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農政:原発処理水海洋放出

根源的に福島と向き合う――それが私たちの責任 青木 理(ジャーナリスト)【緊急特集 原発処理水海洋放出】2021年4月26日

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人類史上まれにみる大惨事を引き起こした東電福島第一原発事故から10年余。いまだにこの処理水問題を含めて、事故処理は遅々として進んでいない。さまざまな角度からこの問題を取材してきたジャーナリストの青木理氏は、「後世に残すツケを最小限にとどめるため」に、私たちはもっと根源的に福島と向き合うしかないと指摘する。(4月23日インタビュー:聞き手・構成 中村友哉)

青木 理(ジャーナリスト)青木 理(ジャーナリスト)

海洋放水しか方法はないのか

――日本政府は福島第一原発の処理水を海洋放出すると発表しました。この決定をどのように見ていますか。

青木 この問題にはいくつか重要な論点があります。まずは日本政府や東電が言う「処理水」なるものの中身です。

今回放出を決定した水は、福島第一原発でメルトダウンしたデブリ(溶融燃料)の冷却などに使われた高濃度汚染水をALPS(多核種除去設備)で処理したものです。ただ、保管中の水にはトリチウム以外の放射性物質が含まれているという専門家の指摘もあり、海洋放出にあたっては改めてALPSで再処理し、トリチウム以外の放射性物質を取り除くと政府や東電は説明しています。

しかし、これをうのみにできるでしょうか。過去、そして現在の東電の振る舞いを考えれば、およそ信頼に値しない背信ばかり繰り返し、最近も柏崎刈羽原発で重大失策を重ねて事実上の運転禁止命令を出される始末。こんな東電が「安全」と言っても信じられず、むしろ風評被害に直結するでしょう。

また、トリチウムは通常運転している原発でも発生し、世界中の原発が海洋放出していると政府や東電は説明しています。しかし、通常運転の原発から発生した物質と世界最悪クラスの事故を起こした原発から垂れ流された物質を同列に論じられるでしょうか。一部では海洋放出への各国からの批判に対し、世界の原発もトリチウムを流しているではないかという反論も見られますが、論理的にも倫理的にも歪んでいるというしかありません。

また、決定に至るプロセスも問題です。政府や東電は保管場所がパンクするから海洋放出するしかないと主張しますが、一部の専門家はタンクの大型化やモルタル固化などで保管は可能だと指摘しています。また、同じく廃炉が決まった福島第二原発の敷地にタンクを増設してもいい。

では、政府や東電はそうした案を真剣に検討したでしょうか。結局、最初から海洋放出という方針を決め、それ以外を深く考慮せずに期限を区切り、結論ありきで決定に至ったのではないですか。それがまた政府や東電への信頼を損ね、地元の人びとを苦しめることに、なぜ思いが至らないのでしょう。

正気の沙汰ではない原発再稼働・新増設

――福島原発は処理水も含め多くの問題を抱えています。しかし、事故処理は遅々として進んでおらず、あとどれくらい時間がかかるのか全くわかりません。

青木 それが最大の論点です。人類史上でも未曾有の大惨事を引き起こした原発の巨大な残骸と、最終的に私たちはどう向き合っていくのかという問題です。

政府と東電はメルトダウンしたデブリを取り出すと訴えていますが、事故から10年経過してもまったく先が見えない状況です。しかし、800~900トンに達するとされるデブリを取り出すことなど本当に可能なのか。この先、ロボット技術などが飛躍的に発展して取り出せたとしても、どこに持っていって処分するというのか。

最近になって北海道の寿都町が放射性廃棄物の最終処分場候補地として文献調査を受け入れましたが、事故原発のデブリなどもそこに持っていくのか。率直に言って、見果てぬ夢でしょう。

現実的にデブリを取り出せず、最終処分場も作れないとなれば、ひょっとすると福島の事故原発も最終的にチェルノブイリのように石棺で覆ってしまうしかないのではないか。このようなことを軽々に言うべきではありませんが、となると福島が放射性廃棄物の処分場のようになってしまうのではないか。

もちろんそんな状態にしてほしくはないし、すべきでもないと思いますが、それほど抜き差しならない人類史的な大失敗と私たちは向き合っているのです。あえて言えば、汚染水をどうするかというのはそのほんの一部にすぎません。

私はこの数年、ある取材で福島県の飯舘村に通っていますが、みなさん村を取り戻すために懸命です。ただ、震災前は6000人以上の住民がいた村も、帰還しているのはわずか1500人ほど。高齢者が多く、取材で親しくなった方々も「自分たちは先祖の土地を守るため戻ったが、子や孫たちは戻らないから、いずれ村はなくなるかも」と漏らしています。事故原発の立地自治体や隣接自治体はさらに厳しい状況でしょう。

つまり、歪みきったエネルギー政策の後始末を私たちは何ひとつ処理できていないのです。なのに政治は「復興五輪」とか「アンダーコントロール」などという詭弁を弄し、原発の再稼働どころか「新増設」などと言い出している。正気の沙汰ではありません。

残念ながら事故処理には今後数十年以上かかり、それが首尾よくいく保証もまったくありませんが、後世に残すツケを最小限にとどめるため、私たちはもっと根源的に福島と向き合うしかないのです。そして、それは私たち全員の責任でもあります。


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