【令和6年度農薬危害防止運動】6月1日から3カ月 農薬の安全・適正使用と環境配慮を2024年5月31日
農水省は、農薬を使用する機会が増える6月から8月にかけて、厚生労働省、環境省等と共同で農薬の使用に伴う事故・被害を防止するため、農薬の安全かつ適正な使用や保管管理、環境への影響に配慮した農薬の使用等を推進する「農薬危害防止運動」を実施する。実施事項と重点指導項目などについてまとめた。
飛散低減対策と万全な管理必須
農薬の安全で適正な使用と保管管理は農産物の安全確保と農業生産の安定のみならず、国民の健康保護、生活環境の保全の観点からも重要だ。
このため農水省は、農薬取締法や毒物および劇物取締法に基づく取り締まりを行うとともに、食品衛生法に基づく残留基準に対応するため、農薬の飛散低減対策を含めた農薬の適正使用と地域、関係部局間の連携協力体制の強化に努めてきた。
しかし、農薬の使用に伴う使用者、周辺住民、家畜、周辺環境などへの被害や、食品衛生法に基づく残留基準を超えて農薬成分が検出される事例が依然として確認されている。
また、学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹や住宅地に近接する市民農園や家庭菜園なども含めた農地で農薬を使用するときには、農薬の飛散を原因とする住民、子どもなどに被害が生じないよう飛散防止対策の一層の徹底を図ることが重要になっている。
さらに農薬登録を受けることなく農薬としての効能効果をうたっている資材や成分からみて農薬に該当する資材が販売・使用される事例も確認されており、そうした資材の販売・使用を根絶するため周知・指導の強化を図っていく必要がある。
農薬取締法では「農薬使用者は農薬の使用に当たっては農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努める」とされている。こうしたことから農薬取締法と関係法令に基づき、遵守すべき事項について周知徹底するとともに、農薬とその取り扱いに関する正しい知識を広く普及させることにより、農薬の適正販売、安全で適正な使用と保管管理、使用現場では周辺への配慮を徹底し、それによって農薬の不適正な取り扱いと事故等を未然に防止することを目的に農水省として農薬危害防止運動を実施する。
令和6(2024)年度の運動のテーマは、農薬をラベルの表示事項に従って使用することで、事故・被害が防止され、農作物の安全が確保されることを改めて注意喚起する必要があることや、周辺住民や農作物等への飛散防止対策、住宅地等における農薬の適正使用等に十分な配慮がなされているとは言えない場面が依然として見られることをふまえ、昨年度に引き続き「守ろう 農薬ラベル、確かめよう 周囲の状況」とした。
重点指導事項は①適切な防護装備の着用の徹底②土壌くん蒸剤を使用した後の適切な管理の徹底③住宅地等で農薬を使用する際の周辺への配慮及び飛散防止対策の徹底④誤飲を防ぐため、施錠された場所に保管するなど、保管管理の徹底――の4点とした。
防護を徹底 周辺も注意
①について「マスク、メガネ、服装等の装備が不十分」なために、農薬使用で起きた人に対する事故は平成30(2018)年は6件(7人)で令和3(2021)年は2件(2人)まで減ったが、令和4(2022)年には4件(5人)と再び増加した(上の表参照)。
こうしたことから農薬の調製、散布および防除器具の洗浄を行うときは、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備を着用するよう指導を徹底する。
②については「被覆が不十分であった等、農薬使用後の作業管理の不良」が原因の事故・被害は令和4(2022)年は2件(16人)発生している。 このため被覆を要する土壌くん蒸剤は刺激性があり正しく使用しないと、揮散して周辺住民等や農薬使用者に被害を及ぼすことがあることの周知を徹底することや、使用する場合には、農薬の容器に表示された使用上の注意事項などに従い、吸収缶付き防護マスク等の防護装備の着用、施用後直ちに被覆を完全に行うことなど安全確保を徹底する。
また、ビニールハウスなど施設でも、施用直後に被覆を完全に行い、臭気が残っている期間は施設内に立ち入らないようにする。住宅、学校、保育所、病院、公園など人が居住したり、頻繁に訪れる施設周辺では被覆を要する土壌くん蒸剤の使用以外の防除方法を検討する。
③については、住宅地などの周辺ほ場では飛散の少ない剤型の選択や飛散低減ノズルの使用、周りに影響が少ない天候や時間帯の選択など、農薬の飛散を防止するための必要な措置を講じるとともに、事前に農薬を散布する日時、使用農薬の種類など記した書面・看板などで、周辺住民に対し十分な時間の余裕をもって幅広く周知することなどの対策を実施する。
④に関しては「保管管理不良等による誤飲誤食」による事故・被害が令和4(2022)年は4件(4人)起きている。このため農薬やその希釈液、残さ等はペットボトル、ガラス瓶等の飲食品の空容器等に移し替えたりせず、施錠のされた場所に保管するなど、保管管理を徹底することや、誤って移し替えてしまうことがないように、これらの空容器等は農薬保管庫等の近くに置かないことも徹底する。
万が一、他の容器に移し替えなければならないときは、飲食品の容器は使用せず、内容物が農薬であることを明記するなど、農薬の誤飲を防止するための適切な対応策を講じる。
運動の実施事項は、広報誌などによる普及啓発、講習会等を通じた普及啓発のほか、周知・指導が行き届きにくい農薬使用者への普及啓発にも力を入れる。
重要な記事
最新の記事
-
果樹産地消滅の恐れ 農家が20年で半減 担い手確保が急務 審議会で議論スタート2024年10月23日
-
【注意報】野菜、花き類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年10月23日
-
【クローズアップ】数字で見る米③ 委託販売と共同計算2024年10月23日
-
【クローズアップ】数字で見る米④ 委託販売と共同計算2024年10月23日
-
千葉県で高病原性鳥インフルエンザ 今シーズン国内2例目2024年10月23日
-
能登を救わずして地方創生なし 【小松泰信・地方の眼力】2024年10月23日
-
森から生まれた収益、森づくりに還元 J‐クレジット活用のリース、JA三井リース九州が第1号案件の契約交わす2024年10月23日
-
食品関連企業の海外展開に関するセミナー開催 関西発の取組を紹介 農水省2024年10月23日
-
ヒガシマル醤油「鍋つゆ」2本付き「はくさい鍋野菜セット」予約販売開始 JA全農兵庫2024年10月23日
-
JAタウン「サンゴ礁の島『喜界島』旅気分キャンペーン」開催2024年10月23日
-
明大菊池ゼミ・同志社大上田ゼミと合同でマーケ施策プロジェクト始動 マルトモ2024年10月23日
-
イネいもち病菌はポリアミンの産生を通じて放線菌の増殖を促進 東京理科大2024年10月23日
-
新米「あきたこまち」入り「なまはげ米袋」新発売 秋田県潟上市2024年10月23日
-
「持続可能な農泊モデル地域」創出へ 5つの農泊地域をモデル地域に選定 JTB総合研究所2024年10月23日
-
「BIOFACH JAPAN 2024」に出展 日本有機加工食品コンソーシアム2024年10月23日
-
廃棄摘果りんご100%使用「テキカカアップルソーダ」ホップテイスト新登場 もりやま園2024年10月23日
-
「温室効果ガス削減」「生物多様性保全」対応米に見える化ラベル表示開始 神明2024年10月23日
-
【人事異動】クボタ(11月1日付)2024年10月23日
-
店舗・宅配ともに前年超え 9月度供給高速報 日本生協連2024年10月23日
-
筑波大発スタートアップのエンドファイト シードラウンドで約1.5億円を資金調達2024年10月23日