「牛乳は酪農家だけで生産できない」「消費者にも責任」 令和の酪農危機突破へ決意 生活クラブ2023年4月13日
資材高騰などで存続の危機に直面する酪農家を支援しようと、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会は4月12日、東京都内で集会を開いた。生産者と消費者が一体となって解決の道を探ろうと意見が交わされ、「牛乳は酪農家だけで生産するものでない」「消費者の責任も大きい」などと消費者が自分事として向き合て支援することが必要だと強調された。会場では酪農団体に約5300万円の緊急カンパが渡され、受け取った組合長は「苦しい状況が続き、どうしようかと思ったこともあったが、頑張らないといけないかなと感じた」と述べた。
「令和の酪農危機に消費者はどう向き合うか」をテーマに意見が交わされた
農業を「外部化」した日本農業の脆弱さが露呈
「酪農応援!生活クラブ牛乳フォーラム」と題して開かれた集会には、オンラインも含めて約400人が参加した。はじめに「資源・食糧問題研究所」の柴田明夫代表が基調講演した。柴田代表は、畜産危機の現状について、「グローバリゼーションのもとで日本は極限まで農業を『外部化』して自給率が下がり、それがいかに脆弱であるかがコロナやウクライナ戦争であらわになった」と指摘。特にこの数年は生産コストの上昇に対して農産物の価格が低迷するシェーレ(はさみ状価格差)現象が起きて農家が追い込まれているとして、「食料生産の拡大に向けて適正価格の実現に向けた対応が必要だ」と強調した。
「ミルクの生産は酪農家だけではできない」
続いて「ミルク一万年の会」代表世話人の前田浩史さんが「生産者と消費者が協創する地域酪農の新しいカタチ」と題して講演した。前田さんは、日本の酪農乳業の約150年の歴史の中でも「酪農産業のグローバル化」「戦争」「感染症パンデミック」の危機を迎えたことがあったが、今でいう子ども食堂への牛乳の無償提供や組合の組織化などで乗り越えたことがあり、過去の経験も生かして対応を探る必要があると述べた。
そのうえで、「ミルクの生産は酪農家だけではできない」と強調、耕畜連携などで地域の農地で餌づくりをする循環型農業のネットワークを作るとともに、生産された農産物が食卓で循環できる形にする必要があるとし、生協などが中心となって着実に進めていくことに期待を示した。
「自分事として考え未来につなげる必要」
このあと酪農家や生活クラブのメンバーも交えたパネルディスカッションが行われた。この中で生活クラブ組合員を代表して参加した萩原つなよさんは「酪農の問題を自分事として考える仲間を増やして未来につなげる必要があると感じた。酪農家の方との交流会や見学会など色々な形で活動をつなげて持続可能な未来、食をつくっていきたい」と述べた。
また、コーディネーターを務めた生活クラブ連合会の村上彰一会長は「安ければいいという消費者の存在が今の事態を招いたともいえ、消費者の責任も大きいと思う。消費者として生産の実態を理解してきちんと選んで買うことも大切であり、生活クラブとして、酪農危機を突破し、前へ進むためにできるだけのことをするという決意をみなさんと新たにしたい」と締めくくった。
「酪農応援緊急カンパ」の贈呈式
このあと生活クラブが提携する3つの酪農団体を支援しようと今年2月から3月にかけて組合員に呼びかけて集めた「酪農応援緊急カンパ」約5300万円が3団体に贈呈された。代表して受け取った那須箒根酪農業協同組合の伊藤昭光組合長は「物価が上がる大変な時期にありがとうございます。去年苦しい時期があり、あと半年状況が変わらなかったらどうしようかと思ったこともありましたが、こうした場にきて頑張らないといけないかなと思いました」と感謝の言葉を述べ、会場から拍手が送られた。
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