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2019.06.13 
千葉大園芸学部で営農指導員研修を実施 JA東西しらかわ一覧へ

 JA東西しらかわ(福島県)の営農指導員が6月6、7日の両日、千葉県松戸市の千葉大学大学院園芸学研究科で営農研修会を実施した。昨年2月に両者が締結した連携協定の一環で、農協の営農指導員が、国立大学法人で営農に関する指導を受けるという画期的な取り組みだった。

20190613 ヘッドライン 複合型環境制御のハウスで、浄閑准教授(右端)の説明に耳を傾ける営農指導員複合型環境制御のハウスで、浄閑准教授(右端)の説明に耳を傾ける営農指導員

 

 JA東西しらかわの園芸事業は、トマト、イチゴ、キュウリやニラなどが中心で、その7割が県外に出荷されている。園芸生産販売事業を進めていく上で、栽培技術や、的確で効果的な病害虫防除技術などについて千葉大の研究成果を生産者のほ場(現場)に活かす取り組みだ。
 今回は、JA東西しらかわに在籍する15人の営農指導員のうち20~50代の10人が参加し、2日間にわたって講義と実例研修を受けた。
 1日目の講義の内容は、事前に営農指導員から普段の営農指導の中で感じる疑問点や聞きたいことをアンケートで募集。それを基に、「国内外の施設園芸の状況」「環境制御」「栽培環境と病気の発生」「光合成に関わる諸要因」「養水分の吸収と転流」の5項目について講義が行われた。

 

◆事前アンケートで要望を聞き講義

 まずは、国内外の施設園芸の状況として同大学大学院園芸学研究科の浄閑正史准教授が説明。続いて営農指導員から要望の高かったハウス内の環境制御について解説した。
 環境制御とは、温度や湿度、光環境、土壌水分など植物の成育に関わる栽培環境を適正な範囲に制御する技術。浄閑准教授によると、環境制御には複合型と統合型の2タイプがあり、複合型は温度を主体として二酸化炭素、湿度を個別に制御する独立制御方式。
 一方、統合型は、ハウス内の環境設定値をもとに温度、湿度、二酸化炭素の3要素を同時に自動制御するもの。高度なシステムを導入することになるためコストもかかるが、植物の生理に基づいた光合成量の最大化を図ることができる。
 続いて「光合成に関わる諸要因」を説明。植物の成長に比例する光合成を増加させるためには、温度、湿度、養分、二酸化炭素、光、風といった多くの環境条件がある。特に湿度や風は葉の気孔の開閉に大きく関わっており、二酸化炭素の吸収に影響する。
 さらに、同大学大学院園芸学研究科の宇佐見俊行准教授からは、病害の防除方法を「環境条件」「植物の性質」「病原体」の3要因の関わりから解説。また、特定波長の光の照射で病害に対する抵抗性を促進するUV-BランプやLED電球など具体的なメーカー名をあげて紹介した。病害の発生予測や効果の高い農薬散布時期を指示する通信機能付き温度湿度センサーなどAIを活用した最新機器の情報も伝えた。

 

20190613 ヘッドライン 1日目の講義では環境制御に役立つ理論を学んだ1日目の講義では環境制御に役立つ理論を学んだ

 

◆ハウス内での実習も

 2日目は、大学の敷地内にあるハウスで行われている環境制御の実例を研修した。
 1棟目のハウスでは、温度を主体に湿度や二酸化炭素量を個別に制御する複合型環境制御のハウスを見学。足を踏み入れるとムワッと湿気を感じたが、10人あまりが入って温度が上がるとミストが噴出。さらに温度と飽差(ほうさ)で設定されている細霧冷房が反応し、一気に温度を下げた。
 2棟目は全ての動作機器を一つのコンピューターが司令塔になって制御する統合型環境制御のハウス。温度と湿度、二酸化炭素の3要素を同時に制御しており、複合型より快適な温度と湿度に保たれている。人間にとってもより快適な環境だった。
 さらに、ハンドメイドで作れる例として学生がパクチーを作っている閉鎖型の施設や、最も環境制御がされやすい例として人工光型の植物工場の苗テラスを見学した。

 

20190613 ヘッドライン 統合型環境制御のハウスを見学統合型環境制御のハウスを見学

 

◆現場ですぐに役立つ知識を習得

 2日間の講習を終え、現場で実際に役立ちそうなポイントを聞くと、ほとんどの営農指導員が、湿度が光合成に与える影響について挙げていた。
 営農指導員歴7年の男性は、「ハウス内の温度と湿度の関係を具体的に教えてもらったのはよかった。理屈がわかっていると農家組合員に説明しやすくなると思います。農家さんによって投資できるコストも違うが、現場に帰って指導してみたい」とコメント。
 また、「トマトは水の量を気にしていましたが、湿度という概念がこれまでなかった」と言うのは主にトマトを中心に14年の営農指導員の女性。むしろ、ある程度乾いた環境でないと病気になると思っていたそうで、「さっそく現場で試してみたい」と話した。さらに、光合成と二酸化炭素の関係についても、「日差しがあってトマトやキュウリがどんどん光合成すると、葉の付近の二酸化炭素が無くなって光合成ができなくなってしまうということを知った」と言い、冬場の閉め切ったハウスで使っている二酸化炭素を簡単に発生させる固形資材を、「夏のハウスでも応用してみたい」と話した。
 1909(明治42)年に千葉県立園芸専門学校として創立した千葉大学園芸学部は、国立大学法人で唯一の園芸学部で、野菜、果樹、花きといった園芸品目の栽培・販売方法、食品製造、ランドスケープなどの研究・開発等をしている。
 主に水稲を担当しているという50代の営農指導員は、「千葉大は最先端だから一度は見てみたかった。これだけの施設を揃えることは現実にはコストがかかってできないが、何かしら参考になる。一人で見るよりは何人かで見て覚えていれば後から相談もできるし、若い人を育てるためにもこうした研修会をやってもらえるのはありがたい」と話した。
 また、別の営農指導員は、「少人数で質問もできて期待以上でした。今回聞いたことを持ち帰ってすぐに農家さんに知らせたい。実際にやってみて夏野菜の結果は9月には出ますから、次の機会にまたいろいろ聞いてみたい」と話した。
 今回の研修会を担当した浄閑准教授は、「生産者にとって大事なのはいかに儲かるかなので、そこにつながる技術や情報を、お伝えできるよう心がけました。現場でハウスごとの特徴をみながら最適なものを取り入れていただければ」と話した。
 また、大学の立場から今後の産学連携の取り組みについて、「千葉大学は、100年近く歴史がある中で多くの先輩方が産業と近い距離で研究を進めてきた。それを我々も引き継いで学生にも現場にとって何が必要なのかを伝えていくことが大事だと思っています」と話した。

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