下水処理水を液体肥料に サツマイモの大量生産に成功 近畿大2023年3月29日
近畿大学生物理工学部 生物工学科の鈴木高広教授、日本下水道事業団東海総合事務所、株式会社ウォーターエージェンシーの研究グループは、下水処理水を液体肥料として利用し、サツマイモを大量生産する方法を開発した。生物理工学部では、サツマイモをエネルギー源とした燃料電池発電の研究も行っており、同研究成果を生かして、石油・石炭・天然ガスなど化石燃料を代替し、温室効果ガス削減をめざす。
サツマイモは、微生物によって高効率にメタンガスに変換できるため、食用だけでなくバイオ燃料用の作物として注目されている。バイオ燃料として広く活用されている木質バイオマスより、サツマイモの方がメタンガスを高効率に得られ、家庭用の燃料電池エネファームを用いて発電・給湯を行った場合、サツマイモが光合成で作り出したエネルギーののうち、90%が利用可能。これにより、石油・石炭・天然ガスなどと代替することで、温室効果ガスを大幅に削減できる。
一方、サツマイモは光飽和点が比較的低く、日照量が増えても光合成できる量が頭打ちになり、晴天時の日射量の約半分が未利用だといわれる。そのため、サツマイモを大量生産するには肥料が必要で、安価かつ多量の肥料の入手が課題となっている。
研究グループは、これまでもサツマイモを大量生産する方法の開発に取り組んできたが、同研究では、処理した下水を液体肥料として利用することを検討。サツマイモの苗を植えたポットを3段に並べ、6月から11月まで160日間、下水処理水を供給して栽培したところ、葉が大量に増殖し、サツマイモの収量は19.5kg/㎡となった。また、冬場でも水温を15℃以上に保って処理下水を供給したところ、越冬栽培に成功し、8.4kg/㎡を収穫。年間生産量は25.3kg/㎡となり、全国平均2.4kg/㎡の約10倍の収穫に成功した。
この結果は、これまで報告されているサトウキビやユーカリなどのバイオ燃料資源の最大生産量を大きく上回るもので、下水処理水の供給によるサツマイモの大量生産が、化石燃料の代替品として大規模に実現できる可能性を示唆している。
また、同研究成果を用いてサツマイモを栽培し、燃料電池で発電した際の日射エネルギーの活用効率を算出したところ、バイオマス資源において世界最高の3.6%となり、温室効果ガスの大幅削減への寄与が期待される。
この研究成果に関する論文は2月24日、園芸植物に関する国際誌『Horiculturae』に掲載された。
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