農薬:防除学習帖
IPM防除5【防除学習帖】第106回2021年6月18日
防除学習帖では、「みどりの食料システム戦略」で重要な革新的技術として取り上げられたIPM技術について、その具体的な技術の内容を紹介しており、前回、害虫防除に使用される生物的防除の1つとしてフェロモン剤を紹介した。今回は生物農薬の雑草防除への利用について紹介する。
1.除草防除に使用される生物農薬剤とは
最初にお断りするが、現在、雑草防除に使用できる生物農薬は無い。正確にはあったが、販売量が思ったほど伸びなかった。生物農薬(除草剤)は、使用しても有効成分の使用回数カウントが無い貴重な除草剤であるため、一時期は利用が進んだ。しかし、使用時期を逃すと効果がないことや使用できる時期が限られることや、対象の草種以外には全く効果が無いことから、実際の営農の場面では効率的な使用が難しいことなどから、次第に使用が減り、経済的な理由で登録失効となった。
今後、再び開発される可能性があるので、失効はしているが、有効成分別に特徴を紹介しておきたい。
(1)糸状菌が有効成分のもの
販売していた時の商品名がタスマートという生物除草剤があった。
その有効成分はドレクスレラ モノセラスという糸状菌であり、ノビエやタイヌビエなどイネ科ヒエ属雑草にのみ病原性を示す微生物で、イネはもちろん、ヒエ属以外の植物には何の影響も及ぼさない。田面水中でヒエ属雑草の実生に付着し、発芽して菌糸をヒエ体内にはびこらせて7~10日後に枯らす。
ドレクスレラ モノセラスによる安定した除草効果を得るには、発芽後間もない時から最大でも2葉期までのヒエ実生にしか効果がないので、この時期を逃さず散布することと、菌の胞子がヒエの体に安定的に付着するようにするため、少なくともヒエが水に沈む程度の水深を7日間は保つようにする必要がある。
(2)細菌が有効成分のもの
販売していた時の商品名がキャンペリコという生物除草剤があった。
その有効成分は、ザントモナス キャンペストリスという細菌であり、スズメノカタビラに特異的に病原性を示す。つまり、有効成分の細菌が、スズメノカタビラに感染し、病気にさせて枯らすということだ。そのため、除草効果を発揮させるためには、有効成分である細菌をスズメノカタビラに感染させなければならない。細菌は、傷口や気孔などの開放部から雑草体内に侵入するので、スズメノカタビラに多くの傷がある状態でキャンペリコを散布した方が効果も安定する。幸い、芝は刈り込みという作業があるので、刈り込み後には、スズメノカタビラは傷ついており、多くの開口部ができているため、その傷に向けて散布するとよい。それによって効率よく感染させることができ、その結果、効率よくスズメノカタビラを枯らすことができる。
失効した主な生物農薬(除草剤)の特性一覧
2.生物農薬の出荷量推移と今後の活用検討
(1)生物農薬の出荷量推移
生物農薬(フェロモン除く)の出荷量は、令和元年度には、合計で33億円程度とまだ少なく、殺虫剤が27億円(約82%)と大半を占める。殺菌剤は、6億円にとどまり、除草剤に至っては出荷金額0円である。
生物農薬の出荷金額が飛躍的に伸びない理由は、有効期限が短いこと、使用時期・使用方法が限られること、価格が高く防除コストが合わない場合があること、化学農薬と同じ感覚で使用すると効果が出せずに失敗するリスクが大きいこと、などが原因と考えられている。
(2)今後の活用検討
本年5月、みどりの食料システム戦略が決定され、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取組方向が示された。そのうち、防除に関するものは、下表のとおりであり、化学農薬の低減や有機農業の取り組み面積拡大が盛り込まれており、生物農薬の活用場面が拡大していくものと考えられる。当然ながらより効率の良いIPM技術の確立が求められてくるので、生物農薬を最大限活用した技術確立を行う必要が出てくる。

重要な記事
最新の記事
-
鳥インフルエンザ 鳥取県で国内6例目を確認2025年12月2日 -
東京都瑞穂町から「みずほ育ちのシクラメン」販開始 JAタウン2025年12月2日 -
「RIO GRANDE GRILL」全店で「鹿児島黒牛フェア」開催 JA全農2025年12月2日 -
広島サンダーズPOM賞に広島血統和牛「元就」を提供 JA全農ひろしま2025年12月2日 -
卓球「混合団体ワールドカップ2025」日本代表を「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年12月2日 -
対象商品が送料負担なし「石川県 国消国産キャンペーン」開始 JAタウン2025年12月2日 -
食や農の未来を担う次世代を応援「全国農業高校 お米甲子園 2025」に特別協賛 JA全農2025年12月2日 -
JAタウン「ホクレン」おすすめ商品25品「お客様送料負担なし」で販売中2025年12月2日 -
澤乃井小澤酒造へ「オリジナルICHI-GO-CAN」日帰りモニターツアー募集 農協観光2025年12月2日 -
鹿児島にウルトラパワーを「JA-SSウルトラそそグッド大作戦」始動 JA鹿児島県経済連2025年12月2日 -
米価下落の予兆【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月2日 -
英国海外子会社の社名を変更へ 井関農機2025年12月2日 -
冬いちご日本一を決める「第3回クリスマスいちご選手権」開催 日本野菜ソムリエ協会2025年12月2日 -
地域の農業支援を通じて企業価値を高める CSRオンラインセミナー開催 フェイガー2025年12月2日 -
ファンと社員の愛が詰まった「2026年紅白福袋」数量限定で発売 エスビー食品2025年12月2日 -
年末年始の大掃除でこども食堂を応援「モノ寄付」冬のキャンペーン開始 むすびえ2025年12月2日 -
精鋭が接遇力を披露 配達業務品質の頂点は白岡センター パルシステム埼玉2025年12月2日 -
深谷市「DEEP VALLEY Agritech Award 2025」最優秀賞はエンドファイト2025年12月2日 -
家庭の照明を落とそう エチオピアに明かりを届けるキャンペーン開始 パルシステム2025年12月2日 -
愛媛大、豊橋技術科学大と「グルタチオン」による高温ストレス耐性向上で共同研究 WAKU2025年12月2日


































