農薬:防除学習帖
果樹の防除2【防除学習帖】第91回2021年2月26日
果樹は、背丈が高く、葉や枝が繁茂しているため、防除が必要な表面積も広く、水稲や野菜などとは防除手段やコツが異なっている。また、ほとんどの樹種に防除暦があり、それに従って防除を行えば一定の防除効果が得られるのも果樹防除の特徴だ。ただ、防除暦に従って防除を行う際に、「何故この時期に防除が必要なのか」、「何故この薬剤が選ばれているか」と設定されている理由を知ったうえで行うのと、そうでないのとでは防除効率に差が出てくる。そこで、今回からは防除暦に書かれている理由を紐解きながら、防除法や防除のコツを探っていきたい。
1.一般的な防除暦に表記されている項目
防除暦には「いつ、何を、どれだけ散布すればよいか」が書き記されていることは前回紹介した。その防除暦の記載内容は、地域や産地によって特殊事情がある場合を除き、基本的には下表のような記載内容になっている。以下、それぞれにどのような情報がちりばめてあるか概要を紹介する。
(1)回数
ここでの回数は、1作期に行う何回目の防除であるか、つまり防除対象の果樹に向けて薬液が散布されたのが何回目かを示す。農薬取締法に規定されている「使用回数」とは異なり、混合剤や混用の場合のように有効成分が複数でも1つの散布薬液であれば、散布回数1回となる。減農薬栽培などでは当初、このカウント方法で数える場合が多かったが、現在では有効成分毎に散布回数を規定して、1作期に散布される延べ有効成分数にしている場合あるので、減農薬などに取り組む場合は、カウントの仕方をよく確認しておく必要がある。防除暦では、農薬取締法上の有効成分の総使用回数を超過しないように注意しながら、最も効果を発揮できる時期に必要な回数だけ散布できるように農薬が選ばれ、配置されている。ちなみに、永年作物の果樹における、農薬取締法が規定する農薬の総使用回数は収穫終了後にリセットされる。
(2)散布時期
文字通り、病害虫を確実に防除できる時期であり、あるいは、ここで防除していないと後の生産に影響が出る恐れがあるといった防除すべき重要な時期が示されている。これらは、病害虫の生態と有効成分の特性を考慮して最も効果を発揮する時期を見定めて設定されており、十分な防除効果を得るためには、指定された散布時期(=適期)を逃さないように確実に散布することが重要だ。
(3)対象病害虫
この項目には、病害虫の生態に合わせて、防除が必要な時期に対象病害虫が表記されるようになっており、発生の始め、盛期などがわかるように工夫されていることが多い。
下記の例では、同じ黒星病でも、黒星病(伝染期)と黒星病(発生期)に分けて記載されている。黒星病の場合、花芽の鱗片基部や落ち葉で菌糸の状態で越冬しており、それが春になって活動を開始し、伝染源となる胞子をつくって飛散させ、伝染していく。この最初に伝染が起こる時期のことをこの例の場合「伝染期」と呼んでいる。この時期にはまだ伝染減となる胞子の数が少なく、しかも最も農薬を効かせやすい時期でもあるので、この伝染期を逃さず均一散布することで、病害の伝染を効率よく防ぐことができる。
いったん1次伝染を許してしまうと、1次伝染でできた病斑から大量の胞子がつくられて大量に飛散し、病害がより広範囲に拡がってしまう。この広範囲に発生している時期をこの例では発生期と呼んでいる。いうまでもなく、伝染期での感染を可能な限り少なくすることが、その園地全体の防除成否を決めるカギとなり、これが、病害虫は発生の始めに徹底して防除が必要だといわれる理由でもある。
次回に続く。
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