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農政:迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者

【迫る食料危機】「前例ない食料危機」と肥料供給混乱に備えを 資源・食糧問題研究所 柴田明夫代表(1)2022年7月20日

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ウクライナ紛争の長期化で世界の穀物市場は不安定な状況が続いている。国際食料価格も高止まりして「前例のない世界の食料危機」と指摘されているのに加え、肥料供給の混乱も懸念されている。こうした状況をどう受け止めるべきか。今回の「迫る食料危機 農業資材高騰で悲鳴をあげる生産者~守ろう食料安保~」は、資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表に寄稿してもらった。

シカゴ穀物価格は騰勢一服も大豆など高止まり

資源・食糧問題研究所代表 柴田明夫氏資源・食糧問題研究所代表
柴田明夫氏

ロシアによるウクライナ侵攻から5カ月が経過し、戦争は長期化の様相を呈するなか、シカゴ穀物価格は6月以降、ひとまず騰勢一服となっている。7月8日時点では、小麦が1ブッシェル=9ドルを割り込み、今年2月の侵攻前のレベルになった。ただ、大豆は17ドル弱、トウモロコシは8ドル前後と高止まりしており、2012年の過去最高値を見据えた動きとなっているのには変わりがない(図1)。

一方、穀物価格が過去最高値圏に急騰し高止まると見れば、マーケットで需給両面からの調整が進むはずである。この点、米農務省は7月の世界農産物需給報告で、2022/23年度(21年7月~22年6月)のウクライナの小麦生産量が2,150万トンで前年度(3,301万トン)比41%減少、輸出は同47%減の1,000万トンになると予測している。トウモロコシの輸出減少(2,400→900万トンへ62%減少)と合わせると、ウクライナ産小麦・トウモロコシの輸出減少は、世界の穀物市場に重大な影響を及ぼすことになる。

シカゴ穀物価格の推移

図1:CBOTより筆者作成

ウクライナ小麦めぐる問題も容易に解決せず

さらに、輸出減少の影響は、ウクライナ国内での在庫の積み上がりという厄介な問題を引き起こしている。年度末に当たる6月末の小麦在庫は通常150万トン程度であるが、現在は輸出できない在庫が524万トンと3.5倍に積み上がっている。トウモロコシも通常の期末在庫は100万トン弱のところ、足元では700万トン近くまで急増。7月頃から収穫が始まるが、攻撃で被害を受けた倉庫もあり、年末には国内で貯蔵できる限度の4000万トンに達する恐れが出ている。

小麦に限らず穀物を保存するには水分を14%以下まで乾燥させる必要がある。水分が多過ぎると、呼吸作用が盛んになって重量が減ったり、自己発熱を起こして変質したり、カビや細菌に汚染されたり、害虫の被害を受けやすくなる。要するにウクライナの農民にとっては時間との勝負でもある。「輸出できなければ次の作付に必要な資金が得られず、収穫しても置き場がない」と大手農業企業は焦燥に駆られる。港から輸出できない穀物については、鉄道で欧州諸国へ輸送する案もあるが、容易ではない。

第1に、レール幅の違い(ウクライナは1520ミリに対し欧州は1430ミリ)があり、国境で貨物を積み替える必要がある。第2に、鉄道貨物の輸出拠点は13カ所あるが、そこに負担が集中し車両の確保が追い付いていない。第3に、国境での通関や植物防疫などの煩雑な手続きも問題だ。ウクライナ小麦の輸出減少問題は容易に解決しそうにない。

マーケットの調整も先高感拭えず

ロシアの21/22年度の小麦輸出量は3,300万トンで、前年度の3,910万トンから15.6%減少する。これは主に昨年後半よりプーチン大統領が国際小麦価格の高騰に対して輸出制限(輸出関税引き上げ、2~6月の輸出枠800万トンに設定)を強めた結果といえる。米農務省は、22/23年度の同輸出量は4000万トンに拡大すると見る。ロシア側の黒海の港は操業しており、アゾフ海の海運も再開済みでトルコ、イラン、イラクなどに輸出されている。ロシアがウクライナから略奪した小麦は中東(主にシリア)へ輸出されているようだ。

一方、市場では、小麦価格高騰が世界的な増産につながるとの期待が高まっている。しかし、米農務省によれば、2022/23年度の世界小麦生産量は7億7,169万トンで、前年度を小幅に下回ると予想。在庫は6年ぶりの低水準となる。ロシア(7,515→8,000万トン)、米国(4,479→4,847万トン)、カナダ(2,165→3,400万トン)が増産となるものの、中国(1億3,841→1億3,500万トン)、EU(1億3,841→1億3,400万トン)、インド(1億958→1億600万トン)、オーストラリア(3,630→3,000万トン)、アルゼンチン(2,215→1,950万トン)などが軒並み減産となる見通しだ。特に、干ばつなど異常気象との関連が深いラニーニャ現象(ペルー沖での海水温の低下)が2020年後半から続いていて、いまだ終息していない。米農務省のウェザーニュースなどで、欧州(ドイツ、スペイン、ポルトガル、イタリア)、インド、パキスタンでの記録的熱波=干ばつ懸念が伝えられている。高価格により期待されるマーケットの調整は今のところ微調整に止まりそうで、先高観が拭えない。

国際食料価格は高止まり 「前例のない食料危機」と警告

世界の食料価格も高止まりしている。国連食糧農業機関(FAO)が発表した6月の食料価格指数(肉、酪農品、穀物、野菜・油糧、砂糖、2014-16年平均=100)は、154.2ポイントで、3月の過去最高値(159.7)からは3カ月連続で下げているものの、1990年1月の統計開始以来、2011年の過去最高値(131.9)を大きく上回っている(図2)。

FAO食料価格指数 2014-16-年平均=100

図2:FAO食料価格指数 2014-16 年平均=100

特に、【肉類】は過去最高を更新した。ウクライナ危機に加え、①北半球で高病原性鳥インフルエンザがまん延し鶏肉価格が高騰したこと、②中国がブラジル産牛肉の輸入規制を解除し、価格が上昇したなどが背景にある。ちなみに、米農務省によれば、中国の全世界からの牛肉輸入量(枝肉)は2018年の136万トンから2022年には325万トンへ2倍以上に増える見通しだ。【乳製品】も上昇傾向が続いている。世界規模で在庫水準が低く、粉ミルクなどの価格が上昇する中、欧州が干ばつに見舞われ、生乳生産量が減ったことも影響した。一方、【野菜・油糧種子】は大きく下げた。大豆油、なたね油、パーム油などの植物油が、一時はウクライナ、ロシアが主産地のヒマワリ油の供給不安から高騰したものの、足元は、産地の増産やインドネシアのパーム油輸出規制の解除などで、需給が緩んだ格好だ。【砂糖】も水準を下げている。タイの砂糖生産が2019~20年の干ばつから回復傾向にあることが要因だ。

世界食糧計画(WFP)のデイビット・ビーズリー事務局長は7月11日、都内で記者会見し、ロシアのウクライナ侵攻を受けた世界の食料危機について、「前例のないものだ」と強調。ウクライナ危機による食料価格の高騰は長期化する可能性があると指摘した。ビーズリー氏によると、世界の36カ国以上が穀物の6割超をロシアとウクライナに依存する。ロシアやベラルーシからの肥料供給も滞り、2023年にかけて(あるいは数年単位で)食料価格が一段と高騰する恐れがあるとしている。その場合、「食料危機が世界各地で政情不安や大量の難民・移民を引き起こしかねない」と警告している。

日本は「アグフレーション」に根本的対策打たず

筆者は、今回の「前例のない食料危機」の兆候は、すでに14年前の2008年に起こっていたとみている。前々回(第61回)の本誌でも述べたように、2007~08年にかけて農産物価格が一斉に騰勢を強めた際には、市場関係者の間で、「アグフレーション(農産物インフレ)」という言葉が使われた。英誌エコノミストは、途上国の不可逆的な食生活の変化が背景にあり、高値は長期にわたると予測した。

BRICs(ブラジル、ロシア、インド、チャイナ)の急速な工業化と所得水準向上は、農産物に限らず、原油や非鉄金属などの需要を急増させ、あらゆる一次産品価格が上昇する「コモディティー・スーパーサイクル」が起きた。「需要ショック」による価格上昇である。1990年代以降、世界経済のグローバリゼーションが加速した。2000年代に入り先進工業国が脱工業化する一方、中国、インド、東南アジア、中南米など発展途上国の急速な工業化が進んだ。先進国と途上国との「コンバージェンス(収れん)」が進む過程で工業原材料や食料の需要が急増し、需要ショックが起きたことで一次産品市場に投機マネーが流入し、価格を押し上げたのだ。

その後いったん鎮静化したが、2020年代に入りコロナ禍を契機に、再び「アグフレーション」および「コモディティー・スーパーサイクル」がみられるようになった。今回は厄介なことに、「需要ショック」に加え、コロナ禍による世界中のサプライチェーン(供給網)の分断や気候危機などによる供給制約、すなわち「供給ショック」によるボトルネック・インフレの性格を帯びていることだ。これに追い打ちをかけるように、ロシア・ウクライナ戦争という地政学リスク(ボトルネック)が加わった。しかし、この14年間、日本は「アグフレーション」を一過性の現象と捉え、その背景にある根本原因を見極めることもせず、何ら根本的な対策を打ってこなかったのである。

(2)に続く。

【迫る食料危機】「前例ない食料危機」と肥料供給混乱に備えを 資源・食糧問題研究所 柴田明夫代表(2)

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