ラウンドアップ専用ノズルで労力不足克服 熊本の営農組合で実演会2021年11月5日
薬剤散布の希釈水を大幅に減らすことができるノズルが登場した。ヤマホ工業(株)と日産化学(株)が共同開発した「ラウンドノズルULV5」で、非選択性除草剤の代表であるラウンドアップマックスロード(日産化学)専用のノズルである。従来、10aの散布に25~100Lほど要していた希釈水を5Lに減らしながら、これに必要な薬剤の量と除草効果は従来と変わらない。この結果、散布時間は30分ほどで済み、大幅な省力になる。11月1日、熊本県JA本渡五和管内の営農組合で実演会を行った。
ブームスプレイヤーによる除草剤散布
実演会はJA本渡五和営農組合組織連絡協議会が主催。農薬メーカー(日産化学)、農機メーカー(丸山製作所)、JA本渡五和、JA熊本経済連、JA熊本中央会、JA全農、それにJA本渡五和管内農業法人の生産者など約70人が参加した。用意されたのはバッテリー用・人力用、動力用の背負式噴霧器とブームスプレイヤーで、それぞれ圃(ほ)場で実演した。
背負式動力噴霧器と専用のノズル部分
ラウンドノズルULV5の特長は、10aあたりの薬量は従来のまま、わずか水5Lの高濃度少水量散布で効果をあげるため、独自の粒子径で噴霧できるところにある。実際にほ場に散布した後は、雑草の葉に点々と泡状の粒が付着している程度だが、ラウンドアップマックスロードの強い浸透力によって除草効果は十分あるという。また飛散が少なく、ドリフトを最小限に抑えることができる。
ブームに装着したノズル
こうした小水量散布は、実際の作業に大きなメリットがある。まず、背負い式噴霧器の場合、背負う希釈水の量が圧倒的に軽くなる。丸山製作所の説明によると、従来、10aの散布量100Lの場合、背負い式だと1回20Lとして5回の給水が必要になる。これに対してULV5は、10aに必要な薬液は5Lなので1回の散布で済む。
この結果、背負い式噴霧器の重量を加味しても背負う重さは約10分の1になる。
全体の重さは延べ145キロ対14キロになる。またブームスプレイヤーを使った散布でみると、1度の給水で、従来の少量散布の10a25Lの5倍、100L散布の20倍の面積をカバーできる。
実演会の会場となった農事組合法人楠浦営農組合は、組合員10人で約28haの水田で米、麦、野菜を栽培する。作業は8人でこなしているが、メンバーはいずれも高齢者で、若い雇用の確保と経費節減が経営上の大きな課題になっている。
特に秋に発生し、翌春に繁茂する雑草は麦作の作柄に与える影響が大きい。「畦畔を含めた1回の除草に、みんなで10日ほどかかる。ブームスプレイヤーは、給水の手間を省いて、一人でも広い面積を除草できる」と、同組合の鬼塚猛清組合長は期待する。
JA全農耕種総合対策部TAC推進課の大橋凌太郎さんは「担い手である農業法人の要望にJA本渡五和のTACが応え、JAやメーカー、行政が動いた。天草地方は特に生産者の高齢化が進んでおり、省力化は喫緊の課題になっている。こうした取り組みを全国に広げたい」と評価する。
TACの呼びかけに大勢が参加
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