オンラインマルシェで活気「産直ビジネス」市場調査 矢野経済研究所2020年9月29日
矢野経済研究所は、国内の産直ビジネス市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を発表した。
調査は6月から8月にかけて農業生産法人(自社・契約型農場、CSA)、農産品流通事業者(オーガニック農産品流通、農産品市場外流通)、農産品販売事業者(農産品直売所、フードロス関連ビジネス、体験型農業テーマパーク、農産品宅配ビジネス、需給マッチングビジネス)を対象に実施。
同調査における産直ビジネスは、従来の卸売市場を経由せず、直接、産地から小売事業者や消費者等に流通させる事業のことで、産直農産品は、こうして流通した国産の青果物を対象としている。
市場概況
近年は、インターネット通販で生産者から消費者に野菜を届けるオンラインマルシェが活況を呈する一方、道の駅に併設された直売所、加工食品メーカーが提携する契約農場等も好調。国内では高齢化や担い手不足により離農が進む中、こうした状況を食い止めるため、2009年に実施された農地法の改正では、農業への参入規制が緩和された。現在は、農業生産法人や一般法人の農業参入が離農による生産減を補うことで現状を維持しており、2019年の農産品市場規模全体は、前年比100.6%の9兆2250億円(事業者による流通総額ベース)だ。このうち、産直農産品市場規模は、全体の伸びを上回る前年比104.2%の2兆9424億円(事業者による流通総額ベース)と推計した。
コロナ禍で急増するオーガニック野菜需要
共働き世帯や単身世帯の増加に伴い外食や中食など食の外部化が進み、家庭での生鮮野菜の消費は減少傾向にある。しかし、コロナ禍による外出自粛や、環境、健康に配慮したエシカル消費の高まりから、農薬や化学肥料を使用しないオーガニック野菜に対する需要が高まっている。
外食頻度の高い消費者の間では、外出自粛により浮いた外食費を食材の購入に充てるようになり、自宅で調理時間の余裕ができたことと併せ、高単価でも健康的なオーガニ ック野菜を選択する傾向にあるとみられる。オーガニック野菜の消費は、一般消費者を中心とする一方、小売店舗や加工食品メーカー等の業務用需要も高まりつつある。
小売店舗ではオーガニック野菜のさらなる普及拡大をめざした低価格化が進み、今後も需要は高まるとみられることから、生産体制の底上げが必要であると考えられる。
将来展望
国内人口の減少や外食や中食の利用が進む中、生鮮野菜の消費は減少傾向にある。今後は、限られた需要に対し、誰がどのように流通させるかという局面を迎えつつあり、卸売市場流通と産直農産品による競争が始まっている。
産直農産品は商社など流通事業者や実需者(小売や外食チェーン、加工食品メーカー等)で取り決めた価格となるため、相場の影響を受けず仕入れ価格を安定化させるメリットがある。また鮮度の高さや市場に流通しない珍しい食材の提供に加え、販売事業者による食材の特色を活かした食べ方提案等の普及活動がみられる。
こうした取り組みにより産直農産品が存在感を高める中、卸売市場は6月に改正卸売市場法を施行。卸売市場での取引や民間企業による参入規制を緩和することで応戦している。今回の改正では、「直荷引き禁止」、「商物一致の原則」、「第三者販売の禁止」等が見直され、例えば、卸売業者を経由せず、直接、仲卸業者は産地から仕入れを行えるようになった。また、卸売市場への集荷をなくし、産地から実需者への直送が可能になった。加えて、卸売業者は同市場内の仲卸業者や売買参加者(小売・量販店等)以外にも販売が可能となるなど、市場外流通との垣根を低くすることで、卸売市場は活性化と物流の効率化を図っている。
仕入れ原価を安定化させたい実需者や食材にこだわる消費者、収入増に取組む農家の需要を捉えて産直農産品市場規模は拡大しており、2024年には、2019年比120.6%の3兆5489億円(事業者による流通総額ベース)になると予測。また、卸売市場を含む農産品市場規模全体は2019年比102.5%の9兆4533億円(事業者による流通総額ベース)を予測する。
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】地域包括医療を推進 厚生事業部門部門・長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏2025年7月15日
-
【特殊報】ナシにフタモンマダラメイガ 県内で初めて確認 島根県2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 島根県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】野菜類、花き類、ダイズにオオタバコガ 滋賀県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 栃木県全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
米価 7週連続で低下 5kg3602円2025年7月15日
-
農業法人 米販売先 農協系統がメインは23% 日本農業法人協会2025年7月15日
-
2025年産米 前年比56万t増の見込み 意向調査概要2025年7月15日
-
テキサス洪水被害は対岸の火事か 公務員削減が安全・安心を脅かす 農林水産行政にも影響2025年7月15日
-
コメ増産政策に転換で加工用米制度も見直しが急務【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月15日
-
青森米パックご飯ご愛顧感謝キャンペーン 抽選で200人にQUOカード JA全農あおもり2025年7月15日
-
農機担当者向け「コンプライアンス研修会」を初開催 JA全農やまなし2025年7月15日
-
農機フェア2025を開催 2日間で5309人が来場 富山県JAグループ2025年7月15日
-
GREEN×EXPO2027 特別仕様ナンバープレート交付記念セレモニー開く 横浜市2025年7月15日
-
「幻の卵屋さん」アリオ北砂で5年ぶり出店 日本たまごかけごはん研究所2025年7月15日
-
子ども向け農業体験プログラム「KUBOTA AGRI FRONTの夏休み2025」開催 クボタ2025年7月15日
-
香春町と包括連携協定締結 東洋ライス2025年7月15日
-
官民連携 南相馬市みらい農業学校生へ農業経営相談機能等を提供 AgriweB2025年7月15日
-
鳥インフル 米ワシントン州などからの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年7月15日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年7月15日