葉の気孔を計測 AIアシスト機能搭載顕微鏡システムを開発 横浜市大、名大など2021年7月30日
横浜市立大学木原生物学研究所の爲重才覚特任助教と清水健太郎客員教授の研究グループと、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の戸田陽介特任助教、名古屋大学同研究所木下俊則教授らの研究グループは、顕微鏡画像から気孔を認識するAI技術と、それを動かすための小型コンピューターを利用して、リアルタイムに画像解析する安価な顕微鏡システムを開発した。同システムは、画像品質を確認しながらデータ収集と解析を行え、実際にコムギの気孔を認識・計測したところ、精度の高い結果を得た。今後はコムギなど作物種の気孔の数や大きさを決める遺伝子の同定など、育種学的な成果につなげていくことをめざす。
顕微鏡、カメラ、画像処理用コンピューターを接続して葉のサンプルを観察している様子
同研究では、名古屋大学発ベンチャーである株式会社フィトメトリクスの協力を得て、気孔を計数・計測する画像解析システムを低予算で誰でも構築できる方法論と、顕微鏡観察時にリアルタイムの画像解析を可能とするインターフェースを開発。撮影と同時に計測結果をエクセルなどで扱えるデータとして出力することで、大きく作業効率を向上させた。
実際にこのシステムを使ってコムギおよび近縁種の葉の気孔を計測したところ、葉の向軸側(表側)と背軸側(裏側)で気孔の数が異なる様子や、ゲノムサイズに比例して気孔サイズが異なる様子、気孔の密度とサイズが負の相関を示すなど、気孔に関する計測データを効率的に収集することができた。
今後、同システムを活用することで、気孔の形質に関連する遺伝子の発見や機能解析、それらを利用した新品種開発のスピードの加速化が期待される。また、同システムを様々な研究分野の顕微鏡観察で応用できるよう、同じハードウェアを使ってさらに汎用性を拡張する計画している。
同研究成果は、科学誌「FrontiersinPlantScience」誌に掲載された。
コムギの葉の表皮サンプルの顕微鏡像(右上)とそれをAI深層学習モデルで処理して気孔を検出している様子(右下)。気孔を緑色の枠で表示
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