農薬:防除学習帖
防除暦5【防除学習帖】第118回2021年9月24日
前回よりホウレンソウの防除暦作成に取り組んでおり、防除暦作成の手順や防除手段選択の考え方を示しながら、防除の組み立て方法について紹介している。
前回までに、ホウレンソウ栽培におけるほ場の準備編として除草作業と土壌消毒について紹介した。今回は、土壌消毒剤以外の農薬で実施する播種(はしゅ)前~播種時の防除について紹介する。この時期は、病害も害虫も密度がまだ低いので、使用する農薬の防除効果が得られやすいし、農薬散布もしやすいので、毎年発生する病害虫の場合は、この時期の防除は欠かさないようにしたいものだ。
1.苗立枯病防除
苗立枯病は、発芽間もない実生が侵される病害で、土壌中にいる病原菌(ホウレンソウの場合リゾクトニア菌とピシウム菌が主体)が実生に感染して発生する。この病害は、これらの病原菌に効果のある農薬を使用し、現在登録のある農薬は、種子消毒剤と土壌灌注剤の2種がある。(表参照)
(1)種子消毒剤
種子消毒剤は、ホウレンソウの種子に薬剤をコーティングし、発芽時の感染を防止するものである。使用する農薬は、病原菌により使用する農薬が異なるので留意が必要だ。
処理法は、粉状の薬剤を湿らせた種子にまぶす種子粉衣、農薬希釈液に所定時間だけ種子を浸漬する種子浸漬、乾燥種子に農薬原液を塗り付ける塗抹処理の3種類がある。効果の善し悪しは、種子に農薬が満遍なく付着し、乾燥固着できているかが鍵なので、用法を守って正しく使用する。
(2)土壌灌注
希釈した薬液を土壌表面に所定水量だけ灌注し、土中に潜む病原菌に届くようにする防除法である。水量が少なすぎると、薬液に触れずに逃れてしまう病原菌が発生する可能性があるので、水量は必ず守って丁寧に灌注する。
(3)土壌混和
粒剤など固形の製剤をそのまま土壌に散布し、よく混和する方法。これも土壌にいる病原菌にいかに農薬に触れさせるかが鍵なので、混和は丁寧に確実に行う。
2.立枯病・株腐病・根腐病防除
これらの病害は、苗立枯は起こさないが、ある程度生育した後に発生する病害である。
これらの防除には、液剤の土壌灌注か粉剤の土壌混和の2とおりの方法がある。
これも播種床の土中に均一に農薬を分散させることが効果を安定させるコツなので、用法を確実に守るようにする。
3.害虫防除
ホウレンソウに発生する害虫には、土中から加害するものと飛来して地上部を加害するものがある。後者の場合は、防虫ネットなどの物理的防除が効果的であるが、地中から加害する害虫には、土中で作用する殺虫剤の利用が効果的である。
対象の害虫や殺虫剤によって使用方法は異なるが、基本動作は、土壌に散布後に混和してホウレンソウの根圏を殺虫剤の層で守るようなイメージで共通している。この土壌散布の方法は、作条混和(播種する部分に条状に薬剤を散布して混和)と植溝混和(植溝に散布)、ほ場全面混和に分けられる。センチュウのようにほ場全面に存在し、どこからくるかわからないような害虫は全面処理が望ましく、アブラムシやタネバエなど飛来してくる害虫の場合は、植溝などホウレンソウの根圏に粒剤を散布し、根から効率よく吸わせる方が効果も良い。
もし、全面混和する農薬の所定量を、誤って作条処理したりすると、所定量より濃い薬量の農薬にホウレンソウが触れることになり、薬害が発生する恐れがあるし、作条処理外の農薬が施用されていない部分に居た害虫が殺虫剤に触れることなく生き残り、ホウレンソウを加害することもある。なので、農薬の使用方法は、ラベルをよく読んで確実に守り、使用方法以外の方法は行わないようにしてほしい。
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