【クローズアップ】2年ぶりフーデックス コロナ禍と自由化で様変わり2021年3月11日
千葉市の幕張メッセで開催中のアジア最大級の国際食品・飲料展「フーデックス・ジャパン2021」は、コロナ禍で様変わりした。出展、入場者とも大幅に減り、米中対立の余波で中国の出展も激減。リアル展示の難しさも浮き彫りとなった。

出展は国内外とも激減
昨年、コロナ禍で中止になったため、フーデックス開催は2年ぶり。期間は9日から12日までの4日間。国内外の食品関連のバイヤーなどが一堂に会し、各国の日本市場への売り込み状況や戦略品目などが分かり、今後の食料品販売の行方を知る意味でも貴重な場を提供してきた。1976年から毎年開いてきたが、昨年は直前で中止に追い込まれた。今年は感染防止対策を徹底して何とか開催にこぎ着けたが、出展は激減したのが実態だ。
被災県の規模縮小も
今回のフーデックスで気になったのは、毎年、大規模ブースを展開する東日本大震災の被災県の参加企業が、コロナ禍が響き縮小している点だ。特に、〈ふくしま、プライド。〉のスローガンのもとでひときわ目立つ県産品のPRを実施してきた福島が縮小した。大震災から10年。これまでは国の支援措置もあったが、来年度以降は展示の財源も難しくなる可能性が高い。
一昨年は94カ国、3300社、8万人超参加
フーデックスの規模感を見てみよう。直近の2019年の参加は、世界94カ国・地域から3316社、入場者は累計で8万人を超えた。うち、海外からの来場者は、中国や韓国をはじめアジアを中心に初めて1万人を超えた。
しかし、2年ぶりとなる今回は、今のところ60カ国・地域、2000社と3割以上減っている。会場も従来の海外と国内企業で別々の大きなホールに分け実施していたやり方を改め、大幅に縮小した。コロナ禍で世界的に国際展示会の開催のあり方が問われる中で、今後のフーデックス運営の行方にも影響しかねない事態となっている。
アフターコロナ見据える
そこで、フーデックス事務局では早くも来年開催の盛り上げを念頭にリスタートを期す。「フーデックス・ジャパン2022」は〈アフターコロナに向けて再始動〉とのスローガンを掲げ、「世界90カ国・地域から3500社出展。約8500人のバイヤーと出会える」と、これまでの実績を強調し、早めの出展希望を促す。だが、来年もコロナ禍の行方次第だろう。新型コロナのワクチン接種の進み具合もカギを握る。事務局が期待を込める〈アフターコロナ〉は先行き不透明だ。
1年後の北京冬季五輪の影響も
来春のフーデックス日程は3月8日から11日と既に決まっている。ちょうど来年2月からの北京冬季五輪のパラリンピック終了時と重なる。この時に、コロナ禍での事態がどうなっているのか。
7月23日からの東京夏季五輪、半年後の来年2月には北京冬季五輪。隣国の日中で一大国際イベントが続く。既に日本は東京五輪の海外客受け入れを断念する方向だ。一方で米中対立が激しさを増す。そんな中でのフーデックス〈再始動〉ともなる。
海外勢の勢力図激変
今回にフーデックスで注目されるのは米中対立の影響だ。毎回、中国は大規模な出展スペースを確保し、日本市場への食品の売り込みを行ってきた。今回は日本と関係の深い山東省などが目立つ程度で、一時の勢いは消えた。
一方で、目立ったのが欧州勢だ。立ち寄ったイタリアのブースではチーズを勧められた。「いつもはワインPRだが、今回は自由化で関税も下がるチーズをぜひ」と。英国ブースではわざわざ日英経済連携協定(EPA)締結で英国の食品・飲料価格が下がるとアピール。
米国は、TPP離脱後に日米貿易協定を結んだ。主力輸出品目である牛肉は、対日市場を巡り最大ライバルのオーストラリアを上回っている。フーデックスの米国ブースでは、相変わらず食肉売り込みには一段と力を入れる。
フードテック講演に注目
フーデックス会場での講演会も、時流の影響を受ける。食品にAIやITなどを活用したフードテック講演に注目が集まった。さらには、コロナ禍での食品販売戦略なども語られた。今回は、コロナ対応と最新技術を駆使したフードテック対応の二つが、大きなテーマとなった。
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