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2019.10.04 
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キュウリで高収益 養液栽培の基本と技術で研修 千葉大学植物工場研究会

 千葉大学の植物工場研究会(千葉県柏市)は9月26日と27日の2日間、キュウリの養液栽培の方法や収量アップの実例から学ぶ栽培作物別研修を行った。

キュウリ研修会01 キュウリは主幹作物だが、養液栽培の実績がほとんどない。今回の研修は、キュウリを植物工場で生産するための基本技術や背景となる理論や植物の特性を理解し、栽培管理に応用できる人材を育成することが目的だ。

 かつてキュウリは温室栽培のトップだったが、現在ではトマト、イチゴ、葉物類に次ぐ4番目。1日に2回の収穫作業が必要であることや、人間には厳しい高温多湿な環境下での管理が強いられることから撤退する生産者が跡を絶たない。農林水産省のデータによると、収穫量は1979年の約110万トンをピークに2017年時点で約60万トンと半減。作付面積もこの50年で約6分の1にまで減り続けている。
 そんな現状を打ち破り、植物工場でのキュウリ生産のあるべき姿と今後のキュウリ栽培のあり方を探ろうと開いた研修には、JAの指導者、県の普及員、種苗会社の社員や生産者など23人が参加した。

キュウリ研修会02

千葉大学で行ったキュウリの養液栽培に関する研修

 講師には、キュウリ栽培の東と西の神様と称される2人の名人が登場。"東の神様"で三菱ケミカルアグリドリームの稲山光男さんは「そもそもキュウリとは~きゅうりの生産・生態から見た栽培技術」と題し施設栽培における温度管理の技術などを伝えた。また、10aあたり年間収量40トンの"西の神様"で北部九州胡瓜研究会の山口仁司会長は、「キュウリで高収量(40t~50t/10a)を実現するための養液土耕栽培」をテーマに、従来型の栽培方法に環境制御を取り入れた最新の栽培技術型を組み合わせることで年間40トンを達成するための極意を伝えた。
 さらに徳島県海部地域の衰退するキュウリ産地を養液栽培で再生し、若い新規就農者を呼び込むことに成功した徳島県南部総合県民局の取り組み「きゅうりタウン構想」を、同プロジェクト担当の原田正剛氏が紹介。このほか、千葉大学の塚越覚教授による「植物生産の基礎」、同丸尾達教授による「養液栽培の基礎」、農研機構の安東赫が「キュウリの多収生産技術」をテーマに講義を行った。
 現在、キュウリは、根圏管理の難しさから日本での養液栽培はほとんどゼロ。また、多収を得るために側枝を発生させるので、高温多湿な環境が必要なことから「体が持たない」と作り手も減少している。
 一方、日本が手本とするオランダの場合、すべて養液栽培で平均収量が90トン。主枝を1本ハイワイヤーで仕立てる方法で"蒸しこみ"が必要な側枝を発生させる必要がなく、温室内は人間にとっても程よい湿度が保たれるという。

規格の見直しを訴える千葉大学の篠原温名誉教授 キュウリ栽培を取り巻く環境は厳しいが、研修を企画した千葉大学の篠原温名誉教授は、「キュウリ栽培を始めるのは今がチャンス」だと話す。生産者が減ることで単価が上がり、やり方によっては大きく儲けることも可能だという。実際、西の神様・山口さんの地元佐賀では、山口さんが経験を積みながら30年かけて達成した年間30トンを、技術革新の恩恵を受けた1年目の新規就農者がいきなり達成してしまうケースもあるという。

 一方、日本のキュウリ栽培の状況を変えるためにもう一つネックになるのが「規格」の問題だ。
 日本で流通するキュウリの規格は20~22cm・100gで、かっぱ巻きに最適なサイズといわれている。未完熟で収穫するキュウリは成長が速く、規格に合わせるには、1日2回の収穫に追われる。規格があることで効率的で便利な面は大きいが、キュウリ栽培の収量アップの足かせにもなっているという。
 篠原名誉教授は、「いまや60%が加工業務用に回りいずれもカットして使われる。美しくておいしいキュウリは小規模農家に任せ、加工業務用は規格を取り払ってよいのではないか」と指摘する。
 選果場や物流など現行の規格で統一された流通の仕組みを変えることは容易ではないが、「いまの規格の流通を利用する一方、大手の加工業務と直接取り引きするようなシステムができてもいい。今回の研修もそういう別の動きを作るきっかけになれば」と話した。

(写真)規格の見直しを訴える千葉大学の篠原温名誉教授


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