水田畦畔の除草管理のコストと労力を見つめ直す 北興化学工業2023年10月30日
北興化学工業株式会社は水田畦畔(けいはん)の除草管理に着目して試験を実施した。水田畦畔はきれいに保つことで、カメムシを含めた害虫の侵入を防ぐ効果がある。しかし、重労働である。そこで「草刈」と「茎葉処理除草剤」の労力とコストを比べてみた。
試験開始は2023年4月19日から7月25日の97日間。試験区は「草刈区」、茎葉処理除草剤で発生している雑草を枯らす「ザクサ液剤区(100倍)」、そのザクサ液剤に雑草の発生を抑制するダイロンゾルを混用した「ザクサ液剤(100倍)+ダイロンゾル(400倍)区」の3区を設けた。薬剤散布区は100L/10a相当で散布し、散布時間、草刈時間を計測した。各区ともに「スギナ」が優占しており、一部に「ヒメムカシヨモギ」「カラスムギ」「ノゲシ」「ツユクサ」なども発生していた。
除草効果について、「草刈区」から説明する。97日間で草刈は4回実施となり、約24日に1回のペースとなった。また、1回の作業時間をhaに換算すると一番多く、約38時間/haとなった。雑草の再生は5月、6月、7月になるにつれて短くなる傾向だった。本年は特に気温も高く、雑草の生育および再生には有利に働いたと思われた。水稲栽培期間では10回以上の草刈作業が伴う可能性が示された。
次に、「ザクサ液剤区」は処理後数日でスギナが褐変して枯死し、処理56日後に再生を確認(再生はスギナではなく、ヒメムカシヨモギなど)、2回目の散布が処理75日後であることから、約60日間(2カ月)の効果があったと評価した。1回の作業時間は約13.5時間/haとなった。
最後に、「ザクサ液剤+ダイロンゾル区」は抑草剤のダイロンゾルと混用しているため、スギナが徐々に色が抜けていくように枯死した。処理75日後に再生を確認(再生はスギナではなく、イネ科の雑草)、徐々に雑草が生育して、約90日間(3カ月)の効果があった。1回の作業時間は約11.2時間/haとなった。
コスト試算について、各1回当たりと本試験で評価した。試算として、人件費(現地時給:1,115円)、薬剤費(現地購入)、燃料代(180円/L:ほ場まで往復、草刈機、散布機)などを踏まえて計算した。畦畔を1haとしたのは、作付面積を50haで畦畔率を2%(0.02)とした場合、大小はあると思うが約1haの畦畔になる仮定から。
1回当たりで見た場合、「草刈区」のコストが低く見える結果だが、本試験では約24日に1回の草刈作業が必要となる。「ザクサ液剤区」は約60日、「ザクサ液剤+ダイロンゾル区」は約90日の残効がある。回数と残効を上手く組み合わせて、水田畦畔の除草管理を考える必要がある。
これはあくまでも本試験結果からの提案だが、涼しい時期は「草刈」、5月頃に「ザクサ液剤(100倍)」、6月中下旬の「ザクサ液剤(100倍)+ダイロンゾル(400倍)」でも本試験の「草刈区:4回」より約10%のコスト削減になり、雑草管理も3回で済む。
水田畦畔の除草管理のために何回作業をしているのか、考えてみてほしい。その作業を行う時期の気温なども考慮して、上手な組み合わせを見つけてほしい。
次年度以降のチャレンジとして、「カソロン粒剤6.7」、「ザクサ液剤」、「ザクサ液剤+ダイロンゾル」の順で農閑期から収穫時期までを除草剤散布3回だけで水田畦畔の除草管理ができるかを実証したい。
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