トビイロウンカの遺伝地図作製 イネ害虫では世界初2013年3月7日
農業生物資源研究所(生物研)、九州大学、農研機構の共同研究グループは、イネの主要害虫であるトビイロウンカのDNAマーカーを開発し、それを基に遺伝地図をつくった。イネ害虫の遺伝地図作製は世界初で、「今後の殺虫剤開発や抵抗性品種の育成につながる」(生物研)と期待を寄せる。

ウンカ類はイネの主要害虫の1つで、吸汁して稲を枯らせたり、ウイルス病を媒介するなどの被害をもたらす。農水省試算では年間の被害額は約40億円ほどとされている。
ウンカ類はベトナムで発生し、中国を経由して日本に飛来してくるが、これらの国で殺虫剤のローテーションや適性使用の管理が不十分なことなどから、薬剤抵抗性を獲得しやすく、国内での防除が大きな問題になりつつある。
日本に飛来してくるウンカ類はトビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカの3種類が確認されている。研究グループは、このうちで最も被害額が大きく、さらに海外での被害や先行研究もあるトビイロウンカを研究対象に選んだ。
この研究は、ウンカ類が薬剤抵抗性を獲得する時にはたらく遺伝子やイネに被害をもたらす遺伝子などを特定し、より残効性が強く抵抗性がつきにくいウンカ類の防除剤開発や、ウンカ類への抵抗性をもつ新品種育成に役立てようというもの。
そうした特定の遺伝子を、数万個という遺伝子の中から特定するために不可欠なのが遺伝地図だ。
害虫の遺伝地図作成例としては、海外で野菜類のコナガ、穀物のコクヌストモドキなどがあるが、イネ害虫で成功したのは世界で初めて。
生物研では、今回の研究成果は、「他の2種のウンカ類の防除にも応用可能」だとしており、ウンカ類防除の研究が大幅に加速すると期待している。
この研究成果は英文専門紙『DNAリサーチ』2月号に掲載された。

(写真)
上:吸汁するトビイロウンカ
下:今回作製に成功したトビイロウンカの遺伝地図
(関連記事)
・全農とデュポンがウンカ専用剤を共同開発 平成30年の販売めざす (2013.02.15)
・JA全農の平成25農薬年度基幹品目特集(2) 水稲品目編 (2012.12.21)
・【現場で役立つ農薬の基礎知識】第10回 水稲害虫の上手な防ぎ方 (2012.07.05)
・気象変動で発生状況が変化―臨機応変な対応が必要に― (2012.01.31)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日