流通:利益の取れる青果売場の現在!
[リンゴ]「選びやすさ」と「選ぶ楽しみ」を提供(上)2016年9月30日
◆少ない日本人の 果物摂取量
先進国の中でも、日本の果物の摂取量は最低水準にある。国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、2011年日本の果物類の1日あたりの摂取(消費)量は140gで、300gを超えるイタリア、イギリス、フランスの半分以下である(国は1日当たりの摂取量を200gと推奨している)。総務省の「家計調査年報」を見ても、果物に対する支出額は30年前と比較して25%程度減少している(以上、参考資料『食品商業』2015年12月号より抜粋)。
日本人の健康への意識は高く、加えて栄養面でも果物のメリットは明らかだが、残念ながら購入には結びついていない。公益財団法人中央果実協会が2014年9月に行った「果物の消費に関するアンケート調査報告書」によれば、「果物を食べない」層が購入を敬遠する理由には、「日持ちがしない」「他の食品と比べて割高感がある」「皮をむくなどの手間がかかる」が挙げられ、さらに「他に食べる食品がある」「太る」「近くに買いやすい店がない」などが続く。
これらの理由を考慮し、生産者側は品種改良、生産管理、販売者側は品揃え、売場づくり、販売方法を見出していかなければならない。
◆食品売場から 淘汰される懸念も
実際に食品スーパーの店頭で、果物売場への影響が表れ始めている。果物の販売減少傾向が強いチェーンでは、売場スペースを圧縮しているところもある。定番商品を必要最小限に留め、平台で季節や旬の商品をスポットで入れ替えて、重点販売商品を絞り込んでいる。これにより、売上における波の落差を無くし、値下げや廃棄などのロスを防ぎ、安定した売上と収益が狙える。
このような販売方法は手堅いが、一方で競合他店との差別化が難しく、ほとんどが無難な売場に収まってしまっている。
このままでは、食料品売場で、果物が淘汰される懸念がある。
販売側、生産側が共に連携を図り、果物に対する新たな需要の掘り起こしを目指したい。まずは、果物で1番の売上を誇る「リンゴ」を取り上げる。
◆力強く回復した リンゴの消費
家計調査年報を見ると、現在、支出金額の多い果物は、リンゴ、バナナ、ミカンの順となっている。80年代は、ミカン、リンゴ、イチゴの順であったが、ミカンはピーク時の半分以下に支出金額が減少している。リンゴもミカンと同様、減少傾向に歯止めがかからなかったが、この5年間で1000円以上支出金額を増加させ、回復に力強さを感じる。ちなみに、2015年までの5年間で支出金額と購入数量が共に増えたのが、リンゴ、ブドウ、カキ、キウイの4種類である。この4つの販売動向を注目すると、果物復権のヒントを見出せるのではないか。
さて、なぜリンゴはお客様が支持を集めているのか、ニーズの側面から探っていきたい。これには、先述したアンケートによる果物を敬遠する理由の対応策にもつながっている。
まずは、「日持ちしない」への対応がある。元々リンゴは箱売りでの需要があったように、まとめ買いしても、2週間ほど保存が可能なので、安心して購入できる。果物は「買ったその日に食べないといけない」と思っているお客様も少なくない。販売側による表示の問題もあるが、食べ頃のカラーチャートや商品説明を生産者側から提供するのも一案と言える。その日に食べるだけでなく、買ってしばらくして、より味わいが深まる果物の楽しみは提案の1つの要素になる。
次に「割高」に対する値頃感である。ばら売り、バンドル販売(複数点購入すると割り引く販売方法)や袋詰めなど多様な販売方法で売場に展開できる。ばら売りの場合、100円前後からの価格設定が可能であり、日ごろの買物予算からも捻出しやすい。また、バンドル販売や袋詰めなどでは、1個あたりの割安感を訴求し、まとめ買いへの誘導も狙える。
・[リンゴ]「選びやすさ」と「選ぶ楽しみ」を提供 (上) (下)
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