農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
38.テトラゾリルオキシム
(1)作用機構:[U]不明
(2)作用点:不明
(3)グループ名:テトラゾリルオキシム/FRACコード[U17]
(4)殺菌剤の耐性リスク:不明
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]:テトラゾリルオキシム/ピカルブトラゾクス(ピシロック、ナエファイン)
(7)グループの特性:
このグループに属するピカルブトラゾクスは、その作用機構は不明であるが、呼吸鎖電子伝達系複合体Ⅰや複合体Ⅲの阻害ではないかと考えられている。野菜べと病・疫病やイネのピシウ
ム性病害、西洋芝のピシウム病・赤焼病等の卵菌類に優れた効果を示す。
また、植物ホルモンの生産および輸送の促進、栄養吸収の促進という主に 2 つの作用により、植物の根の生育促進や活着促進、高温ストレスによる根部衰退の軽減といった植調作用を示すユニークな殺菌剤である。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するピカルブトラゾクスのリスク換算係数は0.316で基準年のリスク換算量は1トンと少量でリスク換算量総量に対する割合は低い。加えて、難防除が多い卵菌類に効果の高い殺菌剤であることから、耐性菌対策を実施しながら、削減することなく使用を継続した方が良いと考えられる。
(9)ピカルブトラゾクスの農薬登録がある主要病原菌一覧
ピカルブトラゾクスの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。これらの他、他の殺菌剤との混合剤も存在するので、実際の使用前には必ず製品のラベルにて登録内容(適用作物・適用病害・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。

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