週刊現代「日本茶は農薬まみれ」に農薬工業会が反論見解をHPで公開2021年6月8日
農薬工業会は6月7日、週刊現代6月5日号(5月28日発売)に掲載された「日本茶は農薬まみれそれでも飲みますか?」の記事について、農薬やその安全性評価体系に対して誤解を生じかねないとして、同記事に対する見解をホームページで発表した。
農薬工業会は、週刊現代の記事について8項目にわたって反論するとともに見解を説明している。
ひとつ目の指摘として、記事中の残留農薬に関する内容を記した「国内の残留基準値を下回っているからと言って油断はできない。日本の茶葉に対する残留農薬基準値は世界でも群を抜いて高いからだ」「農林水産省が発表している『諸外国における残留農薬基準値に関する情報』を確認すると、日本の残留農薬に対する規制は、海外に比べ非常に緩いことがわかります」の箇所について、残留農薬の基準の設定が、「毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量(ADI:許容一日摂取量)と一時的(24時間以内)に大量に摂取した場合でも悪影響を示さないと推定される摂取量(ARfD:急性参照用量)を食品安全委員会が設定した上で、農薬として使用された場合の推定摂取量がこのADI及びARfDを超えないよう、食品ごとに残留基準が設定されている」と指摘。さらに、「残留農薬の基準を個別に比較した場合、日本と諸外国では気候風土(高温多湿等)や害虫の種類が異なること、農薬の使用方法や検査する部位が異なる(玄米と籾米など)ことなどから、国や地域によって基準値が異なる場合がある」と説明している。さらに、残留農薬の基準値だけをみると、日本の基準が大きい場合もあれば、諸外国または国際基準の方が大きい場合もあり、「日本国内でも、作物によって農薬を使用する害虫の種類や使用方法が異なるため、作物によって基準値が異なる」と反論している。
また、二つ目の指摘として、記事中で、ネオニコチノイド系農薬のひとつであるジノテフランの基準値は欧州に比べ日本では2500倍の量の使用が認められているという内容に対し、農薬工業会は「同じ化合物であっても、農薬として登録のない国ではリスク評価を省略して一律に残留基準を定めている場合がある」として、「その値を登録のある国での残留基準値と比較して論じる事に意味はない」と反論した。
さらに、神経に与える影響について記事中の「ネオニコチノイドは虫の神経系を攻撃する農薬です。虫と人間の神経系の構造は変わりません。そのため、茶葉を通して摂取することで、人間に対しても脳・精神疾患を起こすと考えられています。その症状はうつ、短期記憶障害や多動といったものです。さらに、妊婦が摂取するとことで胎児の脳の発達障害を引き起こす可能性も危惧されています」という内容に対し、農薬による胎児あるいは幼少期における発達神経系への影響については、従来から実施されている3つの試験より精度が高く検出力の高い試験法として開発された「発達神経毒性試験法」が2019年4月1日のガイドライン改定の際に、神経毒性や繁殖毒性等の他の毒性試験の結果から必要と判断される場合は発達神経毒性試験が必要と明記されたと説明。また、日本で使われている主要なネオニコチノイド系農薬については、すでに発達神経毒性試験成績が提出されており、食品安全委員会で評価されているとし、「現在日本で登録されている農薬については、幅広い毒性試験が実施され、小児や妊婦への影響も考慮した安全性評価が実施され安全性が確認されている」と説明している。
また、残留農薬の基準について記事中の「一般には知られていませんが、茶葉は収穫後には一切洗われず、そのまま蒸されて製茶工程に入ります。そうして作られた茶葉をお湯に入れ、出てきたお茶を飲む。つまり、農薬を散布された茶葉が原料のお茶を飲むのは、農薬を飲んでいるようなものなのです」という箇所に対しては、「お茶については、栽培中に農薬が散布されている茶葉から作られた『製茶』が分析試料となっており、「残留基準値以内の食品を飲食しても健康上の問題を生じません」と断言している。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(140)-改正食料・農業・農村基本法(26)-2025年5月3日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(57)【防除学習帖】第296回2025年5月3日
-
農薬の正しい使い方(30)【今さら聞けない営農情報】第296回2025年5月3日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「盗人に追い銭」「鴨葱」外交の生贄にしてはならぬ農産物2025年5月2日
-
【2025国際協同組合年】情報を共有 協同の力で国際協力 連続シンポスタート2025年5月2日
-
イネカメムシが越冬 埼玉、群馬、栃木で確認 被害多発の恐れ2025年5月2日
-
九州和牛をシンガポール人に人気のお土産に 福岡空港で検疫代行サービスを開始 福岡ソノリク2025年5月2日
-
就労継続支援B型事業所を開設し農福連携に挑戦 有機農家とも業務提携 ハピネス2025年5月2日
-
宮崎ガス「カーボン・オフセット都市ガス」 を県庁などに供給開始 農林中金が媒介2025年5月2日
-
5月29日から「丸の内 日本ワインWeeks2025」開催 "日本ワイン"を学び、楽しむ3週間 三菱地所2025年5月2日
-
協同心の泉 大切に 創立記念式典 家の光協会2025年5月2日
-
【スマート農業の風】(14)スマート農業のハードルを下げる2025年5月2日
-
(433)「エルダースピーク」実体験【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年5月2日
-
約1cm程度の害虫を強力捕獲「吊るしてGET虫ミニ強力タイプ」新発売 平城商事2025年5月2日
-
農中情報システム 自社の導入・活用のノウハウを活かし「Box」通じたDX支援開始2025年5月2日
-
洗車を楽しく「CRUZARD」洗車仕様ホースリールとノズルを発売 コメリ2025年5月2日
-
戦後80年の国際協同組合年 世代超え「戦争と平和」考える パルシステム神奈川2025年5月2日
-
生協の「地域見守り協定」締結数 全市区町村数の75%超の1308市区町村に到達2025年5月2日
-
ムコ多糖症ニホンザルの臨床徴候改善に成功 組換えカイコと糖鎖改変技術による新型酵素2025年5月2日
-
エフピコ×Aコープ「エコトレー」など積極使用で「ストアtoストア」協働を拡大2025年5月2日