流通:食は医力
【シリーズ・食は医力】第55回 食生活で不足しているのは食物繊維2013年10月15日
・「栄養素」ではないと軽視されがち
・水溶性と不溶性で異なる機能
・腸内の有害物質を体外へ排出する
・本命は胚芽米など穀類や海藻、キノコ類
昔は三大栄養素とビタミン、ミネラルが大事というのが常識で、食物繊維などはほとんど無視されていました。現代栄養学では重要な位置を占めるようになってきましたが、なお「栄養素」ではないということで軽視されがちで、現代の食生活からは食物繊維の不足が浮かび上がってきます。
◆「栄養素」ではないと軽視されがち
昨今、人気の料理をちょっと思い浮かべてください。ステーキ、トンカツ、ラーメン、スパゲッティ、エビフライ、鰻重、まあこんなところでしょうが、どれも食物繊維の視点からの価値は大したことはありません。
先日、仙台に行ったら、仙台駅構内には牛タン料理屋が何軒も軒を連ねていていずれも待ち客が長蛇の列でした。すごい人気なのですね。
おかげで今、牛タンは、国内牛だけではとても足りなくて、9割は輸入ものだとか。でも牛タン定食では食物繊維はごくわずかでしょう。
◆水溶性と不溶性で異なる機能
その食物繊維ですが、水溶性と不溶性とがあります。水溶性は腸で腸内細菌により消化されて溶けるペクチン、ヘミセルロースなどの多糖類。不溶性は最後の最後までそのままのセルロースです。
それぞれ重要な機能を果たしてくれるのですが、水溶性は消化の過程でメタンガス、炭酸ガス、酢酸などを発生させ、これが生理的に大腸そして体全体に影響してきます。
一方、不溶性は水分を吸収して膨れ上がるので、お通じは当然柔らかくなって便秘を防ぎます。逆に食物繊維が少なくてお通じが固くなると、腸内の移動もままならず便秘が常態化します。
「便秘は万病のもと」と昔から言われてきましたが、便秘はなぜ良くないのでしょうか。腸内の「元」食物には発ガン物質などいろいろな有害物質が含まれています。ですからこれは溜め込んでも、百害あって一利なしです。
◆腸内の有害物質を体外へ排出する
便秘がひどいと、腸壁の毛細血管から重金属などの有害物質が血液へと入り込み、脳へ行くか、臓器へ行くか、皮膚に出るか、いずれにしてもどこかの細胞に送られて問題を引き起こします。
ついでに言えば戦後、日本人で最も増えた病気に大腸ガンがありますが、これも肉中心の食生活への変化と便秘の増加とが深くかかわっているというのが定説です。
その点、食物繊維は腸内の有害物質をいわば抱え込んで体外へ排出してくれるので、たいへん都合がいいのです。
なお食物繊維が十分に力を発揮するためには同時に水分を十分にとることが必要で、水分の摂取が不足しては宝のもちぐされとなります。
食物繊維の効能としてはほかに血圧低下、糖尿病抑制、動脈硬化・貧血・痔・肥満の防止、健康な肌の維持などあり、まことに多彩です。
◆本命は胚芽米など穀類や海藻、キノコ類
ではどんな食物が適当か。食物繊維といえばすぐ野菜と思いがちですが、野菜は生では大した摂取量にはなりません。煮物、蒸し物、生を組み合わせていただきましょう。
果物も実は食物繊維の量はそれほど多くはありません。本命は穀類で、それも胚芽米など精白度のあまり高くないご飯、パン、麺類が最も効果的な食物繊維の取り方です。オートミール(燕麦)もお勧めです。
このほか海藻、キノコ類、こんにゃく、おからは食物繊維が非常に多く、しかも低カロリーという特徴があります。これら和食ならではの食材を積極的に食卓に登場させて万病を追い払ってください。
ナッツ類(特にアーモンドやピーナッツ)、豆類(特にアズキ、枝豆、大豆、エンドウ)も意外に食物繊維が多いのが面白いところです。
逆に「繊維の王様」と思いがちなイモ類には食物繊維は驚くほど少ない。そういえば昔のサツマイモは筋だらけでしたが、昨今のは裏ごししても曲げ物の網にほとんど残りません。食物繊維という点でも野菜はどんどんスマートになっているのでしょうか。
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