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農政:2020年を振り返って

「農村と都市の分断」で憂鬱な年に――米国・EUの政治的混乱に共通する地方有権者の疎外感 エッセイスト 薄井 寛【特集:2020年を振り返って】2020年12月11日

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米国の大統領選挙結果で今年は憂鬱な年となった。「農村と都市の分断をさらに深めた大統領選挙」、「広まる農村と都市の分断を物語る選挙結果」などの見出しで、米国メディアの多くがこの「分断」を強調したからだ。

「分断」の要因に踏み込まないメディア

「ルーラル・アメリカ(アメリカの地方)がまたもトランプへ投票」などとする記事は、地方郡でのトランプ圧勝(70%~80%以上の得票率)と岩盤支持層の高い投票率をことさらに強調する。また、「農家の支持を獲得できた理由」として、米中貿易戦争やコロナ禍の被害農家に対するトランプ大統領の救済金バラマキを挙げる報道も目立った。

さらには、熱烈なトランプ支持者の集会やデモを報じる記事や映像からは、"地方から出てきた頑迷(がんめい)固陋(ころう)のトランプ信者"といった、揶揄(やゆ)にも似た記者の感情が伝わってくる。

このような情報発信は、選挙後のトランプ言動に対するメディアの批判と相まって、地方の有権者に対するネガティブな印象を増幅させてしまった。しかも、地方住民の執拗なトランプ支持を強調する報道には、農村部に広がる都市との経済格差や過疎化、高齢化、中小農家の離農、農村医療体制の脆弱化など、ルーラル・アメリカの抱える深刻な問題を都市側へ知らせようとする意図が少しも感じられない。

なかには、トランプ大統領によるバイデン攻撃の今後の展開に注目し、これによって農村と都市の分断はさらに長期化するとの論調すら見受けられる。

残念ながら「分断」はさらに深刻化しそうだ。なぜなら、(1)コロナ禍によって郡エリアの地方紙の廃刊がさらに増えたため、農村部の有権者は一部の党派的な情報発信の強い影響をさらに受け、(2)コロナ対策が最優先されるなかで、農村部の問題等に対する都市住民や都市部議員の無関心が強まり、(3)二大政党のし烈な戦いが「分断」をあおる風潮を広めてしまうからだ。

EU諸国で増える極右政党の地方支持者

他方、EUでは「農村と都市の分断」が極右政党の躍進にすきを与え、2016年のトランプ登場以来、その動きがEU諸国全体へ広がり続けているというから、いっそう憂鬱な気持ちになる。

EU各国における農村と都市の分断の背景には、農業構造の著しい変化があったと言われる。EUの共通農業政策はその手厚い農業保護を特徴とすることで知られるが、さまざまな補助金の支給は農家の生産規模が基本だ。そのため、農業の国際競争力を強化するための施策が推進されるなかで、多数の中小農家が兼業化と離農に追い込まれ、大規模農家ほどより多くの補助金を得て経営規模を拡大した。

2010年から16年の間、EU27カ国の農家戸数は1206万戸から1028万戸へ15%減。66%の農家が5ヘクタール未満、約400万農家の年間販売額は2000ユーロ、約25万円未満。一方で、30万戸(2.9%)の大規模農場の平均販売額は約3125万円、EU農業総生産額の56%を占めるという、農業構造の極端な二極化が進んできたのだ。
グローバル化の下、農村部では過疎化が進み、地方の中小企業の雇用が減少して都市との格差は年々拡大。地方有権者の政治組織は弱体化して、政府との繋がりも与党政治家への影響力も後退してしまった。

さらに、2010年の金融危機と2015年の難民危機が事態をいっそう悪化させ、政府やEU委員会、都市部のエリート達に対する地方有権者の失望とうっ積した不満、憤りが極右政党支持へ転化したというのだ。

2017年のフランス大統領選挙は地方有権者の支持政党のくら替えを際立たせる結果であった。決選投票で中道派のマクロンが極右・国民連合のル・ペンに勝利して大統領に当選したものの、人口10万人以上の都市部では両者の得票率が72%対28%であったのに対し、農村部では57%対43%。ル・ペンの得票数がマクロンを上回った地方の選挙区も少なくなかったほどだ。

他のEU諸国でも同様の事態が生じている。ハンガリーのオルバン首相の強権統治を支える極右政党の「ヨッビク(より良いハンガリーのための運動)」も、オーストリア、デンマーク等の極右政党も都市部の労働者に加え、保守中道の政治を支えてきた地方選挙区で支持者を増やして躍進を遂げてきたのだ。

2021年も、新型コロナ対策が各国の政治情勢にさらなる混乱をもたらす年になるかもしれない。都市部を中心としたコロナ対策で国の財政悪化は深刻化し、農村活性化対策の政治的な優先度が下がるなか、疎外感を強める地方有権者の政党くら替えがいっそう拡大しかねないからだ。

筆者は拙稿『アメリカ農業と農村の苦悩』(2020年2月農文協)のなかで、トランプ大統領誕生の背景を分析し、「(農村と都市の格差拡大等によって)社会のバランスがいったんゆがめられ、その調和を失ってしまうと、そこに生じた政治の危機と社会の混乱を短期間に修復することが困難になる」と述べた。

米国やEU諸国に限ったことではない。国家を構成するさまざまなセクターの調和と相互依存を大事にするような政治が後退するなら、日本もらち外とは言えなくなる。

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