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農政:迫る食料危機 悲鳴をあげる生産者

【迫る食料危機】亡国の財政政策こそ最大の国難 国産振興こそ食料安保 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏2022年7月25日

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インフレの拡大など経済成長の行く末が不安定さを増しているなかで食料の安全保障にも関心が高まってきた。今回の「迫る食料危機 農業資材高騰で悲鳴をあげる生産者~守ろう食料安保~」は、農業、食料に詳しい東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏に寄稿してもらった。鈴木氏は、日本の自給率低下や農業の縮小を招いた原因はまさに政策にあると強調するとともに、農家に対し、食料危機が到来した今を踏ん張れば、農の価値がさらに評価される時代が来るとメッセージを送る。

亡国の財政政策が最大の国難

東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏東京大学大学院教授
鈴木宣弘氏

農業危機が増幅されている。ウクライナ危機の最中、国産振興こそが食料安全保障の要であることは誰の目にも明らかな今、驚くべきことに、主食用米も飼料用米も麦も大豆も牧草もすべて国産の増産こそが不可欠だという大局判断ができず、米を作るな、かつ、飼料用米や麦や大豆や牧草の作付けの支援はなくす「水田活用交付金カット」で農家つぶしをしている。この期に及んで目先の歳出削減しか見えない亡国の財政政策が最大の国難である。

しかも、輸入小麦が値上がりすれば食パン価格は上がるのに、肥料、飼料、燃料などの生産資材コストが急騰しても、農家の国産農産物の販売価格は低迷したまま、農家の赤字が膨らみ、多くの農家が倒産しかねない。国民も輸入途絶したら食べるものがなくなる。こんなことを放置している場合ではない。「危機をあおるな」という人には、「危機に備えることこそが安全保障だ」と言いたい。

食料安全保障崩壊の本質

なぜ、日本は有事に国民の命を守れないほどに食料自給率の低い国になってしまったのか。その主な要因として以下の四つを挙げることができる。
① 米国の余剰農産物の最終処分場
② 特定企業の利益のための市場原理主義の洗脳政策
③ 自動車の利益のために農と食を差し出す「生贄(いけにえ)」政策
④ 目先の歳出削減しか見えない財政政策

食料自給率が低下した要因としてよく言われる誤解がある。日本の農地と農業生産力は限られているのに、食生活の変化に伴う食料需要が増大したため対応しきれなくなった。原因は食生活の変化だから仕方ないと。では、なぜ食生活が変化したのか?

これには米国の占領政策、洗脳政策が大きく影響した。故宇沢弘文教授の友人は、米国の日本占領政策の2本柱は、①米国車を買わせる②日本農業を米国農業と競争不能にして余剰農産物を買わせる、ことだったと述懐している。

米国農産物の輸入依存症は食生活の変化でなく政策が原因

終戦直後、米国の余剰農産物の最終処分場に指定された日本に対して、小麦、大豆、トウモロコシの実質的関税撤廃に始まる執拗(しつよう)な貿易自由化が迫られた。加えて、日本人の食生活を米食からパン食に改変するため、コメを食うとバカになるという医学部教授の本、キッチンカー、学校給食などの大キャンペーン、さらに、エサとしてのトウモロコシや大豆をはかすために日本人を肉食化する大キャンペーンが米国の予算で仕組まれた。

こうした政策によって、食生活を改変させ、米国からの輸入が増え、日本人は米国農産物の輸入依存症になった。つまり、食生活が自然に変化したのでなく、原因は政策なのである。江戸時代を思い起こせば、それがよくわかる。江戸時代は、鎖国政策だったから、当然食料自給率もエネルギール自給率も100%だった。国内資源を完全に循環させた見事な循環農業、循環経済を実現し、それに世界は驚嘆し、称賛した。

もう一つの米国の巧妙な洗脳政策は世界中から留学生を受け入れて、シカゴ学派的な市場原理主義経済学を頭に染み込ませて母国に帰す戦略である。当大学の経済学部も米国で博士号を取って現地で助教くらいまでやった人でないと採用されないと言われる。彼らが日本で教え、規制改革、貿易自由化を唱え続ける市場原理主義の「信奉者」が増殖し、官庁などにも入り、結果的に「ロイコクロリディウム」に寄生されたカタツムリの如く、米国のグローバル企業の利益を増やすように働く。

さらには、自分たちの「天下り」先でもある自動車などの輸出を伸ばすために、農産物関税撤廃を受け入れて農業を「生贄」にするという経済産業省主導の短絡的な政策が採られてきた。農業を「生贄」にしやすくするために、農業は過保護だというウソを国民に刷り込み、農業政策の議論をしようとすると、「農業保護はやめろ」、規制改革・貿易自由化というショック療法が必要だ、という議論に矮小化されてきた。

そして、極めつけは、このままでは農業をあきらめる人が続出し、耕作放棄地がさらに拡大し、食料自給率は急降下し、食料危機に耐えられなくなることは火を見るよりも明らかなのに、コメをつくるなと言うだけでなく、その代わりに小麦、大豆、野菜、そば、エサ米、牧草などを作る支援として支出していた交付金をカットすると決めて、「農業補助が減らせた」と喜んでいる亡国の財政政策の愚かさである。

以上によって、農産物輸入が増加し、国内農業は縮小し、食料自給率の低下が生じた。これらの方向性を見直すことが食料安全保障確立に不可欠なのである。

日本の脆弱性をメディアも報じ始めたが

輸入途絶のリスクが現実味を帯びる中、日本の脆弱(ぜいじゃく)性をメディアも報じ始めた。4月19日、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」(日経系)でも、農水省が提示している有事に食料輸入がストップしたときの国産だけによる危機対応の食事として、朝食、昼食、夕食、すべてイモを中心とした食事を再現した映像を放送し、先進国最低の37%しかない食料自給率でいいのか、と報じた。

そして、「多くの食料を輸入に頼る日本。今後、自給率を上げるために必要なことは? 」と問い、「農家が赤字になったら補填(ほてん)する、また、政府が需給の調整弁の役割を果たし、消費者も助け、生産者も助かるような仕組みを日本にも入れること」という筆者のコメントを放映した。

4月28日の日経新聞も、「食料安保、最後はイモ頼み~不測の事態に乏しい備え」(ニッポンの統治・空白の危機感)と題した記事で、「各国が自国優先で輸出を止めた場合日本は食料が確保できなくなる恐れがある」を筆者の言葉として紹介した。

しかし、その記事への読者コメントとして「安定した供給を可能にする自由貿易」の必要性が経済学者から語られている。テレビでもこのようなコメントをした自由貿易論者に司会者が「その自由貿易が今機能しなくなっているんで聞いているんですけど」と切り返した。

「自由貿易に頼り自国の食料生産を破壊したら有事に国民が飢えるから自給率を上げるのが安全保障だ」という当たり前のことを理解してもらいたい。それでも、彼らはそれに対する反論として「自由貿易と自給率向上は両立する」と主張する。しかし、どうやったら両立するのか、その根拠となる説得的説明は未だに聞いたことがない。

食料こそ国防の要

筆者は、6月16日、 BS11 報道ライブinside out で司会の岩田公雄氏の「食の立場から国防とは?」と問われ、「有事に国民の命を守るのが国防とすれば、食料・農業を守ることこそが防衛の要、これが安全保障だ」と答えた。

窮地に立つ稲作農家に、コメ1俵1・2万円と9000円との差額を主食米700万トンに補填するのに3,500億円、全酪農家に生乳キロ当たり10円補填する費用は750億円、安全・安心な国産農産物の出口対策にもなり、子どもたちの健康も守るための学校給食の無償化を国が全額負担しても5,000億円弱である。

米国からのF35戦闘機の6.6兆円(147機)の購入費や、防衛費を5兆円増額するのに比べても、まず食料確保に金をかけることを惜しんでいる場合ではない。「農水予算は2.2兆円でシーリング(天井)が決まっているからそんな金が付けられるわけないだろ」と一蹴するような財務省の国家戦略の欠如した財政政策の継続は許されない。農水・文科・防衛予算も一括りにした国家安全保障予算を組んで、食料を守ることが不可欠である。

農家も踏ん張りどころ 農の価値評価される時代に

農家も踏ん張りどころである。食料危機が到来した今、今を踏ん張れば、農の価値がさらに評価される時代が来ている。特に輸入に依存せず国内資源で安全・高品質な食料供給ができる循環農業を目指す方向性は子どもたちの未来を守る最大の希望である。世界一過保護と誤情報を流され、本当は世界一保護なしで踏ん張ってきたのが日本の農家だ。

その頑張りで、今でも世界10位の農業生産額を達成している日本の農家はまさに「精鋭」である。誇りと自信を持ち、これからも家族と国民を守る決意を新たにしよう。江戸時代に自然資源を徹底的に循環する日本農業が世界を驚嘆させた実績もある。我々は世界の先駆者だ。その底力を今こそ発揮しよう。国民も農家とともに生産に参画し、食べて、未来につなげよう。

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