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農政:許すな命の格差 築こう協同社会

【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】現地ルポ:茨城県・岩井農協(2)農協の使命は組合員の所得向上-新予冷センターの稼働と食農教育2021年10月27日

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風見組合長、内田常務とのインタビューでは、時間の制約で触れられなかった組合員の役に立つ農協の活動と、コロナ禍、異常気象が岩井地区の農業生産に及ぼした影響について整理しておこう。

昨年12月に新設された野菜予冷センター(岩井農協提供)昨年12月に新設された野菜予冷センター(岩井農協提供)

農協では昨年12月に、市内鵠戸(くぐいど)に総事業費12億5000万円をかけて新予冷センターを作った。ネギ、レタスなどの品質保持のため、同農協では1977年にネギの予冷出荷を始め、これまでに二つの予冷センターで出荷に対応してきたが、老朽化が進んだため、新施設を作った。

新予冷センターでは、生産者の荷受け、予冷、保管、市場等への分荷、発送を行う。集荷スペースは全面がシャッターで密閉でき、ほこり、異物混入などを防ぎ、衛生面での対策が強化される仕組みだ。農協の出荷先は札幌から神戸まで約40市場ある。札幌へは飛行機を利用している。

真空冷却槽へ搬入真空冷却槽へ搬入

予冷機は6台あり、5度に30分で冷却し、保冷庫に移す。今日では産地から食卓までのコールドチェーン(低温管理を保つ流通方式)が確立されているので、消費者の手に届くまで品質を保ったまま届けられる。

また、ネギ、レタスの小分けやパッケージなどの注文にも応じており、商品の付加価値を高めている。農協では7月に東京豊洲市場で、「冷えている夏ネギ」の販売促進、PRを行っている。役員室には「粋」「本気」「百葱繚乱」などの初夏ネギキャンペーンのポスターがずらりと貼られていて、壮観だ。

同センターは、温暖化により夏の温度上昇が進む中、野菜類の鮮度保持、品質管理に役立つ。昨年度の利用実績は、ネギが185万ケース、レタスが135万ケース、サニーレタスが1万8000ケースなど。

予冷センターの敷地内では春ネギのは種作業が行われていた。生産農家が個々に種まきを行うよりも効率的だし、安定した苗が作れる。は種は流れ作業。農家が引き取り、移植まで自家のハウスで育てる。専門職員が作型に合わせた育苗管理の相談にも応じている。

ネギの共同播種作業(岩井農協提供)ネギの共同播種作業(岩井農協提供)

農協では食農教育にも力を入れている。野菜生産が盛んな長須地区と七重地区に食育研究会を組織し、子どもたちがレタスやトウモロコシなどのは種、定植、肥料散布、収穫体験などを行っている。農を継ぐ次世代の子どもたちへのバトンタッチの準備と言えよう。

コロナ禍と異常気象は岩井農協の青果物販売にどのような影響を与えたのだろうか。

昨年度は、新型コロナの感染拡大の影響で外食が減り、外食産業の打撃が大きく、業務向けの需要が大きく落ち込んだ。また、夏の長雨、日照不足と湿害などにより生育不良、品質の低下が見られた。半面、単価が高くなり、農協全体の販売実績は前年比で104%だった。

今年度上半期を見ると、春レタスの生育は順調だったが、業務・加工筋の需要が少なく、低調な販売が続き、販売額は前年対比で72%にとどまった。4月から始まる初夏ネギも低調で、オリンピック特需の期待もあったが、コロナ感染の拡大、緊急事態宣言の発令などの影響で価格が浮上することなく終えた。

【取材を終えて】
10世紀半ば、平将門は時の朝廷に対して乱を起こし、新皇と称して関東平野の山野を駆け巡った。今、この地の農民たちは進取の気概を持ってひたすら農の道を切り開いてきた。消費者が何を求めているのかが生産の基本。農協は組合員の声に従って運営する。当たり前のことだが、実際にはなかなかそうはならない。その農協の陣頭指揮をする風見組合長。合併せずにわが道を行く。農とはどうあるべきかを諄々(じゅんじゅん)と説く。話を聞いていて将門のことが脳裏に浮かんだのだ。
私が暮らす茨城県北地域は、かつては葉タバコ、茶、コンニャクと岩井地区と同じ作物を作っていた。1戸当たりの栽培面積は小さい。しかし、100年後の今日の姿はまるで違う。何故なのか。同じ茨城と言っても、東京に近いこと、風土が違うことなどがあるが、農の相手である消費者と生産者の考えを的確につかみ、それを事業や運動にしていく。それはやはり"人"だ。「歴史は人を創り、人が歴史を創る」。そういうことではないか。(先崎千尋)


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