農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (32) 【防除学習帖】第271回2024年10月26日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。前回までに病害虫雑草の化学的防除以外の防除法を中心に紹介したので、今回から化学的防除の詳細について紹介する。
本稿でも何度か紹介しているが、IPM防除とは、耕種的防除、生物的防除、物理的防除および化学的防除の4つの防除法を効率良く組み合わせて行うことであり、化学的防除を否定するものではない。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、その際に、できるだけ農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするとより良いと考えている。
そこで、みどり戦略に対応した薬剤選択の参考になるように、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理してみようと思う。対象病害虫雑草を整理対象にしているのは、1成分で複数の対象病害虫雑草を防除できる有効成分を上手に使用することによって、複数の農薬で防除する場合よりもリスク換算量を減らすことができるようになるからだ。
整理にあたっては、有効成分の作用機構ごとに分類し、それぞれの耐性のリスクや同じ作用機構を持つ有効成分の連用をさけるために整理されたRAC(Resistance Action Committee)コードの順番に整理していくこととし、まずは殺菌剤の耐性発生リスクを示すFRACコード表をもとに整理を進める。
まずは、FRACコード表に記載されている項目の内容と意味をご紹介する。それは、①作用機構、②作用点、③グループ名、④化学グループ名、⑤有効成分名、⑥農薬名、⑦殺菌剤の耐性リスク・備考、⑧FRACコードの8つであり、それぞれの意味合いは以下のとおりである。
以下、ローテーション防除や防除効率を考えやすくするためFRACコード表におけるグループ名順に整理する。そのため、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
1.PA(フェニルアミド)殺菌剤
(1)作用機構:核酸合成代謝阻害
(2)作用点:DNAを鋳型にしてRNAに転写する働きをする酵素であるRNAポリメラーゼⅠの働きを 阻害し、菌タンパクの生合成を阻害する。
(3)化学グループ名:アシルアラニン
(4)所属する有効成分(農薬名):
①メタラキシル(リドミル粒剤2)
②メタラキシルM(エプロン31、スクーデリアES、サブデューマックス液剤)
(5)殺菌剤の耐性リスク:高
(6)耐性菌の発生状況:各種作物の疫病やべと病といった多くの卵菌類に耐性菌が発達している。
(7)薬剤の特性:卵菌類(べん毛菌類)であるPhytophthora菌、Pythium菌、Albugo菌、Peronospora菌、Sclerophthora菌等(次表参照)に高い効果を示す。
本剤は、病原菌の発芽管伸長、植物体への侵入、菌糸の伸長を強く抑制し、浸透移行性を有していることから、予防効果と治療効果を合わせ持つ。耐性菌マネージメ ントの観点から、疫病やべと病に散布剤として使用される場合は、FRACコードの異なる有効成分との混合剤が使用され、PA殺菌剤単独で使用されることはない。単剤での使用は、種子処理と土壌処理に限られる。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
リスク係数は、メタラキシル、メタラキシルMともに0.316である。
リドミル粒剤2は、粒剤を土壌全面もしくは植溝などに散布するので、同じ作物であれば、登録の使用量の範囲内で10aあたり投下量が少なくなる処理方法を選ぶことでリスク換算量を減らすことができる。ただし、防除効果を最優先に考えるようにする。
種子処理(エプロン31やスクーデリアES)の場合は、処理済種子の播種量を減らすことでリスク換算を減らすことができるにはできるが、もともとのリスク換算量は小さく、減少効果は少ないので、収益面を考慮すると得策ではない。
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