AIとICP分析の融合による次世代型土壌診断技術を開発 国際農研2025年11月26日
国際農研は、AIを活用してICP分析で得られる全波長データから多項目の土壌特性を同時に高精度で推定できる新しい土壌診断技術を開発した。
開発途上地域を中心に食料需要が増大し、気候変動の影響も加わる中、農業現場では土壌肥沃度を適切に把握し、持続的に管理する重要性が高まっている。しかし、従来の土壌分析は複数の測定法を組み合わせる必要があり、結果が得られるまで数日から数週間を要する。その上、分析コストも高く、小規模な農家やサブサハラアフリカなどでは十分に活用されていないため、適切な施肥管理が困難となり、過剰施肥や養分欠乏による土壌肥沃度の低下を招き、収量や環境保全に悪影響を及ぼすことがある。
図1:同法による土壌診断と実測値の関係(一例)。
通常ICPで測定しない項目(pH、CEC、全炭素)も高精度で予測されている。
同研究では、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)によって得られる全波長の発光スペクトルデータをAIに学習させるという新たなアプローチを採用。ICP分析では通常、特定の元素に対応する限られた波長のみを利用するが、同研究はこれまで活用されてこなかった膨大な波長データを解析対象とし、従来法で得られた分析値を教師データとして深層学習モデルを構築した。
図2:土壌診断の現在と今後
アジア・アフリカなど7か国から収集した多様な土壌タイプや環境条件を反映した約2000の土壌サンプルを用いることで、汎用性の高いAIモデルの開発に成功。その結果、CEC(陽イオン交換容量)、交換性Ca・Mg・K・Na、pH、可給態リン、全炭素、全窒素、土壌の粒径構成など12項目を同時に高精度で予測することが可能となった。また、多くの項目で決定係数(R2)が0.9以上を達成した。
分析時間を大幅に短縮しながら、多項目を一括して診断できるこの技術は、肥料設計や圃場管理の迅速化、薬品使用の削減による環境負荷の低減と土壌診断インフラが未整備な地域での活用など、国内外での幅広い波及効果が期待される。
同研究成果は11月20日、国際科学専門誌『Scientific Reports』オンライン版にオープンアクセスで掲載された。
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