農薬:時の人話題の組織
【時の人 話題の組織】上園 孝雄・協友アグリ(株)代表取締役社長 いつも現場に寄りそって2015年4月8日
「日本の農畜産物の品質の高さ、トマトやイチゴ等々食味のみならず、食欲をそそる外観に至るまで、どの産地もレベルが高く、改めて生産現場の努力や苦労を痛感しました」。JAグループ国産農畜産物商談会をみた感想だ。全農から民間農薬会社・協友アグリ(株)へ、そして社長に就任された上園孝雄社長に話を聞いた。
◆農家に喜んでもらうために
「愚直に現場主義」を掲げる協友アグリ(株)の社長に上園孝雄氏が、この1月末に就任した。上園社長は全農時代に「現場で困っている課題に応えるのが私たちの基本的な役割」と常にいっていた。この二つの言葉に共通しているのは「いつでも生産の現場に目を向け、現場のニーズに的確に応えていこう」という思いだ。
より具体的には、全国各地に協友アグリの普及担当者がいるが、その担当地域で「ここではどういう水稲の栽培体系になっており、どういう雑草が生え、現場の農家の方たちはどう困っているのか。そうした現場情報をしっかりと掴んだうえで、協友のどの除草剤ならニーズにピッタリあうのか、農家の方に喜んでもらえるのかを考える」ことだ。
そして農薬は「技術商品だから、技術に根ざした普及推進」をしていかなければいけない。だから「現地で展示試験をしっかりやって、効果を実感してもらい、そのうえで防除暦に採用していただく」。このことをしっかりやっていこうというのが「愚直に現場主義」の真髄だとも。
(写真)上園 孝雄・協友アグリ株式会社代表取締役社長
◆若いパワーで普及推進
協友アグリはここ数年若い社員を多く採用していることもあって、社員の平均年齢は39歳と若い。その「若い人たちが現場で活躍しているし、若いパワーを活用するのが協友アグリです」と上園社長は嬉しそうに話す。
そうした若い人たちが伝統的な営業手法に長けているはずはないから、愚直に現場主義に徹し「技術的な知識を得て、徹底的に技術的な観点から農家の役に立とうということが定着しつつあり、現場に立脚した科学的な普及ができつつある」と思っている。
その結果「やっぱり、除草剤は協友のバッチリがいいね」と、農家やJAから選んでもらう。いまはそういう時代になっていると考えている。
協友アグリが、当初はヒエ剤として開発したピラクロニルは、SU抵抗性雑草が蔓延して困っていた地域でコナギやオモダカにも非常に高い効果を発揮することが分かり、ピラクロニルを主成分とする一発処理水稲用除草剤「バッチリ」は、4年連続で普及面積1位という評価を「生産現場から受けている」。
バッチリの26年度の普及面積は19万2668haだが、原体供給している他社も含めるとピラクロニルの普及面積は68万ha強と、水稲作付面積の実に38%を占めている。これは開発時には「想定していなかった」ことだ。
さらに最近は、お隣の韓国でも抵抗性雑草が増えてきており、その対策としてピラクロニルが注目され、昨年末には韓国でも登録を取得。これからは「アジアの稲作にも貢献することができる」わけだ。
近年、抵抗性雑草の問題は世界的なひろがりをみせており、ピラクロニルへのニーズが、さらに拡大する可能性もある。
しかし「水稲用除草剤は伸びているが、園芸分野が苦戦している」。だから上園社長がこれから力を入れていきたいのは「園芸分野でもお役に立てるようにラインアップを広げていく」ことだ。
その一つにIPM(総合的雑草・病害虫管理)がある。協友アグリは早くからIPMに取り組んできた会社の一つだ。還元水あめを有効成分に、昆虫の気門を塞ぐことで効果を発揮する「エコピタ」。性フェロモンで雌雄の交信をかく乱し交尾を阻害する「コンフューザー」。ハダニやアザミウマ、アブラムシの天敵を使用した天敵剤もあり、現場での評判も高い。
◆園芸分野にも積極参入
しかし、IPMは世界的にも拡大していこうという方向性は分かっていても、使い勝手やコストの問題、さらに天敵と化学農薬をどう組み合わせるかなど、さまざまな課題があり、なかなか急速に普及していかないというのが実態だ。それを打開すべく全国3ヶ所でIPM実証圃を設置し、取組みを本格化させつつある。
さらに、園芸分野は、水稲と違い、作物ごとに防除体系が異なるだけではなく、施設なのか露地なのか、同じ施設でも土耕なのか養液栽培か、露地であっても地域ごとに栽培方法が異なる。
そうした生産現場の需要を「こまめに聞いて、それに応えられるような混合剤とか新薬を開発しラインアップをひろげていく」ことが、これからの上園社長の、そして協友アグリの目標だという。「系統は水稲は強いが、園芸は弱い」といわれているが、「作物ごと地域ごとの丁寧な普及推進で、これを打破していきたい」とも語ってくれた。
◆JAと連携し市場開拓
生産現場のニーズを的確に把握するには、もちろん協友アグリの営業部隊が現場で情報を収集するのが基本だが、最近はJAのTACと一緒に、大規模生産者のところへ赴き、直接声を聞かせてもらうケースも増えているという。その結果、いままで系統未利用だった生産法人に効果を試してもらい、担い手専用規格の効果やメリットも理解してもらって成約に至った事例もあるという。
大規模生産者や生産法人への対応として「JAのTACの重要性が増している」と上園社長は実感している。だから「TACの武器になるものを提供して、ともに手を携えて、新しいマーケットを開拓していきたい」という目標も語ってくれた。
そして最後に「農家のみなさんやJAは私たちの顧客であると同時パートナーです。そうしたみなさんのニーズをどう集めるか。そこにわが社の命運をかけています。これからも、みなさんのニーズをくみとり、お役に立てる品目を作っていきます」。そうした意味でも「愚直に現場主義」を貫いていく決意にいささかの揺らぎはないといえる。
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