農薬:防除学習帖
トマトの防除暦16【防除学習帖】第150回2022年5月20日
現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
現在、定植以降発生する病害虫の防除についてひも解いていており、今回は、大型チョウ目害虫の防除を紹介する。トマトに発生する大型チョウ目害虫は、タバコガ、オオタバコガ、ハスモンヨトウの3種である。
1. タバコガの生態
成虫は翅を広げた大きさで35mm内外の全体茶色、幼虫は、体色が淡緑で側線が白色、気門上方に赤紫褐色斑点が連なっており、終齢で体長40mmにもなる。幼虫期を果実の中で過ごすので、防除が難しく、果実に侵入する前に防除できていないと被害が大きい。
年に2~3回発生し、蛹の状態で越冬する。夏に高温少雨の時に発生が多くなる。
2. オオタバコガの生態
成虫は翅を広げた大きさで40mm、全体黄褐色で黒褐色の線や斑紋がある。終令幼虫は、隊長35~40mmで、体色は淡緑色や緑褐色、黄褐色など変異が多い。タバコガ同様、幼虫が果実内に潜り込んで加害するので、一旦潜り込ませると防除が難しい。盛夏から初秋にかけて被害が大きくなるので、とにかく発生の初期を見逃さずに確実に防除することが重要だ。そして、年に3~4回の発生期間を通じて次から次へと発生してくるので、発生期間を通じ、幼虫が果実に喰い入る前に確実に防除できるよう初期からの定期防除が不可欠だ。
3.ハスモンヨトウの生態
成虫は翅を広げた大きさが35~40mmのガで、前翅に淡い褐色で数条の縞模様が目立つ。幼虫は、終令で体長50mmにも達し、体色は灰緑、暗緑、暗褐色など変異が激しい。卵は、数百粒の単位の卵塊で産み付けられ、繁殖力が半端ない。極めて多く食べるのであっという間に葉をボロボロにしてしまうのでやっかいだ。トマトよりもナスやピーマンへの加害が多いがトマトでも警戒するべき害虫だ。
年に5~6回も発生し、施設内なら越冬もできるので、冬でも発生することもある。多食性で、ありとあらゆる作物を食い荒らす大変厄介な害虫である。時期的には、8月~10月の被害が特に大きいので、これからの季節は最重点で防除に取り組んでほしい。
この害虫の厄介なところは、6回ほど脱皮して蛹・成虫となる際に、齢期が進むにつれて薬剤が効きにくくなることである。特に最終の6齢幼虫だと防除が難しくなる上、食害量も多くなるので大きくなる前にしっかりとした防除が必要である。
2.防除法
(1)耕種的防除
ア.防虫ネットを施設に張り、侵入を防ぐ。
イ.性フェロモン剤を利用できる場合は積極的に利用する。
ウ.被害果は見つけ次第摘み取って処理する。
(2)薬剤防除
いずれの害虫も幼虫が大きくなると薬剤が効きにくくなるので、孵化まもない頃を狙って確実に防除する。発生時期には、農薬の残効が切れる前に定期散布を実施する。
チョウ目害虫に効果のある有効成分を整理してみたので参考にしてほしい。ただし、実際の使用にあたっては、必ず登録内容を確認して使用するようにしてほしい。
タバコガやオオタバコガに効果のある薬剤としては、フェニックス顆粒水和剤やアファーム乳剤、スピノエース顆粒水和剤、トルネードフロアブル、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の評判がよい。新規薬剤では、速効性に優れ、効果が高いグレーシア乳剤が登場し、注目されている。
気候変動等の理由により発生が読めない場合は、セル苗灌注処理法が効果的なようだ。この方法は、育苗期に薬液を灌注処理するだけで、本圃に移植してからも苗がまだ小さい時期の防除作業が省略でき、初期の被害や苗による持ち込みを防ぐことができる。キャベツやレタスなどの苗を植え付けてから1カ月近くも効果を発揮するので、生育初期の被害を回避することができる。先に紹介した薬剤には、この処理法ができる薬剤も多いのでセル苗移植の場合は、一度試してみると良い。
ハスモンヨトウは、薬剤がよく効く幼虫がまだ小さい時期からの徹底防除が重要で、発生初期からの発生期間を通じた定期的な防除が必要となってくる。
指導機関等の資料で防除薬剤としての評価が高いのは、フェニックス顆粒水和剤、プレオフロアブル、プレバソン顆粒水和剤の3剤であり、古くからの薬剤では、アファーム乳剤、オルトラン水和剤、コテツフロアブル、ジェイエース水溶剤、ランネート45DF、ロムダンフロアブルなども高評価である。新規のグレーシア乳剤がオオタバコガ防除と同様に注目されている。
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