る記事を寄稿したとき、極めて知的で優秀な大学の後輩からメールが入り、「私はキリスト教徒で、進化論を信じていない」と書いてきて、驚いたことがある。非キリスト教徒には、なかなか理解しにくい事柄である。

また多くのキリスト教徒は、最後の審判を信じている。9.11の連続テロ事件があった後、教会の礼拝に行くアメリカ人の数が増えた。通常、アメリカ人は大きなストレスを抱えると、精神科医を訪ねるか、教会へ行く。日常生活で教会が果たす役割は極めて大きい。

米国の非白人社会化を恐れるエバンジェリカル

現代社会では、宗教は個人的な活動であり、政教分離の考え方から、政治から距離を置くようになった。だが、アメリカでは逆の現象が起こっている。既に述べたように、政治を通して宗教的な信念を実現しようとしている。先に触れたように、その象徴的存在がトランプ大統領である。

エバンジェリカルが積極的に政治に関与し始めたのには理由がある。ひとつは、宗教の"世俗化"が急激に進んでいるからだ。非キリスト教的価値観が急激にアメリカ社会に浸透している。無神論者も確実に増えている。そうした中で、エバンジェリカルは次第に存在感が薄れていることに焦燥感を抱いているのである。伝統的なキリスト教価値観を維持する必要性を強く感じているのである。現在、エバンジェリカルが最も力を注いでいるのは、「ロー対ウエイド裁判」を覆すことである。こうしたエバンジェリカルの要望を受け、トランプ大統領は最高裁判事に反中絶派の判事を任命している。最高裁は9名の判事で構成されているが、トランプ大統領は3名の反中絶派の判事を指名している。

エバンジェリカルの大半は白人である。彼らは、アメリカ社会が非白人社会になることに強い懸念を抱いている。数十年後にアメリカで最大の人種グループはヒスパニック系アメリカ人になるのは間違いない。白人国家アメリカは消滅する運命にある。白人エバンジェリカルは、二重の焦燥感に取りつかれている。いわば過激ともいえるエバンジェリカルの主張、それを受けたトランプ大統領や共和党の動きは、アメリカ社会の構造的変化が根底にある。

問われるアメリカ民主主義の基本

アメリカには、キリスト教的純血性を維持しようとする社会とは異なる社会もある。それは、人種的、宗教的多様性を積極的に受け入れようとする社会である。だが、その二つの社会の分断は想像を絶するほど大きい。単に政策を巡る論争であれば、解決策を見つけ出すのは難しくなない。しかし、社会的価値観、宗教的価値観の違いを克服するのは、限りなく不可能に近い。社会の非宗教化、非白人化が進めば進むほど、その亀裂は大きくなっていくだろう。

大統領選挙の投票日が近付いている。選挙結果がアメリカの将来に与える影響は極めて大きい。トランプ大統領が再選された社会と、バイデン前副大統領が当選した社会は基本的に異なる社会である。選挙結果は一時的な影響ではなく、アメリカの将来に深く関わっている。建国以来、アメリカ社会は本当の意味で"統一"を実現していないのかもしれない。今回の大統領選挙は、アメリカ民主主義の基本が問われる選挙でもある。

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